最近はランニング熱に加えてボクシング熱がかなり高まっている。先週もパッキャオ×ブラッドリーの再戦があったりしたしね。さらに言うとボクシング熱が高まると同時にランニング熱も高まるので非常に良い。
そんな中、Amazonを徘徊していて気になる本を見つけたので購入した。買ったのは沢木耕太郎が1976年に発表した「敗れざる者たち」、一流のスポーツ選手でありながら少し陰のある、どこか報われないというような選手にスポットを当てたノンフィクション・ルポだ。この本に収められている一篇「クレイになれなかった男」という話が読みたいがために購入した。
ボクシングの世界でクレイと言えばカシアス・クレイの事を指す。彼は後に改名してモハメド・アリと名乗ることになる。「クレイになれなかった男」は、日本人の母と黒人の父の間に生まれ、内藤純一という立派な日本名があるにも関わらず、肌の色が同じというただそれだけの理由で偉大なるボクサーの名前をリングネームを付けられたカシアス内藤の物語だ。
和製クレイと呼ばれたカシアス内藤は世間一般では「悲運のボクサー」などと言われることが多いが、日本ミドル級・東洋ミドル級のチャンピオンになり、世界ミドル級でも1位にランキングされたほどの選手だ。悲運と言われるのは、名伯楽エディ・タウンゼントをして「真面目に練習すれば3週間で世界を獲れる」と言わしめた才能を持ちながらついぞ世界に届かなかった事、人種的にマイノリティであった事などが関係しているのだろう。
そんなカシアス内藤が韓国で柳済斗の保持する東洋ミドル級のタイトルに挑戦するのを聞きつけ、同世代の沢木耕太郎が同行し取材したのがこの物語だ。このタイトルは元々カシアス内藤が持っていたもので、柳済斗はカシアス内藤からタイトルを奪いそれ以来防衛を続けているという背景がある。
しかしこの時カシアス内藤は下り坂に転げ落ちている真っ只中で、軽量前日にコーラを飲んで体重オーバーをするという体たらく。何とか軽量はクリアしたものの、こんな状態でまともな試合が出来るものかと沢木も訝しむ。一方の柳済斗も長期政権による気の緩みか、4度目となるカシアス内藤戦へ辟易感からか、こちらもどうにもテンションが上がらない状態。
もちろん試合は面白いものにはならず、見せ場の無いまま判定で柳済斗の判定勝ち。沢木は同世代のカシアス内藤に共感を覚え、もう一つ弾けられない様を自身の姿と重ね合わせて、この試合で何かやってくれるんじゃないかと期待して同行した。勝つにしろ負けるにしろ、カシアス内藤が今までの自分を超え出て行くような事があれば沢木自身も同じように成長できるんじゃないかと感じていたのは間違いない。
それだけに不甲斐ない試合を見せたカシアス内藤に沢木は問いかける。
「どうして打ち合わないのか?」
「たった500ドルのファイトマネーで、ブンブンぶっ飛ばすわけにはいかなかったんだよ。命がかかってんだからね」
「いつブンブンぶっ飛ばすの?」
「いつか、そういう試合ができるとき、いつか…」
その答えを聞いて沢木は深い徒労感に襲われる。しかしその”いつか”は決してカシアス内藤にやってこない……さらには自分にも”いつか”はやってこないと物語を締める。
どうよ、この痺れるダンディズム。この一篇を読むだけでもこの本を買う価値はあるが、もちろん他の話もすこぶる面白い。ちなみにこの「クレイになれなかった男」には続編「一瞬の夏」があり、一度は引退し4年後に復帰したカシアス内藤を追いかけるという話だ。こちらは文庫本で上・下巻と中々のボリュームだが、「クレイになれなかった男」を読み終わったら是非とも呼んで欲しい一冊だ。
そんなわけでモチベーションアップはもちろんのこと、読み物としても非常に面白い本なので、少しでも興味を持ったのなら是非とも呼んで欲しいって話(´∀`)
そんな中、Amazonを徘徊していて気になる本を見つけたので購入した。買ったのは沢木耕太郎が1976年に発表した「敗れざる者たち」、一流のスポーツ選手でありながら少し陰のある、どこか報われないというような選手にスポットを当てたノンフィクション・ルポだ。この本に収められている一篇「クレイになれなかった男」という話が読みたいがために購入した。
ボクシングの世界でクレイと言えばカシアス・クレイの事を指す。彼は後に改名してモハメド・アリと名乗ることになる。「クレイになれなかった男」は、日本人の母と黒人の父の間に生まれ、内藤純一という立派な日本名があるにも関わらず、肌の色が同じというただそれだけの理由で偉大なるボクサーの名前をリングネームを付けられたカシアス内藤の物語だ。
和製クレイと呼ばれたカシアス内藤は世間一般では「悲運のボクサー」などと言われることが多いが、日本ミドル級・東洋ミドル級のチャンピオンになり、世界ミドル級でも1位にランキングされたほどの選手だ。悲運と言われるのは、名伯楽エディ・タウンゼントをして「真面目に練習すれば3週間で世界を獲れる」と言わしめた才能を持ちながらついぞ世界に届かなかった事、人種的にマイノリティであった事などが関係しているのだろう。
そんなカシアス内藤が韓国で柳済斗の保持する東洋ミドル級のタイトルに挑戦するのを聞きつけ、同世代の沢木耕太郎が同行し取材したのがこの物語だ。このタイトルは元々カシアス内藤が持っていたもので、柳済斗はカシアス内藤からタイトルを奪いそれ以来防衛を続けているという背景がある。
しかしこの時カシアス内藤は下り坂に転げ落ちている真っ只中で、軽量前日にコーラを飲んで体重オーバーをするという体たらく。何とか軽量はクリアしたものの、こんな状態でまともな試合が出来るものかと沢木も訝しむ。一方の柳済斗も長期政権による気の緩みか、4度目となるカシアス内藤戦へ辟易感からか、こちらもどうにもテンションが上がらない状態。
もちろん試合は面白いものにはならず、見せ場の無いまま判定で柳済斗の判定勝ち。沢木は同世代のカシアス内藤に共感を覚え、もう一つ弾けられない様を自身の姿と重ね合わせて、この試合で何かやってくれるんじゃないかと期待して同行した。勝つにしろ負けるにしろ、カシアス内藤が今までの自分を超え出て行くような事があれば沢木自身も同じように成長できるんじゃないかと感じていたのは間違いない。
それだけに不甲斐ない試合を見せたカシアス内藤に沢木は問いかける。
「どうして打ち合わないのか?」
「たった500ドルのファイトマネーで、ブンブンぶっ飛ばすわけにはいかなかったんだよ。命がかかってんだからね」
「いつブンブンぶっ飛ばすの?」
「いつか、そういう試合ができるとき、いつか…」
その答えを聞いて沢木は深い徒労感に襲われる。しかしその”いつか”は決してカシアス内藤にやってこない……さらには自分にも”いつか”はやってこないと物語を締める。
どうよ、この痺れるダンディズム。この一篇を読むだけでもこの本を買う価値はあるが、もちろん他の話もすこぶる面白い。ちなみにこの「クレイになれなかった男」には続編「一瞬の夏」があり、一度は引退し4年後に復帰したカシアス内藤を追いかけるという話だ。こちらは文庫本で上・下巻と中々のボリュームだが、「クレイになれなかった男」を読み終わったら是非とも呼んで欲しい一冊だ。
そんなわけでモチベーションアップはもちろんのこと、読み物としても非常に面白い本なので、少しでも興味を持ったのなら是非とも呼んで欲しいって話(´∀`)
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