アリ@チャピ堂 お気楽本のブログ

日々の読書記録を勝手きままに書き記す

ミステリマガジンが選ぶ「ミステリが読みたい!」2008年ベストミステリ

2010-12-08 21:07:40 | ミステリー・ハードボイルド
「災いの古書」 クリフ・ジェーンウェイ・シリーズ4

災いの古書 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ジョン ダニング
早川書房

「災いの古書」ジョン ダニング著 横山 啓明訳 ハヤカワ・ミステリ文庫

クリフ・ジェーンウェイ・シリーズの4冊目(日本で出版された)で
ある意味、1冊目よりも面白いのかもしれない
前の本にもあったが、いささか無理して伏線をつくったり
犯人らしさを強調するための演出がやや長い
あえて長編として字数を稼いでいるのかと思わない部分もないではないが
それを含めても面白い

ただ、その本がどうして値がつくのか
そういう部分が分からないとどうしてだろうと府に落ちない人もいるのだろうか
まあ、常識としてそうした本の価値が上がるのだとそれはあるだろう
本に囲まれていることが幸せだと言う
そういう悦楽は、電子本の時代になってこれからもっと贅沢な喜びになっていくかもしれない

5冊の中では一番お薦めの本
でも、順序を追って読みたいと、そういう方は
頑張ってたどり着いていただきたい

 女は怖い?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ドラキュラは好き?嫌い?

2010-12-03 22:00:00 | ミステリー・ハードボイルド
「ヒストリアン」日本放送出版協会渾身の空振り



ヒストリアン 1・2 エリザベス・コストヴァ著 高瀬 素子訳 日本放送出版協会 2006年発行

日本放送出版協会が柳の下の2匹目のドジョウを狙って出版したものの
1ヶ月経っても2刷が出たかどうかと
「ダ・ヴィンチ・コード」にほ遠く及ばぬ結果となった
売れ方と内容は必ずしも一致しない・・・ことはまれで
これよりは「バーティミアス」の方がよほど面白い

まったくつまらないわけではないが
大作なわりに今ひとつ展開が乏しい
(舞台となる場所はあちこちするが・・)
他の批評にあったが「敵」なのか「相手」程度なのか
追われているような切迫感が乏しい

そういうわけで今ひとつだったのになぜ紹介するか
安くはない本を買った身としては
何がしか書かずにはおれないということでしょうか

 そうはいっても、全否定ではありません
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ソモサ」なの「ソモザ」なの

2010-12-01 22:01:10 | ミステリー・ハードボイルド
「Zig Zag」 科学ミステリというかホラーというのか



ZigZag 上・下巻 ホセ・カルロス・ソモザ著 宮崎真紀・山田美明訳 エンターブレイン 2007年発行

そうだったのだ、「イデアの洞窟」と同じ著者だった
そういうつもりで買ったのだったか、後から気付いたのか
いずれにしても忘れていたけれど
思い出してみれば筆致が似ているところがある
訳者が違うから同じにはならないけれど
ディックがディックであるように(中には訳に問題ありそうなのもあるが)
個性は伝わってくるものだ

ところが、著者の表記が違っているのはいかなることか
「イデアの洞窟」は「ソモサ」本書は「ソモザ」
「Jose Carlos Somoza」最初の“e”の上にはアクサン・テギュ(アキュート・アクセント?)がついています。最後は“ZA”で、スペイン語読みだと「サ」で良いらしい・・
翻訳するとき何語からだったかによるのか?

「ソモサ」「ソモザ」いずれにしても今ひとつ人気は出なかったようだ
雰囲気を面白がらないと、ちょっと結末に納得いかないかもしれない
物理学的可能性という点ではタイムマシンより論理的にありそうにも思えるが
タイムマシンがない以上に、「ひも」をほどいてそんなリアルな映像が出るのか?
ここの装置を納得しないと全部が破綻してしまう
それができるか、許せるかどうかで読めるか読めないかが決まるのではないか

この中には「イデアの洞窟」でも感じられる
逃げ場のない恐怖、恐怖そのものから逃れられないこと
逃げられないことが恐怖となること
湿度を持って書きこまれている

しかし、クライマックスになっていささかその設定には無理があるのでは
停止した時間の中を移動する場合
稼働可能な領域を包むすべての分子がその移動を阻止する
それを無理に動こうとすれば
気体分子が極小の刃となって稼働である柔らかい結束を断ち切る様に働くのではないか
もっと単純に押しのけることもできず停止させられるのではないか
時間の止まった世界の中を動き回れればと言う誰もが思い描く夢は
意外と単純に潰える夢なのかもしれない

 超弦理論に繰り込まれた歴史を紐解く
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「平凡な時代ミステリの定形」の謎

2010-11-30 21:33:54 | ミステリー・ハードボイルド
「イデアの洞窟」この奇怪な本はいったい何だ!

イデアの洞窟
ホセ・カルロス・ソモサ
文藝春秋

「イデアの洞窟」 ホセ・カルロス・ソモサ著 風間 賢二訳 文芸春秋社

イギリス推理作家協会最優秀長篇賞を受賞したそうだが
この腰巻にも何か賞をあげたい

「この奇怪な本はいったい何だ?!」

と言ってまず驚かす、そしてなにより

「虚実の境を破壊し、驚愕の結末で読者の脳を裏返す本格ミステリ大作。」

私の脳は裏返ったか?裏返りはしなかったが、かなり刺激を受けた
その印象は「本格ミステリ」とはちょっと異質な感じだったのだが
「本格ミステリ」は意外と結末は定式化していないか?
さらに

「歴史ミステリと現代ミステリの衒学的融合により、
平凡な時代ミステリの定型を超越した。」

「衒学的融合」ってなに??「ひけらかして合わせる??」
「薔薇の名前」のバスカビルではないが、探偵ヘラクレスが衒学的なのか

確かに普通ではないミステリで面白い
結末に向けて謎は深まり(事件ではなく「観察者」は誰なのか)
読後にも余韻を残す
ぜひご一読を

 他に読む本があればそれを読んでからでも良いですが
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

スペインの光と影 まとわりついてくるものは何

2010-11-29 23:27:36 | ミステリー・ハードボイルド
「風の影」は映像的な小説・・読み応えあり


「風の影 上・下」 カルロス・ルイス・サフォン著 木村 裕美訳 集英社文庫 2006年発行




この本を読むきっかけは地下鉄の吊り広告だった
腰巻きに有る様に、いかにもベストセラー!という謳い文句で
ただ「深海のyrr」の時もこの謳い文句につられて買って間違わなかったので
まあ、まったく面白くないことはないだろうと買って読んだ
そして、数字は嘘をつかないものだ
聖書が一番面白い本かどうかは別にして(ほんとに面白いといえばそうに違いない)
ハリー・ポッターもダ・ヴィンチ・コードも
好きか嫌いかは別にして読まれるだけのことがある

「風の影」はしかし、500万部と言うベストセラーになるには
いささかくせのある読み応えではある

本好きにとって、謎の書庫「忘れられた本の墓場」はそれだけでもわくわくする
そして謎の本「風の影」が運命に操られたかのように主人公の前に出現する
ラブロマンスもありホラーっぽい雰囲気の中でいささかのエロスもあり
スペイン文学の光と影、文学と言わずその文化と風土の織りなす独特の色彩感が
読んでいる間まとわりついて疑似体験の世界へと導いてくれる

近々続編が出るらしい
楽しみのようでもあり、裏切られはしないかと不安でもあり
しかし、間違いなく買って読むことになるだろう
読み終えて随分経つが
まだまだ余韻を感じることができる本であった

 バルセロナの夕景、銅色に光った空を眼前に蘇らせる雰囲気のある作品
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

私の好きな主人公 その4 リュー・アーチャー

2010-08-15 08:47:25 | ミステリー・ハードボイルド
「動く標的」 これでも私は新しい型(タイプ)の探偵なんです


「動く標的」 (創元推理文庫 132-4) ロス・マクドナルド(著)、田口 俊樹 (訳) 2018年3月
(2010年アップした時のリンクが切れていて、2018年出版の新訳の写真に変更しました)

amazonから写真を借りるとスキャナで取り込んだりリサイズしたりという面倒がない
手元に本がない状態でも(家でなくても)更新できるのでとても楽なのだけれど
絶版になっていたり在庫もないようなものはイメージがない場合がある
そしてイメージがある場合でも装丁が手元の本と違っていることが結構ある
この「動く標的も」我が家にある(1981年9月18版)のは井上一夫訳で
映画化された際のポール・ニューマンが表紙になっているで
映画では「ハーパー」という名前で全体に脚色され、持っているピストルも種類が違うみたいだ

こちらの方が安っぽいがハードボイルドらしい(ポール・ニューマンはカッコ良すぎだけど)気がする

裏表紙は007風だけれど

依頼人となる富豪の未亡人との会話で
「あなたはお酒のほうがいいんでしょう?」
「朝からはやりません。私はこれでも新しい型(タイプ)の探偵なんです」
と自ら宣言している
スペンサーの先輩にあたるのか
だが、いささかシニカルではあってもスペンサーのように饒舌ではない
その点では十分にハードボイルドの王道だろうか
とてもクールな印象がある・・・

ここまで1日1冊ということだけを基本としてきて
やはり無理があることに思い至った(遅すぎる)
本棚にあるものを順番に取り上げていけば良いだけなので
と思ったが、いざ紹介しようと思うと印象はあるが記憶がない!
我が灰色の空洞の脳髄ではいかんともしがたいが・・
やはり読んですぐに書かなければいけない
が、前にも書いたように近頃の読書量たるや惨憺たるものなのでそれも寂しい
新しい本を読もうと思いながら
取り上げた古い本を思い起こそうと結局読み直したりして
これでは新しい本を読む時間がますますなくなる

フリーマントルもパーカーもシリーズを全部とり上げれば
それはあらすじの紹介にしかならないようにも思うし
あらすじを紹介しようとすればきっとほとんど読みなおさなければいけない

古い本については、も少し書誌的に取り上げて
自分なりの読書体験を綴るようにしなければいけないね
お盆明けとなる明日からは少し方針転換、いや
方針を持ってアップしていきたいと決意する次第です

で、リュー・アーチャーはどうなったのか
戦後すぐの時代、アメリカの犯罪を取り上げれば
人種問題、貧富の差と社会構造の暗部に(本体か)に触れざるを得ず
作家マグドナルドはアーチャーに結構重荷を背負わせている気がする
このシリーズもぜひご一読ください

 この頃の本は、日本人作家の原型となっている者が結構あり そういう発掘も面白いのでは
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

私の好きな主人公 その3 スペンサーもしくはスーザン・シルヴァマン

2010-08-14 20:47:24 | ミステリー・ハードボイルド
「初秋」 健全なる市民、もしくはアメリカのエスプリ


「初秋」 ロバート・P・パーカー(著) 菊池 光 (訳) 早川書房 1982年

フィリップ・マーロウやサム・スペードのイメージとは違う探偵像をもとめて
さまざまなタイプのキャラクターが創られた
アルコール中毒だったりホモだったりと
ただ何か影があるいわくつきのイメージでないと
ハードボイルドの主人公にはなれないのか
ロバート・P・パーカーはこれを逆手にとって
主人公を健全なる市民とした
健康のためにジョギングはする、地元スポーツチームのファンである
そして良くしゃべる・・饒舌である
J.J.マローンとは日常生活は真反対だがウィットでは似ているものがある

「初秋」はスペンサーシリーズの代表作だと思うが
いささか趣向が異なる
そしてスペンサーの探偵としての個性を特徴づける作品でもある
ネロ・ウルフとの共通点は小説の中に出てくる料理のレシピ本が出ていること
ウルフと比べればスペンサーはやや健康志向かもしれないが
拘りにおいては負けていない

スペンサーシリーズもぜひ一読を

 ホークも出てきます、忘れずに
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

私の好きな主人公 その2 J.J.マローン

2010-08-13 21:27:49 | ミステリー・ハードボイルド
「大あたり殺人事件」 一番好きな「探偵」登場


「大あたり殺人事件 」 クレイグ・ライス(著) 小泉 喜美子 (訳) 早川書房(ハヤカワ・ミステリ文庫) 1977年

「大あたり殺人事件」の前に「大はずれ殺人事件」があり
さらにその前にジェークとヘレンの馴れ初めとなる事件があるのだが
ここでは本の紹介というよりもJ.J.マローンの紹介ということと
画像を拝借しようと思った先のamazonに他の作品のイメージがなく
ともかくはこれで

J.J.マローンはただしくは刑事弁護士である
彼の手にかかればどんな犯罪者も無罪を勝ち取るとわれるほどの弁護士なのに
いつも金に困って汲々としている
色男にはほど遠く、女に貢いでも逃げられる
ある意味定形化された「一見だめな男、でも実は」というキャラクターだが
とにかく憎めない、ミステリーの中で一番好きな「人物」です

クレイグ・ライスの作品を江戸川乱歩は「ユーモア探偵小説」として
チェスタトンも広い意味でそうだけども、それより「通俗的」だと評している
しかし「本来の探偵小説的興味を少しも減ずることがない」と

J.J.マローンをまだ知らない方は
ぜひとも一度そのユーモアのセンスと男気に触れていただきたいと思います

 何をおいてもJ.J.マローンが好き!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

私の好きな主人公 その1 ネロ・ウルフ

2010-08-12 20:23:08 | ミステリー・ハードボイルド
「料理長が多すぎる」 アーチー・グッドウィンも忘れてはいけない



「料理長が多すぎる」 レックス・スタウト(著) 平井 イサク (訳) 早川書房 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 1976年

美食家探偵ネロ・ウルフと助手のアーチー・グッドウィン
家から外に出ることのない巨漢の探偵は、アーチー・グッドウィン無くして事件の解決はできない
この2人の掛け合いが時間を忘れさせる面白さになっている

この「料理長が多すぎる」では、その家を出て
世界有数の料理長が集まる晩さん会に招かれて汽車にのって出かけるという
ネロ・ウルフものでは珍しい設定になっている

推理小説はどれだけすばらしい完全犯罪(を意図したもの)でも
よくよくつきつめていくとどこかにほころびがあり
それが引っ掛かると一気に面白みが薄れたり白けたりしてしまう
もちろん、動機、トリック、意外性のどれもが素晴らしい傑作はあり
読み終わって素直に脱帽するものもある
しかし、所詮は偶然こそが最大の完全犯罪を生むトリックだと
ひねくれた私は思っている、ので
探偵小説では探偵の個性と脇役たちのキャラクターを第一と考える
というより、そういう探偵小説が好きだというべきなのだろう

レックス・スタウトの多くの作品は
動機もトリックも意外性(動機がしっかりしていないと意外性も生じないことが多い)も
今一つか二つの作品が多いが
シリーズを通して、探偵ネロ・ウルフのキャラクターで読んでしまう
娯楽として楽しめる、安心して読める、シリーズ化していて何作もその世界に浸ることができる
そういうシリーズも私の好きな主人公として取り上げていきたい

レックス・スタウトのネロ・ウルフシリーズ
クレイグ・ライスのジュークとヘレンそしてJ.J.マローン
ロバート・B・パーカーのスペンサー(よりスーザン・シルヴァマンの方が好きか)
ロス・マグドナルドのリュー・アーチャー
忘れてならないレイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウ
などなど

もちろんシャーロック・ホームズ、ブラウン神父、ポアロもそうなるのだが
こちらはやや大御所すぎる古典となってしまうので
取り上げるにはおこがましいかと思う(マーロウあたりは古典か?)


レックス・スタウトの代表作 面白くないわけがない
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エスピオナージ不朽の名作

2010-08-11 21:33:33 | ミステリー・ハードボイルド
「消されかけた男」 チャーリー・マフィンシリーズの始まり


「消されかけた男」 Brian Freemantle(著) 稲葉 明雄(訳) 新潮社 (新潮文庫) 1979年

エスピオナージ(スパイ活動もの)ではエリック・アンブラーの名をまず思い浮かべる
ただ、やはりいささか古いのか・・
今では東西冷戦下のスパイものよりも、中東をからめた巻き込まれがたのアクション派が主流なのだろうか

チャーリー・マフィンシリーズの第1作として秀逸な作品
誰を疑い、誰を信じ、そして何のために
尽くしたはずの国家がいとも簡単に切り捨てるもの
その国家を相手にたった1人の男が戦う
こうした構図ではあるが、最後まで気を許さず読まねばならない

フリーマントルはチャーリー・マフィンシリーズ以外にも多数の作品があり
多作な作家と言えるだろう
それぞれが一定の水準で書かれていて
夜長を飽きさせない作家と言える

「消されかけた男」は様々なジャンルからBEST100冊を選ぶとすれば
それに加えて問題の無い秀作だと思う

 まずは読んでみてほしい1冊
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする