アリ@チャピ堂 お気楽本のブログ

日々の読書記録を勝手きままに書き記す

スペインのフィリップ・マーロウ ペペ・カルヴバイヨ登場 

2010-08-01 21:26:45 | ミステリー・ハードボイルド
「死の谷を歩む男」 ハードボイルドの主人公はクールのはずが、でもしっかり影もある


M・バスケス・モンテルバン著
創元推理文庫 1977年

多国籍企業のスペイン代表者が何者かに殺された。そして同社の監査役が行方不明に。捜査を依頼されたのは、グルメで色好みのシニカルな私立探偵ペペ・カルバイヨ。彼は被害者の周辺を洗い、徐々に事の真相にせまっていったが……。スペイン随一の人気作家が、バルセロナの街を舞台に、カタルーニアの光と影をみごとに活写した傑作ハードボイルド。

と、裏表紙の梗概に書かれています
その通りというところです

バルセロナを州都とするカタルーニャ州は原語としてもカタルーニャ語を公用語とする
現在のスペインで強い自治権を認められた地域で
フランコ独裁政権下ではカタルーニャ語の使用禁止など抑圧された歴史がある

バルセロナだけではなくフランコ独裁政権下のスペインでは
抑圧され屈折した「光と影」がその時代を語る文学の中に込められていて
それが主人公や登場人物に独特の陰影をつけている

ビスクテールという助手がなかなか面白く
スペインでのベストセラーシリーズだとあったので
続編が楽しめるかと思ったが
日本ではもう1冊「楽園を求めた男」だけのようである
現在、この本自体が絶版になっているかもしれなし
ちょっと残念ではある

 古本屋で捜してみてね
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最近の定番スタイル 女性主人公の個性を差別化しようとして失敗

2010-07-26 22:00:00 | ミステリー・ハードボイルド
「ヒラムの儀式」 定番中の定番は低番付か・・


「ヒラムの儀式(上)」 エリック・ジャコメッティ、 ジャック・ラヴェンヌ(著) 吉田 花子(訳) 講談社 (講談社文庫) 2009年


「ヒラムの儀式(下)」 エリック・ジャコメッティ、 ジャック・ラヴェンヌ(著) 吉田 花子(訳) 講談社 (講談社文庫) 2009年

探究ものでフリーメーソン、女性主人公と相棒の男性、アクションもたっぷり、そして上下2巻
これは「ダヴィンチ・コード」の後を明確に追いながらも
どうしたら違いが出るかということで話を作っていたために
女性主人公がやや屈折気味になり失敗している・・好きになれないとだめですね
一つの定番として、主人公自身が異常者ということでなければ
やはりあまり残酷であったりバカであったりというのは好まれないでしょう
リアルさを作ろうと主人公に過剰な危害を加えてみたり
展開の中に他の何かを意識した場当たり性があるのではないか・・

ずいぶん前に読んだややあやふやになった記憶でここまで書いて良いかと思いますが
良い印象があまりない・・・
ならば、載せなくても定番を追って流れで載せてしまいました


女性主人公との性格の不一致で・・
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錬金術師の夢、人類普遍の夢をかなえる謎を追って時代を超えた追跡が

2010-07-25 22:00:00 | ミステリー・ハードボイルド
「ウロボロスの古写本」 上下2巻、主人公は若い女性、ハンサムな支援者 定番中の定番だけど読ませます


「ウロボロスの古写本 上」 レイモンド・クーリー (著) 澁谷 正子(訳) 早川書房(ハヤカワ文庫NV) 2009年


「ウロボロスの古写本 下」 レイモンド・クーリー (著) 澁谷 正子(訳) 早川書房(ハヤカワ文庫NV) 2009年

この本を読み始める前に、新しいブックカバーが必要になる
早川書房はちょっと背の高い「トールサイズ」を責任を持ってすべての文庫に広げられるのか?!
中途半端はやめてほしいと思うのは私だけか
ハヤカワ文庫は、活字を大きくするために本のサイズを少し大きくし始めた
確かに少しのことでも読みやすくなれば良い・・が
既存の文庫版ブックカバーには入らいない
せっかく背のそろっている文庫書棚の見栄えが悪くなるし
上に本を積む場合に邪魔になる・・などなど
この問題だけで終わってしまいそうなので、別の機会で考えるとして先に進もう

このごろの海外小説の定番は
主人公は若い女性とそれを守る年上の男性
観光名所をスピーディにめぐり危機に陥りながらも逃げ延びる
ダン・ブラウンを真似たというよいダン・ブラウンも従った手法で
どれも映画化を強く意識しているように思う
それはそれなりにテンポもあって良いのだが、それに縛られすぎて本としての読み応えは大丈夫なのか
とにかくも、この本もきちんと鉄則を守っている

同じ作者で「テンプル騎士団の古文書」という本が先にでいたらしい
店頭で並んでいるのを見て「テンプル騎士団の古文書」というタイトルがちょっと手を引かせる感じがあり
これは訳者と出版社の責任でもあるのだろう・・原題は「The Last Templar」でこれでもだめか
「謎の謎の本」と言っているような、あまりにも直截的なタイトルで
内容に厚みがないことを想像させる・・同一著者であることは分かったが
こっちの方が面白そうだろうと買った・・ような記憶がある

結論から言えば、最後が良かった
途中から気が付かせるところもあるが、それがわかってもプロットもそれなりに面白い
ナグハマディ写本とか死海文書とか乾燥したアラブ世界には
ヨーロッパの文化的背骨を揺るがすような文書がどこかしこかにある
そうした潜在的な関心がこうした物語をよりミステリアスに仕立て上げるのだろう

ファイナルファンタジーでお馴染みのアイテム(そういえばコンビニで売ってましたね)
そうしたものの源流が重要なミステリーの主題となる
そのきっかけとなったのは「ダヴィンチ・コード」ではなくて
フーコーの「薔薇の名前」なのだと思う
しかし、そこには「若い女性」は現れない、映画化もされ評価もされたけれど
「探究もの」とか、何かジャンルが作れそうな小説群がたくさん書かれていて
それらの中には同じような固有名詞、象徴がちりばめられていて
それらをどのように輝かせているのか比較するのも面白いだろう

この本は、そうした幾つかの候補の中にあげておいても損はしないだろうと思う


ハードボイルド的な要素が少し減るとよいけれど、読んで損はしないでしょう

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2009年 このミステリーがすごいランキング第1位に納得

2010-07-24 14:23:43 | ミステリー・ハードボイルド
「チャイルド44」 2009年このミステリーがすごいブックランキング海外編第1位・・は気が重い


「チャイルド44 上」 トム・ロブ スミス (著) , 田口 俊樹 (訳) 新潮社 (新潮文庫)   2008年


「チャイルド44 下」 トム・ロブ スミス (著) , 田口 俊樹 (訳) 新潮社 (新潮文庫)   2008年

「このミステリーがすごい!」2009年海外編第1位となった作品
ずっと読書量が減って、月に何冊?という程度。週に1冊読めば上々・・
体力の衰えで夜間の頑張りが効かなくなる、根気や集中力も萎えてきて
その上、恥ずかしげもなくブログなんか立ち上げる・・ますます時間がなくなって
で、何が言いたいのか
そういう状況を考慮しても、この本を読み始めてからペースを上げるまで時間がかかりました
暗い、つらい、悲しい・・この本にどんな終わり方があるのだろう
胃の中に重い石が溜まっていく感じの閉塞感がありました
日本の若者の将来に横わたっている閉塞感がそれを他人事と思えなくする
ただのホラーになっていくのか、どの辺が「第1位」なのかと

カフカの「城」のようなことはありませんが
この暗さゆえに1年ほど前に読み始めながら一度放棄したままになっていました
今一度と読み始めて、この暗さが再度身に染みるとともに
別の意味のミステリーに遭遇しました・・・どこまで読んでも、自分が放棄した個所に行き当たらない
冒頭は覚えいている、途中の記憶はあやふやだ、しかし、事件は覚えている
いつ事件が始まるのだろう・・・2分冊の1冊目の途中で止めていたはずなのに
そして、灰色の萎びた脳髄はあることに思いいたりました
前回、確かに「上巻」を読み始めたが(普通そうです)、なぜか途中から本が「下巻」に変わっていた・・
だから、途中の記憶があやふやなのではなく、記憶にないのが当然で
しかも、上巻を読んでいる間は「放棄した個所」に行きつかないのだと・・
これはミステリーというよりは「ミスっている」(無理矢理)だけ、ボケの始まりです、ありえないですね

・・いや、そういえば「深海のyrr」は第2巻から読み始めたか・・益々心配です

ただ、前半部の行き場のない憤りや重さがあるので
動機が明かされるクライマックスの場面で、むしろ解放される安堵感?のために
「衝撃」が薄れてしまうぐらいでした
読み終えてみれば「第1位」なのだろうと納得する1冊です
適度な謎解き、アクションもそれなりに、そして全体を通底する重苦しさとロマンスも
何よりもプロットの秀逸さ、バランスの良い作品です


秀逸!!

蛇足です
この頃、海外ミステリーはほとんど上下2冊になっていて
「1作品」読み終えるに「2冊」読まなければいけない・・
出版社の都合によるのだろうけど・・1冊でいいじゃないっという本結構あると思います

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これは学園もの?悩みながら解読するのは暗号だけではなく人生もね

2010-07-20 21:41:59 | ミステリー・ハードボイルド
「フランチェスコの暗号」は腰巻の惹句がすべて
「青春はいつだって暗号だ」


そういったのは恩田陸さんだそうです


「フランチェスコの暗号〈上〉」 イアン コールドウェル、 ダスティン トマスン(著) 柿沼 瑛子(訳) 新潮社 (新潮文庫) 2004年


「フランチェスコの暗号〈下〉」 イアン コールドウェル、 ダスティン トマスン(著) 柿沼 瑛子(訳) 新潮社 (新潮文庫) 2004年

これは「本の本」に入れて良いのか・・いや、やはり探求ものになるのでしょう・・
宝を求めて暗号を解読し、そして手に入れられるものは、あるいは失うものは何?!
暗号解読の面白さと学園、しかもアメリカでは上流階級を形成するアイビーリーグの
学生たちの青春ドラマを織り込んでいて面白く読みました
けれど書評を見ると「翻訳が日本語になっていない」と結構突き放されています

暗号ものは翻訳するのが大変ではないかなといつも思います
ヒントになる言葉や事柄が日本語に置き換えにくい
なぞって行くためには原語の知識が必要になることもある
それを、意味を変えずにわかるように日本語にして、なおかつ味のある文章にする
これは結構大変でしょう

結末で大団円を迎えると言うのも探求ものはなかなか難しい
そんな宝がでてきしまっては歴史が覆るだろう!!税金はどうする?!
映画「ナショナル・トレジャー」では見つけてしまいますけれど
この本の求めている「宝」は、どうも友情や愛であるようです

登場人物の人間模様に苛立たされ中断される方もあるやもしれません
でも、見方を変えて登場人物の作りだす暗号を解読する
そういう視点でも楽しんで読めばなかなかに面白い作品だと思います


まあまあ?でも結構面白い
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P2はフリーメーソンもからむ法王暗殺劇 でも意外と淡白な

2010-07-17 20:45:54 | ミステリー・ハードボイルド
「P2」は秘密結社ものだけど?

ある日、地下鉄に乗っていてふと見上げると新潮社のつり広告
そこにこの本の広告がありました
思ったよりも力が入っていたのか・・しかし


「P2〈上〉」 ルイス・ミゲル ローシャ(著) 木村 裕美(訳) 新潮社 (新潮文庫) 2010年


「P2〈下〉」 ルイス・ミゲル ローシャ(著) 木村 裕美(訳) 新潮社 (新潮文庫) 2010年

法王就任後33日で亡くなったヨハネ・パウロ1世の死の謎と
ヨーロッパ社会に蔓延る秘密結社の支配・・
そして主人公の女性記者と謎の支援者「ラファエロ」とのラブロマンス

暴露ものとしてどれぐらい史実を踏襲しているのか
ヨーロッパ現代史、もしくは3面記事に通じているともう少し面白かったかもしれませんが
ダヴィンチ・コードほどのわくわく感はなく
ダヴィンチ・コードがジェットコースター(褒めすぎか?)だったら
三角公園の滑り台ぐらいの楽しさと安全さがありました

実は、書かれていることの大半(史実の部分)が本当なのかもしれない
それにフィクションをからめているのだけれど
事実であるがゆえに伏線も何もない(悪い奴は単純に悪いので)
まわりのキャラクターが映えない、活躍の必然性がない
悪い方たちとのからみがすれちがってしまう

ダヴィンチ・コードを真似せずに
悪人をもっと悪く、ドキュメントタッチの読み物にしたほうが
よかったのではないかと思いました

さてABMは

うーん、残念
でした
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