十数年ぶりで東京湾へはぜ釣りに出かけた。小学生の頃から通っていた海はどこへ行ったのかさっぱりわからない。フジテレビもレインボーブリッジもない頃だからわからなくて当たり前だ。おやじの生誕91周年,何とも中途半端な記念だが,いいのだ,釣りへ出かける口実ができれば。
小さい頃,船頭は僕のことを「坊ちゃん」と呼んでいたが,そのうち「若旦那」となった。落語のなかの遊び人のようで悪い気はしなかった。「若旦那!ちょっと舵握ってください」広い東京湾で船頭の役をした。でも考えてみれば,草履をとらされる旦那と大して変わりがない。
若旦那は旦那となり,この日、大旦那は船の周りをふわふわとしていたようだ。