いわきから福島へ行くには海岸沿いの国道6号を行くか、山の中の399号を行くか2つのルートがある。6号の方が道は広く高低差も少ないのでらくだが、いくつも続くコンクリートの建物が不気味で山の中の道を通ることが多くなった。
399号を北上すると小川町を抜け双葉郡川内村に入る。途中、天山文庫という小川町出身の詩人、草野心平を記念した建物がある。茅葺きでモダーンな作りで、中には囲炉裏がきってあった。
(天山文庫 http://www.kawauchimura.com/tenzanbunko.html)
この時は墓探しをして、見つけたら墓参りをして来ようという旅だった。親の墓でも親戚の墓でもない。画家、作家である辻まことの墓だ。川内村の長福寺に建てたということは知っていた。その長福寺へ向かう途中寄ったのが天山文庫だった。
板の間に上がり込み展示物を見ていた。するとこの建物が昭和41年に落成した時の芳名録が置いてあった。ぱらぱらとめくってみてびっくりした、なんと辻まことのサインがあるではないか。草野心平と辻まことは「歴程」の同人。長福寺も草野心平の紹介らしい。
川内村は中心部を緩やかな川が流れるのどかな村だった。長福寺はすぐに見つかった。住職に墓参の旨を伝え場所を聞いた。ウラヤマに自然石を使った墓石はあった。
ヤマを下り住職に礼をいうと、「まあ、上がって一服していきなさい」と言って奥の冷蔵庫からアイスキャンディーを持ってきてくれた。しばらく世間話をし寺を後にした。
もうあの墓には墓参はできないかもしれない。住職はどうしただろう。被災者検索をしても出て来ない。
(写真と記事の内容は関係ありません。)