暴走する悪徳エリートの所業
272425 東電OB・蓮池さんの福島原発事件総括~「原子力ムラは非常に恐ろしいところだ」
ET 13/01/22 PM09 【印刷用へ】
「ジャーナリスト同盟」通信 (リンクより、蓮池さんの発言部分を中心に紹介します。
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●東電OB・蓮池透の福島原発事件総括
蓮池透をご存知の方も多いだろう。
北朝拉致被害者家族連絡会の元副代表だ。
東京理科大学を卒業して東電に入社、原子力燃料リサイクル部部長を歴任、2009年に退社している。福島原発に5年半も勤務、3号機と4号機の面倒を見てきた御仁だ。そんな彼の講演録(2012年11月)が手に入ったので、その要旨を紹介したい。
筆者はこれまで腐敗した東電関係者の声を聞いたことが無い。首脳部・労組員含めて沈黙している。蓮池の、内側からの東電福島原発事件総括はそれなりに価値あるものと思いたい。
●変わらない腐敗した東電体質
それでも彼は、講演冒頭で現東電首脳部の姿勢については、こっぴどく批判した。「昔のような普通の電力会社に戻りたいという思いが非常に強い。未曾有の事故を起こした会社としてふさわしい態度なのか」と。
蓮池によると、東電では「炉心溶融・メルトダウンは100万年に1回の確率で起こるものと言われてきた」という。原子力ムラの安全神話は、ここから派生したものだろう。恐ろしく非科学的な世界が存在したことに驚きを禁じ得ない。おごりと官僚体質の東電だと決めつける東電OBの現状認識は正しい。
●メルトダウンと言わない首脳部
3・11から大分経った2カ月後に突然「メルトダウンだった」という報道がなされた。2か月も嘘を突いていた。ところが、なんと「東電では今も、この言葉を使っていない」というのである。事実を認めないのだ。「東電の事故調査報告書を見ても、メルトダウンと言う言葉は、人が言った言葉に限られている。東電は炉心損傷と言っている」と蓮池は内幕を明かした。
「犯人は津波」が政府や東電の言い分なのだ。
「被害者は東電。責任は津波だ」というのが、東電の認識というのだ。
開いた口がふさがらない。
●司法・検察で犯人を
東電OBは「これは司法・検察の力を借りて調べてもらわないと。誰が責任を取るのか。いまだに処分された社員は一人もいない。非常にいかがなものか」と批判する。
●今も残る謎
「2号機の原子炉の格納容器の圧力が上がった。弁を開けようとするが、電気でも開かない、空気圧でも開かない、そうこうしている時に圧力が下がった。なぜ下がったのか、未だに不明だ。この時に福島事故で放出された放射性物質は約5分の1と言われている。これは今も謎だ」
こういう事実を庶民・民衆は知らない。2号機の水素爆発はいまだに謎なのだ。「私どもは建物が水素で爆発するとは全く考えていなかった」「格納容器の水素爆発は念頭にあったが、格納容器に溜まっているはずの水素が、外側の建物にどう漏れ出したのか、いまだに分かっていない」
当事者・専門家も分からない謎が、今も尾を引いている。それでいて、もう終わったという野田の収束宣言に対して彼は、本気で怒る。
●誰も見てない原子炉内
「2号機からの大量の放射性物質の放散と、それから建物の水素爆発は大きな謎だが、一番のポイントはメルトダウンしたといわれる原子炉の中を、誰も見ていない点だ」
重大な事実は「誰も原子炉内を見ていない」ことである。
燃料がどうなっているのか、どの程度溶けているのか、圧力容器を貫通しているのか、貫通なら、その下の格納容器のどの部分に落ちているのか。「全く分からない」と言い切る。
危機的状況を少しでも改善しようとして、東電とその下請けの作業員が毎日3000人規模で働いているのだと言う。
「1,2,3号機の原子炉の蓋がいつ開くのかと考えると、気が遠くなる。4号機の使用済み燃料プールにある燃料を2013年12月に取り出すと言っているが、一体どうなるのか。本当に気が遠くなる」
●再稼働は金もうけ
「お客目線が欠如している」と言って怒る蓮池だ。
「東電は自分たちの再生と存続に重きを置いて仕事をしている。普通の会社であれば、とっくに倒産しているのに」と言って古巣の体質を嘆く。
「原発は安全だから安全、と繰り返してきた。噛み砕いて説明できない。本来は、潜在的な危険性を内包している原発、そのリスクを顕在化させない努力をしている、というべきだ」
「原発は国策で進められてきた。だから教科書にまでも。原発は非常にクリーンなエネルギー、コストが安いと。それからコストが上がってくると、今度はクリーンエネルギーだと」
なぜ再稼働なのか。
それは電力の不足からでは全くない。経営がその理由だと断言する東電OBである。再稼働は不要なのだ。現に停電で困っている日本人はいない。
●危うい検証
捜査が入らない巨大事故検証もいい加減だ。
「事故当時、混乱がひどくて住民非難を含めて説明がデタラメ。SPEEDIの装置が機能ゼロ。メルトダウンも2カ月後に公表。そのせいで国民の意識も少し違った」
各事故調査委員会の最終報告書を読んでないので知らなかったのだが、蓮池によると「原子炉の中を見たわけではない」と断りの言葉が載っているという。原子炉内が分からないのに最終報告に疑問を呈する。確かにそうだ。
事故調報告書をどう検証してゆくのか、責任は誰が?いまだにはっきりしていない、とも指摘する。以上のような蓮池の疑問を、現場を知らない専門家はどう主張しているのだろうか。
●増え続ける核のゴミ
蓮池は「原子力ムラの解体」を訴えている。
原子力ムラの既得権益を排除することだ、とも叫ぶ。「原子力ムラは非常に恐ろしいところだ」という彼の一言に頷くほかない。
原子力学会なるものが存在しているという。春と秋に大会を開く。そこで、ある研究員は「災い転じて福となす」と発言した。
聞いていた東電OBは腰を抜かしたという。確かに恐ろしい原子力ムラであろうか。それを国民は知らない。
核のゴミに深刻な懸念を示す蓮池である。
「使用済み燃料を再処理した後に出てくる、いわゆる死の灰」を核のゴミという。このゴミ捨て場にされそうになったのが、マリアナ海峡や南極、大気圏外。結局は地層に処分すると。しかし、10万年もの間どう管理するのか?不可能だ。
「核のゴミは円柱状の直径40センチ、高さ130センチのガラスに固める、しかし、このガラス固体物を埋めるところはない」のである。現在、これが1500本も青森の六ケ所村に貯蔵してある。
無知な村民を騙したのであろう。哀れだ。ここは中間貯蔵だ。
現在、使用済み燃料は6万体という。これを再処理してガラス固体物にすると、ざっと2万5000本になるのだという。これをどうするのか?方法はない。
「使用済み燃料を地下に埋めろ」という乱暴な意見があるらしい。
「こんな方法は誰も研究していない」という。
初めから不可能と分かっているからだ。