ある小学生のこと

３年前の冬のこと。特定健診を受診し、結果説明までの空き時間に夫婦で病院の周辺を散策していました。知らない場所ではないので、あっちへ行こうか、こっちの方がいいよと気ままにふらふらと歩いていた時、一人の少年が一直線に近づいてきました。

小学校高学年らしいその男の子は、「どうしましたか、大丈夫ですか」と声をかけてきました。一瞬、何を聞かれているのか分からなかったのですが、どうやら私たちが道迷いをしていると思って声をかけてくれたようです。高齢者二人が行きつ戻りつしているのを見てそう察したものと合点しましたので、「大丈夫ですよ、ありがとう」と伝えました。

小学生の思わぬ行動に面喰ったのですが、今時感心な小学生もいるのだなあと感心もしました。

しばらくして近くの小学校の指導なのかなと察しました。学校に連絡して生徒の善行を伝えようと思いましたが、学校名も氏名も聞いてなく、ついにその機会を逸しました。

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小学生の行動は、今回は空振りだったわけですが、本当に高齢者が道に迷っていた時には間違いなく助けになったはずです。実際、毎日のように防災無線で高齢者の行方不明情報が流れてきます。このような子供がいることが力強く感じられます。このような児童が多くいて、社会人になって活躍すれば世の中はもっと住みやすくなるでしょう。

翻って、私自身が小さな子供たちに対して何かよいことをしてきただろうか、しているだろうか、この児童のように困っている人に物怖じせずに行動したことがあるだろうか、と考えると自信をもって答えることはできません。

ただ、ひとつだけ言えるのは、この一件を思い出すと私の心に光が灯り、まだまだ日本も捨てたものではないと思えることです。

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一年がいよいよ押し詰まった日になって、ふと、この記憶がよみがえったので書いてみました。

皆さまによいお年が訪れますようお祈りしております。2023年もご愛読いただき、ありがとうございました。∎

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2023年最後の動画は、ブラームスのヴィオラ・ソナタ第２番から第１楽章（アレグロ・アマービレ）です。ブラームス晩年の作品で、クラリネットが原曲、ヴィオラ用も作曲者自身の編曲によります。冒頭の甘やかな旋律が忘れ難い曲です。

願わくば、来年は穏やかな年でありますように…

Brahms, Sonata in E flat Major op.120, Marina Thibeault-Viola, Janelle Fung-Piano