練習曲で長~い間お世話になっているドッツァー(Justus Johann Friedrich Dotzauer, 1783-1860)のフルート四重奏曲(作品37、38)とオーボエ四重奏曲(作品57)を聴きました。ドッツァーの録音は、チェロ以外は極めて少ないのですが、これは木管が入った珍しい1枚と言えるでしょう。これが世界初録音となっています。
ドッツァーは、ほぼベートーベンとは一回り下、シューベルトよりほぼ一回り上、ウェーバーとほぼ同世代という位置関係です。フランスのゴセックやブレヴァルとほぼ同じ時代を過ごしたと言ってもよいでしょう。日本では天明から安政、万延の頃でした。それはさて措き。
ドッツァーがこれらの曲を作曲した頃はドレスデンの宮廷楽団に所属していた時期で、1821年からはソリストとしても活躍します。壮年期に差し掛かるころでした。気品さえ感じる曲は、宮廷と言う場所柄もあるけれど、やはり彼の性格によるところが大きいのではないでしょうか。実力がもたらした安定した地位と収入も影響していると思われます。
この3曲はドッツァーらしい、少し憂いのある旋律が魅力的な曲です。弦楽三重奏に木管が加わってより柔らかくも華やかな響きになっています。曲想は天真爛漫でのびやかです。モーツァルトのようであり、ハイドン風でもありなのですが、私はドレスデンの残照のような印象を受けます。あくまでもエレガントに、そして明るさを失わない歌は、コロナの時代においては慰めにも似た音楽であるような気もします。一方で、この曲を聴いていると、ドッツァーが没後忘れられてしまった理由も分かるような気もするのです。つまり、産業革命の進展による音楽趣味の変化。∎
Dotzauer, Justus Johann Friedrich: Flute and Oboe Quartets. Quartet for oboe violin, viola and cello in F major, op. 37 (1815), Quartet for flute, violin, viola and cello in A minor, op. 38 (1816), Third quartet for flute, violin, viola and cello in E major, op. 57 (1822). Ensemble Pyramide. recorded in 2017. Toccata Classics TOCC 0421.
ドッツァーではありませんが、Ensemble Pyramideによるシシリエンヌ(フォーレ)の演奏です。
Ensemble Pyramide Zürich