
館ひろし主演で話題の映画、『終わった人』を観に行ってきました。今後の参考にと(笑)妻と連れだって観てきました。久し振りの映画、初めてのシネマコンプレックスです。
目的の「映画館」は、広くてきれいなショッピングセンターの中にあり、清潔で近代的、しかもその名のとおり複数のスクリーンを持ち、チケット売り場は自動販売機、モギリ嬢もいません。昔の映画館しか知らない世代には勝手が違います。喜ぶべきか悲しむべきか、いつの間にかシニア料金千百円也。昭和は遠くなりにけり。
■
さて、ざっと昼食と買い物を済ませて『終わった人』へ。
冒頭シーンは定年の日に自分のデスクで時計を見つめる主人公の姿で始まります。メガバンクから移籍して定年を迎えた田代壮介専務取締役(舘)の居場所は大部屋の一角という侘しさです。シュミット部長代理は個室だったのに。『アバウト・シュミット』のパロディでもあるように思えますが、彼はメガバンクで奮闘したものの役員を目前に運悪く出世がとん挫、子会社で「終わった人」なのでした。
出向役員となった彼の屈折した心理は全編にわたって続きます。「定年って生前葬だな」というマイナスな言葉にも彼の人生が反映しているでしょう。団塊世代の競争社会の中で鍛えられた田代氏は徹頭徹尾会社人間の昭和の男です。「悠々自適」なぞできるわけがありません。東大法卒、元エリート銀行員は不完全燃焼のままで定年を迎えたのです。
■■
コメディーなので、退職後の戸惑う姿がユーモラスに描かれます。誰でも経験する典型的なもののせいか、共感もできるように思います。舘の演技も心得たもので、うまく戯画化されていますし客席からも笑いがもれていました。
田代氏はいろいろとチャレンジ(というか悪足掻き)するのですが、結局、スーツを着てバリバリ仕事をするのが本性なので失敗します。あるいは自ら放棄します。「過去の栄光」が色濃く影を落としているのです。何歳か若い妻千草(黒木)も自分の世界を確立していて、さらに強固なものにしようとしているので、ふたりの会話、行動はどんどん乖離していきます。
やがて、田代氏は自分の求めていたものに出会い満足しますが、それが妻を巻き込んだ大きな転機となってしまいます。
通常の定年をテーマにした作品が、庶民的、あるいは一般的な退職者の悲哀や諦念などをテーマとするなかで、この主人公はずば抜けてエリートであるところが面白いところです。定年後も退屈と穏やかさが続くのではなくドラマチックな展開へと進みます。彼の経歴と失敗が逆に一般的な人間の退職後の在り方、人生を照射するかのように思えます。
そうでなければ、この映画はふるさと回帰をテーマにしたホームドラマのようになってしまうのではないでしょうか。
この映画の後半は、経済的危機が夫婦、家族をどう際立たせるかにあるようにみえます。物語で発生する危機は普通ではあり得ない危機ですし、エリートでもない人間はすんなりと「ジジババ」の世界に入っていきますから(笑)定年後の自分や夫婦の在り方まで深く考える機会はないでしょう。
しかし、画一化された「悠々自適」などではない、新しい定年後の世界があってもよいかも知れません。それは多様なあり方を持つものであってほしいと思います。同時にこちらも変わらないといけないのかなとも。
終わった人とは言え、最近の退職者は冒頭のような「社会の変化」にも応じなければならないし、今までの経験も生かしたいしと、結構忙しい日々です(笑)。
映画のみでは、経済的危機状況がよく分らなかったので、原作を購入して読んでみました。だいたい理解できました(笑)。
目的の「映画館」は、広くてきれいなショッピングセンターの中にあり、清潔で近代的、しかもその名のとおり複数のスクリーンを持ち、チケット売り場は自動販売機、モギリ嬢もいません。昔の映画館しか知らない世代には勝手が違います。喜ぶべきか悲しむべきか、いつの間にかシニア料金千百円也。昭和は遠くなりにけり。
■
さて、ざっと昼食と買い物を済ませて『終わった人』へ。
冒頭シーンは定年の日に自分のデスクで時計を見つめる主人公の姿で始まります。メガバンクから移籍して定年を迎えた田代壮介専務取締役(舘)の居場所は大部屋の一角という侘しさです。シュミット部長代理は個室だったのに。『アバウト・シュミット』のパロディでもあるように思えますが、彼はメガバンクで奮闘したものの役員を目前に運悪く出世がとん挫、子会社で「終わった人」なのでした。
出向役員となった彼の屈折した心理は全編にわたって続きます。「定年って生前葬だな」というマイナスな言葉にも彼の人生が反映しているでしょう。団塊世代の競争社会の中で鍛えられた田代氏は徹頭徹尾会社人間の昭和の男です。「悠々自適」なぞできるわけがありません。東大法卒、元エリート銀行員は不完全燃焼のままで定年を迎えたのです。
■■
コメディーなので、退職後の戸惑う姿がユーモラスに描かれます。誰でも経験する典型的なもののせいか、共感もできるように思います。舘の演技も心得たもので、うまく戯画化されていますし客席からも笑いがもれていました。
田代氏はいろいろとチャレンジ(というか悪足掻き)するのですが、結局、スーツを着てバリバリ仕事をするのが本性なので失敗します。あるいは自ら放棄します。「過去の栄光」が色濃く影を落としているのです。何歳か若い妻千草(黒木)も自分の世界を確立していて、さらに強固なものにしようとしているので、ふたりの会話、行動はどんどん乖離していきます。
■■
■
■
やがて、田代氏は自分の求めていたものに出会い満足しますが、それが妻を巻き込んだ大きな転機となってしまいます。
通常の定年をテーマにした作品が、庶民的、あるいは一般的な退職者の悲哀や諦念などをテーマとするなかで、この主人公はずば抜けてエリートであるところが面白いところです。定年後も退屈と穏やかさが続くのではなくドラマチックな展開へと進みます。彼の経歴と失敗が逆に一般的な人間の退職後の在り方、人生を照射するかのように思えます。
そうでなければ、この映画はふるさと回帰をテーマにしたホームドラマのようになってしまうのではないでしょうか。
■■
■■
■■
この映画の後半は、経済的危機が夫婦、家族をどう際立たせるかにあるようにみえます。物語で発生する危機は普通ではあり得ない危機ですし、エリートでもない人間はすんなりと「ジジババ」の世界に入っていきますから(笑)定年後の自分や夫婦の在り方まで深く考える機会はないでしょう。
しかし、画一化された「悠々自適」などではない、新しい定年後の世界があってもよいかも知れません。それは多様なあり方を持つものであってほしいと思います。同時にこちらも変わらないといけないのかなとも。
終わった人とは言え、最近の退職者は冒頭のような「社会の変化」にも応じなければならないし、今までの経験も生かしたいしと、結構忙しい日々です(笑)。
映画のみでは、経済的危機状況がよく分らなかったので、原作を購入して読んでみました。だいたい理解できました(笑)。
『終わった人』 東映、2018年6月9日公開、125分.「終わった人」製作委員会.監督:中田秀夫 出演:舘ひろし、黒木 瞳、広末涼子、笹野高史 他.原作:内館牧子著『終わった人』(講談社)
内館牧子著『終わった人』(講談社文庫)2018年3月刊.