この本は、その昔、模型鉄道のレイアウトを作ろうと思い参考に買った本で、かなり内容の濃いものです。魅力的なレイアウトは、単に車両を走らすだけでなく、実際の風景(シーナリィ)を縮小し作り込まなければならないのです。意気込んだものの、時間とお金とスペースに恵まれず(笑)、構想は膨らんだのですが、実現はおろか着手にも至りませんでした。
この本には、当時のローカル線を中心とした鉄道風景が写真と図で詳しく紹介され、駅や機関庫、信号所などの建造物(ストラクチャー)を模型化する際の得難い参考資料になっています。これを基にレイアウトを製作すればリアルなミニチュア鉄道ができあがるというわけです。
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しかし、本の中の風景も遠い過去のものになってしまいましたし、これらの鉄道風景に郷愁を感じる世代も少なくなったことでしょう。逆に、少し昔の普通の景色を知る手掛かりとして有益になっているように思います。
音楽を始めてからは模型鉄道は完全に「未成線」となり、たまに思い出すだけの幻の鉄道になりました。幻以外の私の鉄道遺産は、捨てきれずに手元にあるこの本や前回の『鉄道原風景』くらいです。鉄道趣味が中途半端に終わったため、その後の新しい車両にはまったく関心がなく、昔の車両や風景ばかり思い出します。後ろ向きだなあとお笑いください。∎
河田耕一著『シーナリィ・ガイド』機芸出版社、1974年6月刊.