かりんとう日記

禁煙支援専門医の私的生活

真夜中の自分

2014年08月30日 | がん病棟で
夜になると豹変する患者さんがいる。
夜間せん妄というやつだ。

たいていは高齢者に多く、動脈硬化による脳機能の障害、がんなどの慢性消耗性疾患、脱水、コントロールできていない疼痛や不安などが関与するものと思われる。


一言でせん妄といっても、いくつかパターンがある。
勝手に分類してみた。


「暴言タイプ」
昼間は穏やかに見える方でも、夜になると暴君、魔女に変身。
今までずっと自分を抑えて生きてきたのかなぁと思う。


「仕事人間タイプ」
病室を職場と勘違いしていて、指示を出したり、仕事の動作をしたりする。
仕事一筋にやってきた職人気質の人に多い。


「ストリッパータイプ」
とにかく、服を脱ぎたがる人。
夜中、巡視していたナースが、ベッド上であられもない格好の女性患者さんを発見して、レイプ事件か!?などと度肝を抜かれたと、ついこの間報告を受けたところ。

自分はどんなタイプになるんだろう?などと、時々ナースステーションはもりあがる。


なかには、辻褄のあないことを言っているのであるけれど、いつもにこやかで善き人、という人もいた。
こういう人は、きっと幸せで大満足な人生を送ってきたのだろうなぁと想像し、自分もそうなりたいと願う。


人間の精神の正常と異常の境など、きっちり線が引けるものではない。

酒に酔ったり、夢を見たりして寝言を吐いているのだって、ごく広い意味ではせん妄といってしまおう。


このところ、真夜中に大きな声で目が覚める。
声の主はアタシ自身。
目下取り組んでいるチャイコフスキーの4番の1楽章を歌っている。
難しくてなかなか弾けないところを、ため息や唸り声混じりに歌っているのだ。
半覚醒状態だから、歌うのを急にはやめられない。
しばらくご近所迷惑なことになっている可能性あり。

これが病院だったら、「夜間せん妄あり、要注意」とカルテに書かれちゃうだろうなぁ。

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