勤務している病院が開院30周年を迎え、その記念パーティーで演奏を披露してもらいたいと事務局長から依頼された。
理事長に「パーティーで何か余興をやれ」と指示されたという。
この時点で、今日の本番の空気はある程度予想をしておかねばならなかったのだ。
どんな会なのかはあらかじめ担当者たちに聞き取り調査した。
院外から多くの来賓を招いてのホテルで行うパーティーだというし、春に一緒にコラボしたお琴のKさんには、今回はプロとしての演奏を別枠で依頼するということだったから、新曲も用意して、一生懸命練習を積んで臨んだのだった。
けれど、実際の会場の雰囲気は最低だった。
客は80人しかいないというのに、酔っ払ったお役人たちがあちこちで高笑いしているし、院内関係者でさえ、みな喋りっぱなしで、全く音楽を聞いている雰囲気なし。
BGMにさえなっていないような喧騒のなか演奏しなければならなかった。
記念演奏会などと式次第に名前をつけたけれど、余興という言葉のほうが相応しかった。
同じうるささでも、街中のショッピングモールでの演奏のほうがよっぽど聴いてくれている人たちがいる。
私達の演奏が面白くないのであれば仕方ないとあきらめるが、そのあとのプロの演奏家さんたちのときも場の空気は全く変わらなかったので、演奏後に思わず「うるさくてスミマセンでした」と謝った。
すると、尺八を吹いていた方が「いえ、色々な場は経験してきていますから。でも、1曲目のときにブラボーと声をかけていただいて、聴いてくださっている方がいるとわかって、とてもホッとしました(笑)」とおっしゃってくださった。
ブラボー発声は言うまでもなく、ワタクシである。
しかも、「和楽器の特質上、それほど大音量は出ませんが、全く聞こえていなかったり、逆にみなさんのご歓談の邪魔をしてもいけないと思いながら演ってました」とおっしゃる。
なんで聴いてくれないんだよおと駄々をこねているアタシなんかと違って、さすがプロは違うのである。
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