かりんとう日記

禁煙支援専門医の私的生活

アヴェ・ヴェルム・コルプス

2024年03月06日 | おんがく
同僚ドクターたちと新規結成したピアノトリオ。


今週末に行われる慰霊祭に向けて、夕方から3人そろって初めて合わせ練習をする予定になっていた。

チェロ友であるTさんの体調が悪くなって、週末に緊急入院していた。
彼女と知り合ったのは、ちょうど1年前。

彼女を見舞って、残されている時間は少ないと直感。
急遽、手はずを整え、夕方、3人で病棟へ駆けつけ、ベッドサイドで演奏をした。

練習する時間もなく、彼女の具合もかんばしくなかったので、演奏したのは1曲だけ。
モーツアルトのアヴェ・ヴェルム・コルプス

視線はもう合わせづらくなっていたけれど、朦朧とした意識下でも「よかったよ~」と言ってくれた。

「演奏中はずっと目を開けて聞いていました」と妹さん。


翌日、チェロを持って再び病室を訪れ、アヴェ・ヴェルム・コルプスとトロイメライを聴いてもらった。

妹さんによると、アヴェ・ヴェルム・コルプスは、彼女たち姉妹がオーケストラ、お父様が合唱団の一員として参加したコンサートで演奏したことのある一家にとって思い出の曲なのだという。

「思い出が走馬灯のようにあふれてきて、私も母も曲が始まったとたん泣けてきてしまいました」

偶然に驚いた。

不思議な力が働いていたのかもしれない。

また明日、と挨拶をして帰ってきた。


早朝、彼女からLINEが入った。
あらかじめ彼女自身が用意していた自身の「訃報」を、彼女に代わって夫君が送信したのだった。

彼女は苦痛にまみれた肉体から離脱したのだ。


自分の心の赴くままに行動した。
その結果、大好きな音楽を介して、感謝の気持ちにあふれた暖かいひと時を、共有できた。
そう考えたら、悲しさよりも、今は穏やかさに包まれている。


あなたが思い描いている未来のビジョンを信じていてください。
あなたにとって理にかなっていると思える方向に進んでいけば、いずれあなたがいる必要のある場所にたどり着けるでしょう
(ジョナサン&オスカー・ケイナー/3月5日の天秤座)








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