同僚ドクターたちと新規結成したピアノトリオ。
今週末に行われる慰霊祭に向けて、夕方から3人そろって初めて合わせ練習をする予定になっていた。
チェロ友であるTさんの体調が悪くなって、週末に緊急入院していた。
彼女と知り合ったのは、ちょうど1年前。
彼女を見舞って、残されている時間は少ないと直感。
急遽、手はずを整え、夕方、3人で病棟へ駆けつけ、ベッドサイドで演奏をした。
練習する時間もなく、彼女の具合もかんばしくなかったので、演奏したのは1曲だけ。
モーツアルトのアヴェ・ヴェルム・コルプス
視線はもう合わせづらくなっていたけれど、朦朧とした意識下でも「よかったよ~」と言ってくれた。
「演奏中はずっと目を開けて聞いていました」と妹さん。
翌日、チェロを持って再び病室を訪れ、アヴェ・ヴェルム・コルプスとトロイメライを聴いてもらった。
妹さんによると、アヴェ・ヴェルム・コルプスは、彼女たち姉妹がオーケストラ、お父様が合唱団の一員として参加したコンサートで演奏したことのある一家にとって思い出の曲なのだという。
「思い出が走馬灯のようにあふれてきて、私も母も曲が始まったとたん泣けてきてしまいました」
偶然に驚いた。
不思議な力が働いていたのかもしれない。
また明日、と挨拶をして帰ってきた。
早朝、彼女からLINEが入った。
あらかじめ彼女自身が用意していた自身の「訃報」を、彼女に代わって夫君が送信したのだった。
彼女は苦痛にまみれた肉体から離脱したのだ。
自分の心の赴くままに行動した。
その結果、大好きな音楽を介して、感謝の気持ちにあふれた暖かいひと時を、共有できた。
そう考えたら、悲しさよりも、今は穏やかさに包まれている。
あなたが思い描いている未来のビジョンを信じていてください。
あなたにとって理にかなっていると思える方向に進んでいけば、いずれあなたがいる必要のある場所にたどり着けるでしょう
(ジョナサン&オスカー・ケイナー/3月5日の天秤座)
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