かりんとう日記

禁煙支援専門医の私的生活

臨床医としての自分

2013年11月20日 | がん病棟で
ごくたまにではあるけれど、タバコ以外のテーマで人前で話をすることを頼まれることがある。

今回は、製薬会社ILのMR(medical representative 医薬情報担当者)氏たちの勉強会ということで、「患者目線の医療」というテーマでご依頼をいただいた。

講話だろうが講演だろうが、勉強会だろうが○○教室だろうが、とにかく「何かを得よう」と思って集まってきている人たちを前にして話をするわけだから、「聴きにきてよかった」と思ってもらえるようにしなければならない。

そのためには、事前に充分リサーチする必要がある。

聴講集団のプロフィールはもちろん、何人集まるのか、どんなことを知りたいと思って来るのか等、可能な限り調査して、話の内容を吟味し、準備する。


普段、自社製品(抗がん剤)に有意な臨床試験の結果などを色々と医師に紹介して売り込みに走り回っているMR氏たちであるけれど、実はその試験結果の示す数値の本当の意味だとか、有害事象(副作用)を実際に患者さんたちはどう受けとめているのか、などといったことがまったく実感できていないのだという。

「いつもセンセイから日常診療のことでとてもためになるお話を伺っていて、ほかのMRにも聞かせたいので・・・」ということで今回の会が企画された。


とはいえ、自分としては担当MRさんに気ままに思いつくままをお喋りしているだけだったし、それを改めてテーマを掲げてお話を、となるとすごく難しい。

何度も打ち合わせをして、参加者から事前に聞きたいこと、知りたいことを提示してもらい、なるべく要望に沿う内容になるよう準備をした。

ホテルの小さな会議室に集まったのは10人ほど。
私からの提案で、テーブルはコの字型にして、お互いに意見交換がしやすい雰囲気にセッティングしてもらった。


日常のがん診療をどのように行っているかということを軸に、患者にとっての苦悩はなんであるのか、医師として心がけていることは何か、(私の考える)理想のがん医療とは・・などといった内容となり、いつにも増して熱いトークになっていた。
とくにインフォームドコンセントとか、予後についての説明のしかたなどについてが、MR氏たちの興味をかなりひいたようであった。

予後の説明については、若手医師たちは皆悩んでいるということであった。
その道のベテラン医師でも、「○年生存率が△%であるから云々」という説明をしている人もいるようで、それでは患者は納得できないだろうし、そんな説明で逃げるような医師は患者から信頼されないのではないかと思う。


色々と質問も出て、内容はかなり濃いものとなった。
最後は、自分達もより良い医療を提供するために頑張らなくてはという気持ちになっていただいたようであった。
あとで聞いて知ったことであるが、がんで闘病中のお義母さまのことが重なり、最後は感極まって泣いてしまった方もいた。


改めて、臨床医としての自分、自分が理想としている医師像を見直すことにもなって、今回は良い機会を与えてもらった。



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