情報系の非常勤教員の実話――2005年の1月のある日の出来事
次年度のシラバスも提出し、年度の終わりに近づいた時に、法学部のある教授が現れた。
「次年度の情報処理論の統一シラバスを検討するために関係教員が集まり検討しました。その結果、次年度の情報処理論のシラバスはこのようになります。何か意見があるときには、学部長宛に申し出てください。」と言い残して去って行った。
後でわかったことだが、私を除く非常勤講師に、統一シラバスを作成させていたのであった。おそらく手違いだったのであろう。私にこのことは知らされず、わたし個人には独自のシラバスを作成するようにとの依頼が来ており、私はすでに作成し、提出していたのであった。
さて、この統一シラバスは、日本商工会議所日本語文書処理検定3級を目指す、との目標を掲げており、それ自体は決して悪くはない。
しかし、目標実現のための日々の講義内容は、今までとほとんど変わりばえしないものであった。これでは検定に合格するのは難しい、と私には思えた。一番の問題は、検定の試験問題に含まれている実技の部分をどう習得させるかであった。つまり、この統一シラバスでは、タイピングの実技が合格にはるかに及ばないのである。
私は常々、タイピングは最も重要なスキルであると考え、その習得のために十分な時間をとり(10回程度実施)、また利用ソフト、講義資料などを学生に提供していた。
統一シラバスのやり方で検定試験に合格することができるかを検討してみることにした。
前年度の私の学生の成績から推測すると、タイピングを10回程度実施しても、合格率は46%にしかならず、ましてやタイピングを2回程度しか実施しない統一シラバスでの合格率は、話にならない。これでは、検定の合格をシラバスの目標として明記するのは問題があるのではないかと、私は思った。
そこで私は、前年度の成績の資料に基づく私の意見を書面にまとめ、法学部長宛に提出した。
すると、その後、2005年3月に、法学部長から、
「私は門外漢ですので、あなたの文書を情報処理論の教員へ送付し、意見の聴取をしたい」という文書が、私の手元に届いた。
その後は、特に連絡も無かったので、自分が作成したシラバスに基づいて2005年度の講義を行うこととした。しかし、2005年の夏過ぎに、一枚の書類が法学部長から届いた。
「来年度は、あなたに割り当てていた講義の時間が無くなるので、依頼いたしません」、
との内容である。要するに、「雇い止め」の通知である。私が、統一シラバスに従わなかったことに対する処分のようだ。
そこで私は、法学部と商学部の何人かの専任教員に相談したのだが、私を助ける者は誰もいなかった。
それどころか、2005年10月28日、ひごろ非常勤講師の権利に理解を示すそぶりをしている法学部のある専任教員が、私を別室に呼び出し、「ここは静かに」と、一種の「恫喝」を行ってきた。
この時「これは不当な雇止めである」として、私を助けてくれたのは非常勤講師組合であった。かくして、団体交渉が行われることになった。
雇止めの理由を変更する法学部長
2005年11月14日に行われた団体交渉においては、非常勤講師組合が、カリキュラムの変更もなされておらず、当該科目の全体のコマ数の削減もないことを指摘し、これは不当な雇い止めだと追及すると、法学部長はしどろもどろであった。
要するにカリキュラムの変更等はなかったのであり、雇い止め通知書に挙げられていた理由は虚偽であったのだ。
非常勤講師組合はさらに、私が組合員と知っての「雇い止め」であり、労働組合法の禁じる「不当労働行為」に当たると追及した。法学部長は、「組合員だとは知らなかった」と回答したが、法人側は「組合員だと知っていた」と回答した。
さあ、大変。
非常勤講師組合は、この件での交渉は打ち切り、労働委員会に「不当労働行為救済の申立て」をすることを通告すると、あわてた理事会は、12月9日にこの件で回答すると表明。
すると、何を血迷ったか法学部長は、新たに以下の「雇い止め」理由を挙げた。
① 私が授業を早く終えているとの投書があった、
② 学生による授業評価の結果が悪かった、
③ 職員からの連絡があった、
④ 専任教員から「雇い止め」すべきとのアドバイスをえた――というものである。
どれもこれも、まったく根拠の無いものであった。
①の「投書」があるなら、その現物を見せろ、と非常勤講師組合は要求したが、もちろんそんなものはなく、見せられるはずもなかった。
②の「授業評価」は、導入の際に、法学部教授会において、人事考課に使用しないというとの確認かなされていた。法学部長は、明らかにこの教授会決定に違反しており、非常勤講師組合は、この点を追及した。
③も④も話にならない。
仮に私に「非行」の疑いがあったとしても、処分を行う前に私の弁明権が保障されなければならない。これは法律を学ぶ者のイロハであろう。こんな一方的な雇い止めが許されるはずがない。
要するに、法学部では、やりたい放題なのである。理由など勝手にでっち上げて、法学部長名で雇い止め通知書を出してきたのであろう。まさに「無法学部」である。
理事会の介入
第2回目の団体交渉(2006年1月18日)においては、私の雇い止めの撤回が理事会より表明された。「雇い止め」についての教授会決定が、理事会によって、いとも簡単に覆されたのである。
中央学院大学は、立派な建学の精神を掲げている。
「公正な社会観・倫理観の涵養」である。
だが、どうだ。教員自身が――法学部長でさえ――、こんな精神を身につけていないのであるから、学生にこれを身につけさせることは不可能だろうな。
このときは、理事会の介入によって、辛うじて、「建学の精神」は守られた感があった。
しかし、実は、この同じ団交では、同僚組合員の不当な2コマの削減問題も扱われていたのであり、法学部長も理事会も、この件については妥協しなかった。(この不当性については、同僚組合員が後日、詳細に述べる)。
建学の精神は、死んだのだ。
以来、この法学部は無法状態である。
英語ネイティブの2人の雇い止め
今次カリキュラム改革においては、英語の専任教員が超過コマ数(学内アルバイトであって、所定の賃金とは別に超過コマ手当てが支給される)を保持することを前提として、余剰人員2名が恣意的・人為的につくりだされ、英語のネイティブ教員(非常勤)2名が、不当に雇い止めされた。
このブログでは、再三この雇い止めが、雇い止めを回避する義務を尽くさずになされた違法なものであることが指摘されているが、法学部教授会も、理事会も、是正をしようとしない。
うそっぱちの「建学の精神」は、そろそろ引っ込めたらどうかな。