(野暮メモ)
高校2年の頃書いたもの。
俺女が書いたようなムズがゆさがある!
私がイメージしていたのは、
ジャンプの投稿ページに書かれていたネタみたいな男子。
くだらないことを楽しげに話してる感じを書きたかった。
受験の辺りの描写は自分の経験からしか書けないから、
文芸部で読ませた時に友達から
「これ実体験混じってない?」
って指摘受けて「バレバレか…」ってなりました。
ちなみに、紬田(つむぎだ)と鹿崎(しかざき)と読みます。
無駄に読めない漢字使いたい年頃だったのです。
(メモ終わり)
ふらふら
まぁ何だかんだ言って、中三のときって楽しかったんだよな、やっぱり。
中三の教室。まだ七月の教室は、受験生特有の緊張感に包まれていなくて、なんとなく暑さでやられそうだった。
「なんでこんなことになってんだよ・・・。」
思わず心の中でつぶやく。
感動の押し売り。まさにそんな言葉がぴったりと当てはまるビデオを、数学の授業に見せられた男子の一言だ。授業が事のほかに早く進み、余った時間に見せてくれたビデオ。
うわ、最悪。そう思った。マジでやだよ。こんなもの、ほら泣けるでしょ?って上から見下しながら作ったんだろうなとか思うから。こんなので泣くのなんてそうそういないんじゃねぇの?そう思ってた。はい、そう思ってました!だ、け、ど!!ないてんだよなぁ・・・。それも自動的にぽろぽろと。
同士を見つけようと教室を見回す。ビデオを見ているから教室が暗い。おいおいおいおい・・。誰も泣いてねぇよ!!男子なんかこの感動作を馬鹿にしている感じで見てる奴らまでいそうだよ!!
でも、いるんだよ。ほら、いましたよ!俺の同士!
「・・・・・・。」
泣いていたのは、教室で一番真面目だといわれている男子だった。俺は思わずそいつを見てしまった。
「な、これ泣けるよな!」
と一言添えて。ただ見てるだけなんて怪しく思われるかもしれないだろ、こいつに。そんなのはごめんだから。
「うん、泣ける!」
そういって笑いかけてきた。ま、一言添えたのは良かったって事だ。そう思って安心した。
それから、あいつと仲良くなった。一番まじめなあいつは、勉強方面でもやっぱりまじめだった。ま、この頃なんて大体頭が良さそうで、大人しそうな奴=真面目みたいなところもあるから、そう考えればこいつが頭がいいことも普通のことなんだろうけど。頭がいいから、あいつにはずいぶん色々なことを教えてもらったし、俺も教えた。教えてやったことは、思い切り別方面のことだったけど、コイツにちょうどいい情報だったと思うから、別段気にしていない。
「なぁ~、俺ここわかんないんだけど。」
「あ、ここ?ここは公式使えば楽勝じゃん?」
「あ、ほんとだ。」
とか、
「あ、昨日のテレビ、○○でてたよね。見た? 」
「見た見た!あれあり得ねぇよな!」
が基本的な会話の軸。基本的に、趣味はあっていた。感動の押し売りで泣ける俺らだからだろうか?ってのは冗談だけど。
過ぎ行く季節。夏休みは受験の総本山なんて言われた俺たちは、塾でかち合った。俺がまったくの偶然でコイツの通っている塾に行っただけだけど。
「紬田、ここ通ってたん?」
「鹿崎君ここにしたんだ!教えてやるよ、宿題。」
「マジ?ありがとー。」
この頃はケータイも持ってなくて、情報交換は学校でだけ。パソコンは俺がつかってなかったし。今はケータイないとか考えられないけど、この頃は無くても大丈夫だったんだよな。
ふらふら、ふらふら。
俺はいつでもそうだった。結局この塾で得られたものといったら、合格率76%とか言う、受かるのか受からないのか微妙な数字の紙切れ一枚だった。紬田は、思い切りこの紙切れの最高数字の98%を打ち出していた。って記憶しかない。紙切れ、母親に見つけられた途端にどっかに持っていかれて消えたし。ま、マジであてになんねーけどさ、こんなの。俺、この数字が出た高校、結局猛勉強して首席で入学。すごくねー?紬田に教えてもらったトコ、今でもできるしさ。いや、それは当たり前か。
夏休みが終われば、いよいよ勉強かなーとか思ってた俺は、実は文化祭があったことに気づいた。勉強はますます俺の中から遠ざかった。皆は隠れて勉強してんだよね、こん時。すげービックリ。紬田もこの時勉強時間をどうやって捻出するか考えさせられたらしい。今気づいたけど、紬田ってフツーに真面目だな・・。
俺は、このときの紬田と一緒の塾にまだ通っていた。勉強は、まぁ、やっていなかったものを取り戻したのか、成績は微妙に(この時期なのに)上がった。うん、純心だったのかこの頃は真面目になったのも気持ち良かったな。俺、勉強してエライべ?みたいなさ。俺も根は真面目なんだよ。うん。
雪が降りそうな季節には、確かこんな会話を紬田とした。今考えるとめちゃ恥ずかしい会話をしていた気ぃする。以下、俺の記憶抜粋。因みに雪虫は小さい虫で、冬を知らせてくれるいいヤツ。
「俺、雪虫って好きなんだよな。なんかもう少しで雪降りそーーっって感じがさ。」
って俺が言うと、
「ふーん。俺はこの時期に吹いてる冷たい風のが好きだけど。」
と紬田が言った。
「俺、雪虫になりてー・・・。雪虫ぐらいなら、好きなやつとかのどこにでももぐりこめそうじゃん?」
こんなこと言ってる俺、恥ずかしいな・・。
「雪虫は傷つきやすいから、好きなやつのところに潜り込んだ途端速攻で死ぬよ。」
いや、確かにそうだけど。今思い出しても厳しい一言だよ。
「傷つきやすいとこが俺と雪虫の唯一の共通点だしな。別にそれはイイんだよ。」
「お前、俺と話してるときなんか傷ついたりしたの?」
「・・・お前のそーいう無神経なとこに傷ついてるっつーの・・。」
「じゃあ、俺はおまえのそーいうトコ見て傷つくことにする。」
「お前、何あからさまな嘘言ってんのよ?」
う~わ~。恥ずかしい記憶だよね・・。以上俺の記憶。
雪の降る季節になって、ツルツルの道路は「高校受験滑ろ」と言わんばかりに俺を転ばせた。この時本気で転びすぎて、高校落ちんのかなとか3日位不安になった気がする。勉強してんだから神様受からせてくれよ!って、神宮にいってお願いしに行った。きっちり5円玉だけ持って。帰り一円玉拾ってめっちゃ得した気分になったな。
大晦日まできっちり塾で勉強。塾でうさんくさい合格のお守り貰って、合格の鉢巻きはもらえる予定だったのに貰えなかったから多少さびしい思いをした。
年賀状は、あんまこなかったな。っつうか俺が出してないし。あ、でも紬田からはきた。なんか俺たち共通の話題に出てくるものが描いてあって、干支描いてねぇの(笑)。おまえ、年賀状には干支描いとけよ!って正月からツッコミ。この年賀状で初ツッコミしたよ俺は。
ここまでだらだら細かく書いてみた。中学は俺にとって大切な期間だった。色々したしなー。結構、中学って無理しても退学とか無いし。いや、転校とかさせられるけど。俺も髪の毛くらい染めれば良かったな。っつー訳で、学校転校させられるくらいのむちゃはしなかった。紬田が真面目だったのもあって、俺もそれに染まったしな。朱に交わればあかくなる、みたいなね。
受験日当日までは、もうわけわかんない。早かった。訂正印とかの存在知ったのそこでだったな。俺は訂正するのが嫌だったから、めちゃ気合入れて訂正なしで書ききったけど。
「鹿崎・・。」
「ん?どうした紬田。」
「俺のトコ面接あるんだけど!」
「うっわ、頑張れよ。俺面接ないし♪」
「おまえそれ、他人事だと思ってるだろ・・・。」
「いや、他人事だったら、頑張れすらおまえに言わない。」
「じゃぁ、一応ありがとう。」
「おう、どーいたしまして。」
こーいう会話もしたっけな。ヤバイ。記憶が曖昧だよ。俺まだ22歳なのに。記憶やベー。
卒業式になったとき、女子はカメラを持ってきていた。フラッシュの嵐。紬田の姿を探すと、いない。どこだよ、と一応思っていると、雪まみれでやってきた。
「転んだ・・。」
「ぶはっ!!あと五分で胸につける花くるから、早くコート脱げよ(笑)。」
「わかったけど、笑うなよ。・・・。おまえなんか後一時間後くらいにボロ泣きだろ?」
「泣かないっつーの。」
「いや、おまえ泣くよ。」
と言われた俺は、案の定ボロ泣きした。なんつーお約束。
卒業式は不安な気持ちと、学校での思い出とかがぐるぐるして、なんかわけわかんなくて、泣けた。もーボロボロ。いや、でもそこはお仲間同士。紬田も泣いてた。なんだ、俺たち感激屋なだけじゃん。
「鹿崎、おまえ泣いてるじゃん、やっぱり。」
「おまえも泣いてるじゃん。」
「だって泣けるべ?」
「泣けるよ!」
「じゃー将来また会うか!」
「は?」
「だっておまえ連絡手段無いじゃん。」
「電話あるだろ。」
「電話嫌いなんだよ。」
「そーかよ・・。で、いつ会うか?」
「大学卒業した後の、七月。」
「いいよ。」
ビデオを見た、あの七月だから。
「おまえ、浪人すんなよ!!」
「その前に高校合格だろ、おまえ!!(笑)」
高校は、別々になった。合格発表は卒業式の次の日で、俺は不合格をつげるための学校行きは無かった。でも、俺はなぜか不合格説を流されていたことを高校に入ってからのクラス会で知った。俺、落ちてねー!!!
そう、クラス会で俺と紬田はまた交流を再開したのだった。つうか、その時やっと俺がケータイ手に入れてた。ケータイのが俺はメールしやすいから好きだ。
「鹿崎、久しぶり!:」
「紬田久しぶりだな。」
「おまえ、・・・どこの高校に行ったの?」
「いや、おまえに教えた第一志望のトコだけど。」
「えっ?そーだったん?俺落ちたって聞いてたんだけど!!」
「嘘?!マジで?落ちてねぇよ!!」
「うわー。落ちてなかったんだ。」
「落ちてない落ちてない。」
「話しかけづらいとか思ってたんだけど、俺。」
「話しかけやすいのが俺なんだよ。」
「馬鹿だよコイツ(笑)。」
予備校は、一緒になったかな。で、今に至る。
今の俺は、22歳。成人も迎えて、これで堂々とお気に入りにのタバコもすえるってモンです。ビールはあんまり好きくない。それなら日本酒?いや、ジュースっぽいカクテルが好きだ。基本的性格は全然、今までの通りだし。変えようが無くないか?性格とかって。
もー少しで七月が来る。約束した夏だ。
高校生活は面白かった。大学生活ももちろん面白かった。
浪人も、しなかった。でも就職はできなかった。
夏になり、俺はプータローだった。
やべー。大学卒業して、ふらふらして、今までと全然かわんないのに、ふらふらって言葉だけが今年は先回りして、気分が暗い。親父には「プータロー」呼ばわりされてるし。いや、違うんだよ、俺はフリーターなんだよ。
今気づいたけど、七月の卒業式の日って、何気に中旬だし、紬田が就職できてたら思い切り仕事か?とか思ってたけど、すげー強運で、日曜日だった。この際、休日返上とかは考えないでおく。
当日、俺は学校への道を再び歩いた。いつも歩いていた道は、懐かしいものとなって俺の前に現れた。
いつも見ていた校舎。もう来ることは許されないような、そんな聖域。本当なら、もうバンバン来ちゃったっていいんだろうけど、俺には無理だった。俺を拒否しているような感じがしたから。もう、おまえはくるなよって言われているような気がするから。だから今まで来ることができなかった。いままで俺たちを一番心配そうに見ていた学年主任の先生も、今じゃ俺が絶対に好きになれない小生意気な中学生を心配そうに見ている、その寂しさ。それを目の当たりにするのも、やっぱりいやだったから。
つまり、俺はまだガキなんだ。
以前好きだった桜並木を見る。学校にある、たくさんの桜。やっぱりゴールデンウィーク中に咲き乱れてるあの頃に会ったほうが良かったよな、と思った。今は七月で、無意味に暑くて、これであいつが来なかったら、俺すっげぇ馬鹿じゃんかよ。桜が見れたら、まだ来ても良かったかなとか思えるかも知れねぇじゃん。タバコを吸いながら、暇つぶしに考える。
グランドでは部活のために来ている学生が、走っていた。やっぱり、来るべきではなかったのか。俺はもう中学生ではないから、ここにいるのは不自然で、ぜんぜん自然じゃない。
いろいろ馬鹿なことを考えていると、足音がこちらに近づいてきた。女子中学生か?と思っていると、ま、お約束って言えばお約束だけど、あいつだった。
「うわっ!マジで来た!!」
そう思った。あいつと目が合う。思わず声が出る。
「絶対来ねーと思った!」
あれ?声重なってんだけど。
「予想どおりのこと言ってるよ!」
あいつが笑った。
蒸し暑い風、照らしつける太陽。
そうだ、こんな感じだ。
俺の夏は。
高校2年の頃書いたもの。
俺女が書いたようなムズがゆさがある!
私がイメージしていたのは、
ジャンプの投稿ページに書かれていたネタみたいな男子。
くだらないことを楽しげに話してる感じを書きたかった。
受験の辺りの描写は自分の経験からしか書けないから、
文芸部で読ませた時に友達から
「これ実体験混じってない?」
って指摘受けて「バレバレか…」ってなりました。
ちなみに、紬田(つむぎだ)と鹿崎(しかざき)と読みます。
無駄に読めない漢字使いたい年頃だったのです。
(メモ終わり)
ふらふら
まぁ何だかんだ言って、中三のときって楽しかったんだよな、やっぱり。
中三の教室。まだ七月の教室は、受験生特有の緊張感に包まれていなくて、なんとなく暑さでやられそうだった。
「なんでこんなことになってんだよ・・・。」
思わず心の中でつぶやく。
感動の押し売り。まさにそんな言葉がぴったりと当てはまるビデオを、数学の授業に見せられた男子の一言だ。授業が事のほかに早く進み、余った時間に見せてくれたビデオ。
うわ、最悪。そう思った。マジでやだよ。こんなもの、ほら泣けるでしょ?って上から見下しながら作ったんだろうなとか思うから。こんなので泣くのなんてそうそういないんじゃねぇの?そう思ってた。はい、そう思ってました!だ、け、ど!!ないてんだよなぁ・・・。それも自動的にぽろぽろと。
同士を見つけようと教室を見回す。ビデオを見ているから教室が暗い。おいおいおいおい・・。誰も泣いてねぇよ!!男子なんかこの感動作を馬鹿にしている感じで見てる奴らまでいそうだよ!!
でも、いるんだよ。ほら、いましたよ!俺の同士!
「・・・・・・。」
泣いていたのは、教室で一番真面目だといわれている男子だった。俺は思わずそいつを見てしまった。
「な、これ泣けるよな!」
と一言添えて。ただ見てるだけなんて怪しく思われるかもしれないだろ、こいつに。そんなのはごめんだから。
「うん、泣ける!」
そういって笑いかけてきた。ま、一言添えたのは良かったって事だ。そう思って安心した。
それから、あいつと仲良くなった。一番まじめなあいつは、勉強方面でもやっぱりまじめだった。ま、この頃なんて大体頭が良さそうで、大人しそうな奴=真面目みたいなところもあるから、そう考えればこいつが頭がいいことも普通のことなんだろうけど。頭がいいから、あいつにはずいぶん色々なことを教えてもらったし、俺も教えた。教えてやったことは、思い切り別方面のことだったけど、コイツにちょうどいい情報だったと思うから、別段気にしていない。
「なぁ~、俺ここわかんないんだけど。」
「あ、ここ?ここは公式使えば楽勝じゃん?」
「あ、ほんとだ。」
とか、
「あ、昨日のテレビ、○○でてたよね。見た? 」
「見た見た!あれあり得ねぇよな!」
が基本的な会話の軸。基本的に、趣味はあっていた。感動の押し売りで泣ける俺らだからだろうか?ってのは冗談だけど。
過ぎ行く季節。夏休みは受験の総本山なんて言われた俺たちは、塾でかち合った。俺がまったくの偶然でコイツの通っている塾に行っただけだけど。
「紬田、ここ通ってたん?」
「鹿崎君ここにしたんだ!教えてやるよ、宿題。」
「マジ?ありがとー。」
この頃はケータイも持ってなくて、情報交換は学校でだけ。パソコンは俺がつかってなかったし。今はケータイないとか考えられないけど、この頃は無くても大丈夫だったんだよな。
ふらふら、ふらふら。
俺はいつでもそうだった。結局この塾で得られたものといったら、合格率76%とか言う、受かるのか受からないのか微妙な数字の紙切れ一枚だった。紬田は、思い切りこの紙切れの最高数字の98%を打ち出していた。って記憶しかない。紙切れ、母親に見つけられた途端にどっかに持っていかれて消えたし。ま、マジであてになんねーけどさ、こんなの。俺、この数字が出た高校、結局猛勉強して首席で入学。すごくねー?紬田に教えてもらったトコ、今でもできるしさ。いや、それは当たり前か。
夏休みが終われば、いよいよ勉強かなーとか思ってた俺は、実は文化祭があったことに気づいた。勉強はますます俺の中から遠ざかった。皆は隠れて勉強してんだよね、こん時。すげービックリ。紬田もこの時勉強時間をどうやって捻出するか考えさせられたらしい。今気づいたけど、紬田ってフツーに真面目だな・・。
俺は、このときの紬田と一緒の塾にまだ通っていた。勉強は、まぁ、やっていなかったものを取り戻したのか、成績は微妙に(この時期なのに)上がった。うん、純心だったのかこの頃は真面目になったのも気持ち良かったな。俺、勉強してエライべ?みたいなさ。俺も根は真面目なんだよ。うん。
雪が降りそうな季節には、確かこんな会話を紬田とした。今考えるとめちゃ恥ずかしい会話をしていた気ぃする。以下、俺の記憶抜粋。因みに雪虫は小さい虫で、冬を知らせてくれるいいヤツ。
「俺、雪虫って好きなんだよな。なんかもう少しで雪降りそーーっって感じがさ。」
って俺が言うと、
「ふーん。俺はこの時期に吹いてる冷たい風のが好きだけど。」
と紬田が言った。
「俺、雪虫になりてー・・・。雪虫ぐらいなら、好きなやつとかのどこにでももぐりこめそうじゃん?」
こんなこと言ってる俺、恥ずかしいな・・。
「雪虫は傷つきやすいから、好きなやつのところに潜り込んだ途端速攻で死ぬよ。」
いや、確かにそうだけど。今思い出しても厳しい一言だよ。
「傷つきやすいとこが俺と雪虫の唯一の共通点だしな。別にそれはイイんだよ。」
「お前、俺と話してるときなんか傷ついたりしたの?」
「・・・お前のそーいう無神経なとこに傷ついてるっつーの・・。」
「じゃあ、俺はおまえのそーいうトコ見て傷つくことにする。」
「お前、何あからさまな嘘言ってんのよ?」
う~わ~。恥ずかしい記憶だよね・・。以上俺の記憶。
雪の降る季節になって、ツルツルの道路は「高校受験滑ろ」と言わんばかりに俺を転ばせた。この時本気で転びすぎて、高校落ちんのかなとか3日位不安になった気がする。勉強してんだから神様受からせてくれよ!って、神宮にいってお願いしに行った。きっちり5円玉だけ持って。帰り一円玉拾ってめっちゃ得した気分になったな。
大晦日まできっちり塾で勉強。塾でうさんくさい合格のお守り貰って、合格の鉢巻きはもらえる予定だったのに貰えなかったから多少さびしい思いをした。
年賀状は、あんまこなかったな。っつうか俺が出してないし。あ、でも紬田からはきた。なんか俺たち共通の話題に出てくるものが描いてあって、干支描いてねぇの(笑)。おまえ、年賀状には干支描いとけよ!って正月からツッコミ。この年賀状で初ツッコミしたよ俺は。
ここまでだらだら細かく書いてみた。中学は俺にとって大切な期間だった。色々したしなー。結構、中学って無理しても退学とか無いし。いや、転校とかさせられるけど。俺も髪の毛くらい染めれば良かったな。っつー訳で、学校転校させられるくらいのむちゃはしなかった。紬田が真面目だったのもあって、俺もそれに染まったしな。朱に交わればあかくなる、みたいなね。
受験日当日までは、もうわけわかんない。早かった。訂正印とかの存在知ったのそこでだったな。俺は訂正するのが嫌だったから、めちゃ気合入れて訂正なしで書ききったけど。
「鹿崎・・。」
「ん?どうした紬田。」
「俺のトコ面接あるんだけど!」
「うっわ、頑張れよ。俺面接ないし♪」
「おまえそれ、他人事だと思ってるだろ・・・。」
「いや、他人事だったら、頑張れすらおまえに言わない。」
「じゃぁ、一応ありがとう。」
「おう、どーいたしまして。」
こーいう会話もしたっけな。ヤバイ。記憶が曖昧だよ。俺まだ22歳なのに。記憶やベー。
卒業式になったとき、女子はカメラを持ってきていた。フラッシュの嵐。紬田の姿を探すと、いない。どこだよ、と一応思っていると、雪まみれでやってきた。
「転んだ・・。」
「ぶはっ!!あと五分で胸につける花くるから、早くコート脱げよ(笑)。」
「わかったけど、笑うなよ。・・・。おまえなんか後一時間後くらいにボロ泣きだろ?」
「泣かないっつーの。」
「いや、おまえ泣くよ。」
と言われた俺は、案の定ボロ泣きした。なんつーお約束。
卒業式は不安な気持ちと、学校での思い出とかがぐるぐるして、なんかわけわかんなくて、泣けた。もーボロボロ。いや、でもそこはお仲間同士。紬田も泣いてた。なんだ、俺たち感激屋なだけじゃん。
「鹿崎、おまえ泣いてるじゃん、やっぱり。」
「おまえも泣いてるじゃん。」
「だって泣けるべ?」
「泣けるよ!」
「じゃー将来また会うか!」
「は?」
「だっておまえ連絡手段無いじゃん。」
「電話あるだろ。」
「電話嫌いなんだよ。」
「そーかよ・・。で、いつ会うか?」
「大学卒業した後の、七月。」
「いいよ。」
ビデオを見た、あの七月だから。
「おまえ、浪人すんなよ!!」
「その前に高校合格だろ、おまえ!!(笑)」
高校は、別々になった。合格発表は卒業式の次の日で、俺は不合格をつげるための学校行きは無かった。でも、俺はなぜか不合格説を流されていたことを高校に入ってからのクラス会で知った。俺、落ちてねー!!!
そう、クラス会で俺と紬田はまた交流を再開したのだった。つうか、その時やっと俺がケータイ手に入れてた。ケータイのが俺はメールしやすいから好きだ。
「鹿崎、久しぶり!:」
「紬田久しぶりだな。」
「おまえ、・・・どこの高校に行ったの?」
「いや、おまえに教えた第一志望のトコだけど。」
「えっ?そーだったん?俺落ちたって聞いてたんだけど!!」
「嘘?!マジで?落ちてねぇよ!!」
「うわー。落ちてなかったんだ。」
「落ちてない落ちてない。」
「話しかけづらいとか思ってたんだけど、俺。」
「話しかけやすいのが俺なんだよ。」
「馬鹿だよコイツ(笑)。」
予備校は、一緒になったかな。で、今に至る。
今の俺は、22歳。成人も迎えて、これで堂々とお気に入りにのタバコもすえるってモンです。ビールはあんまり好きくない。それなら日本酒?いや、ジュースっぽいカクテルが好きだ。基本的性格は全然、今までの通りだし。変えようが無くないか?性格とかって。
もー少しで七月が来る。約束した夏だ。
高校生活は面白かった。大学生活ももちろん面白かった。
浪人も、しなかった。でも就職はできなかった。
夏になり、俺はプータローだった。
やべー。大学卒業して、ふらふらして、今までと全然かわんないのに、ふらふらって言葉だけが今年は先回りして、気分が暗い。親父には「プータロー」呼ばわりされてるし。いや、違うんだよ、俺はフリーターなんだよ。
今気づいたけど、七月の卒業式の日って、何気に中旬だし、紬田が就職できてたら思い切り仕事か?とか思ってたけど、すげー強運で、日曜日だった。この際、休日返上とかは考えないでおく。
当日、俺は学校への道を再び歩いた。いつも歩いていた道は、懐かしいものとなって俺の前に現れた。
いつも見ていた校舎。もう来ることは許されないような、そんな聖域。本当なら、もうバンバン来ちゃったっていいんだろうけど、俺には無理だった。俺を拒否しているような感じがしたから。もう、おまえはくるなよって言われているような気がするから。だから今まで来ることができなかった。いままで俺たちを一番心配そうに見ていた学年主任の先生も、今じゃ俺が絶対に好きになれない小生意気な中学生を心配そうに見ている、その寂しさ。それを目の当たりにするのも、やっぱりいやだったから。
つまり、俺はまだガキなんだ。
以前好きだった桜並木を見る。学校にある、たくさんの桜。やっぱりゴールデンウィーク中に咲き乱れてるあの頃に会ったほうが良かったよな、と思った。今は七月で、無意味に暑くて、これであいつが来なかったら、俺すっげぇ馬鹿じゃんかよ。桜が見れたら、まだ来ても良かったかなとか思えるかも知れねぇじゃん。タバコを吸いながら、暇つぶしに考える。
グランドでは部活のために来ている学生が、走っていた。やっぱり、来るべきではなかったのか。俺はもう中学生ではないから、ここにいるのは不自然で、ぜんぜん自然じゃない。
いろいろ馬鹿なことを考えていると、足音がこちらに近づいてきた。女子中学生か?と思っていると、ま、お約束って言えばお約束だけど、あいつだった。
「うわっ!マジで来た!!」
そう思った。あいつと目が合う。思わず声が出る。
「絶対来ねーと思った!」
あれ?声重なってんだけど。
「予想どおりのこと言ってるよ!」
あいつが笑った。
蒸し暑い風、照らしつける太陽。
そうだ、こんな感じだ。
俺の夏は。