満ちるは桜。

好きなものを書いてる普通の人日記。

思わぬ収穫(*^^*)ダイヤルA.B.C☆E

2016年11月04日 19時27分36秒 | A.B.C-Z
良い曲は良い曲だぁ〜なんて思っていたらば!
戸塚さん選曲とな???
五関くんのラジオ面白かったです。
というか、えっちゃんがサクサク話してくれるのもあってラジオ楽しい(^ ^)
新鮮な感じです(*^^*)
予想より面白かったですー。
塚ちゃんの時も面白かったから聴いてみたのよね。
期待値低かったのに、いざ聴いたら楽しかった!
前書いたかもだけど、私ちゃんと「聴く!」ってやらないと、
内容が頭に入るように聴き取れないのです
だから、つまんないとそんな頑張りたくなくて。
流して聞けないこともないけど、あんまりそれだと内容頭に入ってこないし。
それなら聞かない方が楽だし。


そして、ツイッター見てたらブログに辿りつき。
名指しせずとも想像させるブログでした。
その方自身は名前は明らかにしてませんけど。
何でしょう、元々は黄色かった青い猫型ロボット!
って言ってるかのような(笑)、
そういう、まぁ、その人よね。ってブログ。

なんか、楽しかった!

明日も頑張る


以下日記。




緊張感がひどい。

最終的に全てがうまくいきますように。

愛を込めて頑張る
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学生時代に書いたもの06

2016年11月04日 01時13分46秒 | その他
(野暮メモ)
高校の頃書いた作品。
神様が出てきますが、特定の宗教をあらわすものではありません。
何となく心にある神様と天使の存在みたいなものと、
空を飛びたい!みたいな、空が「飛びたい存在」である事への反発みたいなものがあったから書いた記憶。
何より最後のシーンへ無理矢理にでも繋いで書きたかった。
きゅうたという名前は単に変わった名前にしたかったのと、
多分南Q太さんの漫画好きだったから。
そして、伊織は桂正和さんのI"sが好きだったんでしょうね!
最後のシーンを書きたかったキッカケはレイアースのアルシオーネを見たから。
そんな記憶がある。
ちなみに、吃驚は「びっくり」と読んで欲しいです。(ルビふれるのかな?)

(メモ終わり)


神様は、もう私を見守らない。



触れる世界

そう、私がその事を内心で考えること自体は罪ではないのです。寧ろ自然な行為のように思われます。ですが、その事は口にした途端、罪となって私を責めてきそうだと私は思いました。
 実際は、私の考えた事は罪ではありませんでした。早く言ってしまえば良かったとさえ思いました。なぜなら彼女はそれを聞いても嫌がらなかったのですから。寧ろ私の考えを微笑みながら聞いてくれました。
 ここまでは、私のしたことは罪ではなかったと私は思います。今は、そう思えます。失礼だったかも、しれませんがね。ですが、私が次にしたことは、私にとって悲しく、後悔という言葉を思い出さずにはおれない結果となってしまいました。ですから、私のした行為は、罪になり得るのです。
 
―――――・・・私は、彼女から羽を奪いました。
                             葉月薫

一、

「あら?あの子?あぁ、よく見たわよ。あの子可愛いものねぇ。きゅうたちゃんでしょ?―――・・・羽?ああ、いつも背中につけていたわね。本物かですって?あらっアハハ。偽物よ。きゅうたちゃんが言ってたもの。『これは取り外し可能なんだ』って。なぁに?何でそんなこと聞くの?私テレビに出ちゃうのかしら、アハハハハッ。」
                       通りすがりのおば様より

「?あの子?きゅうたって言うんだ。ふーん。天使のコスプレしてる人。あの人にそっくりだよね。葉月さんの奥さんにさ。あれっ?やっぱこーいうことって言っちゃ駄目だった?でも似てるじゃん。顔はさ。」
                       通りすがりのお子様より

二、

天気雨が降った日。あの人(妻)は死にました。空には太陽が出ているはずなのに、頬を伝う水は、私の泪だけではありませんでした。あの人は、この空の様に穏やかに死ねたのでしょうか?私は、この空に降る雨は、私の泪であって、あの人が苦しんだことを表していないことを祈りました。死ぬ時くらい、神が安らぎを彼女に与えてくれると、私は信じていたのです。あの人の葬儀が終わっても、私の泪は少なくなってはいたものの、止まってはくれませんでした。あの人は私の最愛の人でした。死ぬには若過ぎます。強く、純粋で、そして何より温かかった人。私の心に最初に灯を燈したのは、間違いなくあの人でした。私の人生は、本当に平凡なものですけれど、そんな表現をしたくなります。
 それくらい、彼女の存在は私にとって大きいものでした。大きくて、思い出にすることが出来ないくらいに。


でも、それでも私はきゅうたに出会ったし、思い出の量は際限なく増えていく。 


三、

 彼女に出会ったのは、あの人が死んだ事を認めようとした日。泪の乾ききらない、葬儀場からの帰り道ででした。
 ○月☓日(△曜日)晴れ
今日は伊織の葬儀の日だった。一通り葬儀を済ませ、家に帰った。帰り道の途中、公園に立ち寄った。ベンチに座って人の流れを見ていた。もうこの人の流れの中に、伊織が来ることはない。そう思うと私は淋しかった。
そんな事を考えていると、不図天使の羽の様なものをつけた彼女に会った。
                           ―――葉月薫の日記より 

「伊織ッ?!」
思わず出てしまった声を、彼女は聞いてしまったみたいだった。
「あら、残念!私、伊織って名前じゃないんだな!」
彼女はやはり妻そっくりの可愛らしい声で、元気よくそう言った。
「・・・へ?」
「私!私きゅうたって言うの!」
「・・・はぁ。」
「あなたのお名前は?」
「葉月ですけど」
「葉月?下のお名前?」
「あ・・・下の名前は薫ですけど・・・。」
「そうなの!よろしくねッ!薫!」
羽をつけた彼女は、何かを思う暇も、何かを聞き返す暇も与えてくれなかった。
「あ、私の名字は神無月だよ!」
「そうなんですか。・・・。」
「・・・何か気になることでもあって?」
ようやく与えてくれた機会を私は逃さなかった。
「その羽は・・・?」
「これ?欲しい?なら、あなたに差し上げるわ!」
「・・・え?!」
そういったと同時に、彼女は今まで確かに背中から生えているようにしか見えなかった羽を取り外して私に手渡した。


 彼女ですか?とにかく不思議っていう形容詞の似合う女の子でしたよ。嫌な意味じゃなくてね。それに、私に手渡してくれた羽あるじゃないですか。会うたびにつけてるんですよ。だから最初、私は彼女は天使の・・・言っていいのかな?天使のコスプレでも好きなのかなって思ったんですよ(笑)。

                  四、

いつの間にか普通に話すようになった娘。それがきゅうたでした。いつも、足が向いてしまう公園に、いつもどおり羽をつけた彼女がそこにいたのです。最初のころは、本当にひどいもので、私は彼女を通して伊織を見ていました。
 きゅうたはそれくらい、妻にそっくりだったんです。伊織は、まだ幼さを残した少女のような女でしたから。

 私が伊織の死を認めようかと思おうとした日。そんな日にあったからきゅうたを伊織ではないかと思いたくなる。それを弱さと呼ぶのか、仕方のないことだというのか、私は知らない。
 ○月□日(×曜日)曇り
 今日はまたきゅうたに会った。会話をしたと思う。まぁ、だからきゅうたの奇妙な話を聞くことになったんだけど。それにしても毎日つけているこの日記に、きゅうたと会ったこと位しかもう書くことがない。やっぱり伊織がいなくなったというのが大きいのか?
                         ――――葉月薫の日記より
 きゅうたに初めて会った次の日あたりから、三十分仕事に行くのを早くしなければならなくなった。始まる時間が早くなったのだった。それに伴い終わるのも早くなったため、妻としていた夜の散歩代わりに、仕事帰り歩くことにした。
 帰り道。曇っているために少し薄暗い。帰り道の途中に公園があり、公園を通ったほうが早いので公園を通って家に帰ることにした。
 そんな時だった。お約束であるというべきなのか。きゅうたと会ったのだった。夕方、雲が空を支配していたとき、天候のせいで色の暗い木の下にきゅうたは居た。
 「あっ!薫さんですよね?こんばんわですー!」
『こんばんわです』って・・。と思いながらも、挨拶をしないわけにもいかない。別にきゅうたを無視したいわけじゃないから。
「こんばんは。えっと・・なんて呼べばいいですか?」
「好きに呼んでいいですよ。あー・・でもこれって一番困っちゃうよね!えと、私のことはきゅうたって呼び捨てにして!私も薫って呼び捨てしますから!」
「じゃ、こんばんは、きゅうた。」
「薫、こんばんはです♪」
 私がその日目に付いたもの。それはやっぱりきゅうたの背にある羽だった。どうしてもそれに目が行ってしまう。
 きゅうたはそれにきづいたらしく、少し微笑みながら言う。
「薫、私の羽がほんとに気になるんだね。ずっと見てるよね。私、そう見られるたびに羽はずして薫にあげたくなっちゃう。」
あげたくなっちゃうといったのと、はずしたのと、どちらが早かっただろうか。こうしてきゅうたにもらった羽が家にもう三つはある。そして羽を渡した後、きゅうたは嬉しそうな顔をして背を伸ばす。羽がなくなってすっきりしたというような態度で。
 きゅうたが私に羽をあげるのは、もちろん私が珍しそうに見ているからだけではない。それはきゅうたを見ればわかる。演技が下手だから。
「くれる位なら、どうしてきゅうたはいつも羽をつけているんですか?」
「神様がね、つけていないと許してくださらないの。だから、一応つけているだけ。」
「神様・・・?」
「そう!神様!薫ねー、神様にそっくりなんだよ。だから私初めて薫見たとき吃驚しちゃった。」
  私も、初めてきゅうたを見たとき伊織だと思ったよ、と言いたい衝動に駆られた。だけれども私ははっきりとは言わずにこう言った。
「きゅうたも、私の知っている人によく似ていますよ。」
「大事な人?」
「そうです。大事な人ですよ。私の奥さんです。」
「じゃ、可愛いね!その奥さん。」
「あはは。・・・・そうですね。可愛いです。」
 どうしても、その‘可愛い奥さん’はもう死んでしまって居ないことは言えなかった。
 私は自分が気になったことに話題を移した。
「・・・きゅうたは今神様がいるといいましたが、その方はあなたの大事な人のあだ名ですか?」
「違うよ!あー!やだ!薫、今私が変なこと言ってるって思ってるでしょ?」
はいそうですよ、と言えるわけがない。私は黙っているしかなかった。
 黙りこんでいると、私にとって信じがたい光景が目に入った。
きゅうたの羽が、また生えている。
「私、天使なの!だから、神様もいるの!」
「天使ですといわれて、信じる方がいると思いますか?・・・すいません。これってずるい言い方ですね。信じられないってちゃんと言えばいいですね。」
 そう言うと、きゅうたは悲しそうな顔をしたあと、真剣な眼差しでこう言った。
「信じてくれなくても、天使です、しか言いようがない場合、どうすればいいの・・?」
 この問いに、きちんと答えたことは、今も私の中で数少ないいいことであったと思える。


「天使です、って言えばいいんじゃないでしょうか。」


 なんで、こう答えたかですか?きゅうたが、真剣だったからです。ごまかしもせず、私は自分をどう説明すればよいのか、それ以外に方法がわからない。そんな感じだったんです。だから、その前に自分で言った言葉をふっとばしてあんな答え方をしたんだと思います(笑)。多分きゅうたにとって、私の質問は人間に対して「人間であるって信じられないです。だからちゃんとわかるように自分を説明してください。」と言った位困ってしまう言葉だったんじゃないかな。私がそんな事言われたら、困っちゃいますから。
五、

 その日から、彼女は単なる妻に似た女の子から、きゅうたという人にかわりました。一人の人間として、意識し始めたのです。思い出に出来ない伊織をそのままに、私は彼女に対しての興味を抱き始めたのでしょう。妻とは違う、彼女に。

 ただし私がそれに気づいたときっていうのは、大分遅かったですね。妻とは違うんだっていうことに気づいたのが。私はそのときまで、彼女を通して伊織しか見ていなかったと思います。多分、これを言ったら悪いかもしれませんが、きゅうたが天使じゃなかったら、私は彼女を伊織としてしか、見れていなかったと思います。まぁ、もしもの話はないのが常ですし、それに・・。もしもの話は私には要らないんですよね(笑)。彼女たち二人に会えたことが、私の幸せですから。

 きゅうたに会ってから、すでに三ヶ月のときがたっていた。毎日待ち伏せでもしたかのように帰り道の公園にいた彼女に、私はいつも話し相手になってもらっていた。
 「あ、薫やっほー!」
「こんばんは。」
 これが、いつもの私たちの挨拶だった。公園にいたきゅうたが、仕事帰りの私を明るく迎え入れる。
「いつも不思議だったんですが、きゅうたは私と話した後どうしているんですか?」
「んー・・。信じてくれるかどうかわかんないけど、空に帰る。」
「・・・・。空に帰る? 」
 返事を何もしないのもいやだし、とりあえず私はきゅうたの言ったことを言ってみた。
「そう!空に帰るの。やなんだぁ。」
「空に帰る・・ですか?どういうことかよくわかりませんが、何故、きゅうたは嫌いだと感じるんですか?」
 そう言うと、きゅうたはいつもつけている羽を広げ、こういった。
「私にもね、家があるし。空のどっかに。だからね、この羽を使って空までいくの。そしたらいっつも、神様が私を待っていてくれてね、私をお家に帰してくださるの。」
 きゅうたのものの言い方から、私はきゅうたが『神様』に対して好意を抱いていることを感じ取った。
「言い方からすると、きゅうたは神様が空で待っていることは嫌じゃなさそうですが、何が嫌なんですか?」
 私は微笑んでこういった。きゅうたは、私がそういうと空を見上げて嬉しそうな顔をした。
「薫って、いつもこの空を見てるんだよね。」
「ええ、そうですよ。」
 夕暮れ時、燃えるような赤が雲と合わさって空が美しかった。聞こえるのは、公園のせいもあるのか幸せそうな音ばかりで、私には不似合いな気がした。
「私ね、天使であることがね、誇りなの。」
「そうなんですか。」
「うん。でもね、私、空を飛ぶのは、好きじゃないの。」
「なぜですか。」
「私は、この公園とかね、薫がいるところのが好きなの。」
「・・・そうなんですか。」
 私がそういうと、きゅうたははっきりとこういった。



    「私は、見下ろすための空は要らない。見上げるための空がほしい。」
 



 きゅうたね、これほんとにはっきり言ったんですよ(笑)。だから、よくわかりました。きゅうたがこの、私たちがいる場所にわざわざ来た理由が。空が、本当に綺麗な日だったんで、余計にきゅうたの気持ちがわかりそうな気がしましたね。いつも、私が望まなくても気がつけばそこにある。それが空だったんですけど、きゅうたに会ってからよくわざと空を見上げてみたりしました。・・・もちろん、今も見ますよ。

六、

 きゅうたはいつもどおりでした。会うたびに、会話をしました。神様が、よく会話に出てきたのを覚えています。きゅうたにとっての神様は、絶対的存在だったに違いありません。

○月△日(△曜日) 晴れ
 今日は、きゅうたと話していてわかったことがあった。神様って人間くさかったんだなぁ(笑)。でも、根本的なところは違わないような気がする。ま、神に対するきゅうたの気持ちは、私の神に対する気持ちとは根本的に違うと思うけど。神に対するきゅうたの気持ちは、私の伊織に対する気持ちに似ていると思うからなぁ。
―――――――葉月薫の日記より

 きゅうたは、私と時々食事をした。時間的に大丈夫なのかと思ったが、神様は気長らしい。きゅうたによると
「別に、怒んないよ。正体ばれちゃってるせいもあると思うけど。」
らしい。
「そうなんですか?待っているのも、疲れるのではないでしょうか。というか、神様って誰かを待ったりするものなんですか・・?」
「んー・・。待つよ。神様が待ちたいなぁって思った方だったら。だって、おかしいと思わないの?薫とか、人間を作ったのが神様だと仮定したときにさぁ、神様に人間に似たところがひとつも無いなんて。たいてい作ったものは、作った人にどこか似てるもんじゃない?だから、薫が誰かを待つことがあるんなら、神様だって似たようなこと、すると思わない?」
 そう言いながらきゅうたは私の作った味噌汁をすする。
「そうですよね。」
「あと、薫が言う神様と、私の言う神様は、違うと思うなぁ。」
「そうですか?」
「うん。違うと思う!神様はねっ、優しい方なのよ!そして、私の意志を尊重してくださるの。だからね、今私ここにいるんだよ♪」
 そう、きゅうたは神様って違うでしょ?と言いたげな風に私に話しかけた。
「ほんとに、違いますね。私にとって神様は、私を遠くから見守っている方といった感じですよ。優しい方だろうとおもいますが。あと、私たちの運命を、神の意志とおっしゃるかたもいます。自分の意思を尊重しているのは自分の周りにいる人たちであって、神様だとおっしゃる方もいませんね。」
 一生懸命神様について話すきゅうたに、私は同意してみた。きゅうたはそれを聞くと、こう言った。
「へぇ~、薫たちの神様って放任主義なのかな(笑)。でもさ、人の心の支えになっているところとかは似てるね。」
「そうですね。」
きゅうたはそれから私の作った食事をとっていた。そして、ポツリとこういった。
「神様ってね、すごくいい人なの。私、ほんとはこうして薫と食事することも出来なかったかもしれないんだ。・・でもね、神様がね、許してくださってね。私の頭をなでて、いってらっしゃいってね、言ってくださったんだぁ・・・。」
 きゅうたはそう顔を赤らめて嬉しそうに微笑む。
「神様は、一人しかいらっしゃらないんですか?」
「・・・。いっぱいいるよ。でも、その人その人にとっての神様は、ただ一人でしょ?」
「きゅうたにとっての神様は、そのかたお一人でしょうね。」
そう言って私は微笑する。
 

 この時、きゅうたは演技が絶対に出来ないだろうなって思いましたね(笑)。多分、きゅうたは神様が頭をなでてくださったって辺りで、自分が嬉しそうな顔をしているってまったく気づいていないと思いますから。顔が赤くなっているのは、気づいていたと思いますが。

七、

 きゅうたが何故、私に話しかけてきたのかわかった日。そんな日に、私もきゅうたをとおして伊織を見ていたことを告白することになる。それは、今の私にでも出来ること。でも、きゅうたの羽を受け取ることは、今の私なら絶対に出来ない。

相変わらず、きゅうたは神様の話を嬉しそうにするのだった。でも、嫌な気分には不思議とならなかった。それよりも、話し相手がいることのほうが嬉しかった。
 そして、相変わらずきゅうたは私の作った食事をとっていた。神様のことを嬉しそうに語っても、神様を待たせることは苦にならないのだろうか。
「神様を待たせるのは、嫌じゃないんですか?」
「・・神様、私が来るのに丁度合わせて来るし、私のことを待つことを楽しんだりしないから。」
 少しきゅうたが淋しそうな顔をした気がした。
「きゅうたなら、神様を待つとしたら、待つということを楽しみますか?」
そう言って、私はきゅうたが違うことを考えるように仕向けた。
「うん。絶対楽しむ。だってさ、わざわざ私のとこに来てくださって、しかも私が待っているから、その約束している場所に来るんだって考えたら、すっごい嬉しいもん。」
「確かに好きな方を待つというのは、来るとわかっていたら楽しいでしょうね。」
「うんうん!絶対そう!来てくれることが前提だよね。」
きゅうたは私の意見にすごく納得していた。
「待っている間は、何をなさるんですか?」
「えっとねぇ・・。でもやっぱり早く会いたいし。似てる人探すの! 」
「似ている人を探すんですか?」
「そーだよ♪似てる人をね、探すの。でもさぁ、探してなくっても、薫に会ったよ。」
「そういえば、私と神様が似ているとおっしゃっていましたね。」
「うん、そっくりだったから、薫に話しかけたんだ。・・薫は怒るかもしれないけど、私、神様に似てるってだけで、薫に話しかけたんだ。最初に薫に会ったとき、確かに薫と目はあったけど。」
 それを聞いた私は、なにか、どこか心の奥で引っかかっていたものが、ストンと落ちていくのを感じた。
「そうなんですか。・・かまいませんよ。きっかけは。それに、きゅうたは神様に似ていることを私に話しかける切っ掛けにしかしていないじゃないですか。」
 こう言った自分の顔は、はたしてどんな顔をしていたのだろう。目は、うつろじゃなかっただろうか。ちゃんと、きゅうたの顔を見れていただろうか。
「確か、薫の奥さんって私に似てるんだよね?」
「・・ええ。」
 心の奥底で、別に言う必要性は無いじゃないかという声が確かにした。だが一方で、自分のしていたことをきゅうたに言っても、笑って終わりじゃないか。という声もした。
「そんなにそっくりなの?」
 きゅうたは、相変わらずの声、そして態度だった。そこには、確かにいつもとは違う私が居たけれど。
 そして私は告白する。

「はっきり言って、私はきゅうたが天使とわかる前まで、きゅうたを通して伊織しか見てなかったんです・・。」


 重苦しい感じが、自分にだけした。顔は、赤かったのかもしれない。
「ふーん。薫ってすっごい奥さん思いだねー。伊織って、呼び捨て?いいなぁっ。フフっ、すっごいイイな。そんなに思われるなんて、奥さん幸せものだね。」
 そう言って、きゅうたは微笑んだ。 
「思う相手は、触れることももうかなわないんですけどね。」
 私は、出来るだけ無表情になるよう努めた。
「・・・・そういえば、奥さんってどこにいるものなの?」
「・・私の奥さんは、空に居ることを私が勝手に願ってます。」
「・・はっきり言ってほしいんだけど。無理?」
 表情を変えないよう努めるのにかなり苦労した。手が汗ばんでしかたがなかった。




もう、死んで私のそばに居てくれないんです。




 こう言ったときですか?すごくつらかったです。きゅうたに言うってことは、強制的に自分にも言うことになるでしょう?「伊織は死んだんだ」って。だから、あの時はそれを言うのがたまらなくつらかった。でも、それをきゅうたには知られたくないんですね。だから無表情にしたいって思うんです。そしたら、ものすごい苦労を要したんですよ(笑)。だから、めったに汗をかかない手のひらに、汗なんかかいてしまったんでしょうね(苦笑)。
 
  
八、

 きゅうたの願い、そして、天使であることの意味。その日、私はきゅうたから教えてもらいました。私は、自分の無力さをいつも他人から思い知らされる。そう確信した日。

 きゅうたと会う時間が、まちまちになっていた。それでも、私たちはほぼ毎日会っていた。
「神様がね、最近許してくださらないの。もう少しで、十月でしょ?そしたら、ここは日本だから、ある場所に神様が集合してしまうから。神様ね、私のことを守りきれなくなるから、これ以上薫とかに会わないほうがいいって言うんだぁ。」
「なにか、いけないことでもしたんですか?」
「・・・・。した。薫に会ったとか、そーいうことじゃないんだけどね。」
 きゅうたは、少し複雑な顔をした。
「何をしたんですか?」
 私は、きゅうたの行動に悪いところがあったか考えてみたが、見つけることが出来なかった。
「羽、もってる?薫は。」
「・・・。もっていませんね。もっていないから、私はきゅうたを見たとき吃驚したんですよ。」
「そうだよねぇ・・・。・・・。もって、ないんだよね・・。」
 きゅうたは明らかにさびしそうな顔をした。
「あのね、私、薫に渡したでしょ?羽をさ。それをね、見た違う神様が怒ってるんだって。だから、私に何かしら処罰を与えたいんだって。・・私にとっては単なる人にもかわらない存在なのに、私の運命決めるのね、私にとっての神様だけじゃ、無いんだって・・・。」
「それはおかしな話ですね。・・・そういえばきゅうたは、なにかここでしたいことがあるんですか?」
「・・・あるの。まだ。だって、神様ね、ここからの空をね、いつも見てたころがあったんだって。だからね、私も見ていたいの。それに・・私は空が好き。神様が見ていなかったとしても、絶対に好き。・・・・私が天使なのは、神様と会えるからだけどね。天使じゃなかったら・・・、神様を見ることすら出来ないもん・・。」
 きゅうたの目を見てみると、きゅうたは泣きそうだった。
 そして一言、言って泣いた。

「どうして、羽をつけていなきゃ、天使であることを誇りに出来ないのかな・・・?」


 初めて見たきゅうたの泣き顔は、悲しいくらいに伊織にそっくりだった。


 そう言われた時、私は何も出来なかったんです。ただ、きゅうたを見ていることしか出来なかった。そこに居るということしか、出来なかったんです。・・・・・無力ですね。きゅうたに何を言ってあげたらいいのかが、わからないんです。泣いている、それって、明らかにいつも通りの事じゃない筈なのに。


九、
 覚悟し始めていたこと。それは、確実に確信へと変わっていく。覚悟は決めるものとなり、私の前にのしかかる。つらい現実、変わらないもの。

 この頃から、意図的に空が見えるところへよく仕事が終わってからの夕方にきゅうたと見るようになった。いつだって空が綺麗な筈は無くて、天気が悪い日だって確かにあった。それでもいつもきゅうたは幸せそうに、空を眺めていた。背を伸ばし、羽を広げて。
 「・・本当に空が好きなんですね、きゅうたは。今日なんて、別に天気はよくないから青空なんて見えないじゃないですか。」
「わかってなーい!!薫!違うよそれって。少なくとも、私は違う!私は、空が好き。見上げるこの景色がね、好きなの。見上げるっていう、行為も好き。」
「空の状態は関係ないんですね。」
「そうだよ。・・薫、奥さんが怒ってるときは見向きもしたくないの?」
「・・・また答えにくい質問をしますね、きゅうたも。」
 確かに伊織が怒っていたら、あまり見ていたくはない。伊織が何かに対して怒っているのなら、その怒りをやわらげてあげようかなとも思うけれど、自分とけんかしているときなら怒りに任せて嫌いだと思ってしまうだろう。それは、確実に一時の感情だけれども。
 本当に返答に困ってしまった私に、きゅうたはこう言った。
「そのときは、確かに薫自身も怒ってるかもしれないけどさ、好きなのは変わらないでしょ?」
「・・・ええ。」
「でっしょー??だから、私は天気が悪くたって、好きだよ。神様が、居る場所なんだってわかってるし・・・。」
 そう最後に付け足したきゅうたに、思わず私は笑ってしまった。
「ははっ、きゅうたは本当に『神様』が好きなんですね。結局は、神様のことに話が落ち着いていますよ!」
「あはっ、ばれた?だって大好きなんだもん。神様のこと考えるだけでね、私優しい気持ちになれるんだぁ・・・。・・・・それって、少し悲しいけどね。」
「なぜですか?」
「だって、それって私がさ、神様とけんかしちゃうほど、意見言い合って、話し合うほどの関係じゃないってことなの。考えて、勝手に優しくなってるだけなんだって思うと、ちょっと悲しくなるってことだよ。」
そう、きゅうたは言った。やはりきゅうたは演技が出来なくて、悲しい顔を私にはっきりと見せていた。
「空、見たほうがいいですよ。見るの、好きなんでしょう?私と勝手に神様について話して悲しくなるだなんて、それこそおかしいですよ。好きな人のことや、好きなことを考えたら幸せになるっていうのは普通ですよ。ここに居られる時期も、わからなくなっているんでしょう?なら、空を見て、幸せになったほうがいいですよ。悲しくなろうとするより、よっぽど前向きです。」
「・・・・そうだね!!私、好きなことしてるほうがやっぱ好きだもんなぁ。」
「ははっ、当たり前ですよ、そんなこと。」
きゅうたは空を見上げた。やはり天気は悪かったのだけれど、なんとなく私も幸せな気がした。
 

好きなことをしているときとか、やっぱ人っていい顔するんだなぁって思いましたね。きゅうた、本当にいい笑顔をしてたんですよ。演技が出来ないし、する気もないから、いつだって素直な感情を顔に表してくれる。私はいつもそれを見てきゅうたのその時その時の感情を知ったんです。空を見ているときのきゅうたの顔は本当に幸せそうで、嬉しそうだったんで、私も幸せな気がしました。伝染した感じですか(笑)。


十、

神無月、神有月。きゅうたにとっての神様は、いつだって彼女の中にいる。それでも、神様がほかにいる事実は変わらない。たとえ、それが自分にとっては人以下の存在であっても。


十月が、本当に近くなっていた。紅葉が、紅くなっていったことが、それを示している。私ときゅうたは、相変わらず私の仕事が終わったり、休日の日に会ったりしていたのだけれど、時間が迫っているという形の無い不安が胸にあった。私にだけあったのかもしれないけれど。
「きゅうたは、どこかに行きたいですか?空がきれいなところは、本当はこんな街中よりずっと綺麗ですよ。」
「はっはー!残念、薫!・・・・気持ち嬉しいけど、私街中しか知らないし。それに、天気が悪かった次の日とか、すっごくいつも以上に綺麗に感じられるじゃない?わざと、自分の中で感動を作り出すのって好きなんだよね、私。だからここにいていい?」
そう言ってきゅうたは笑った。それにつられて私も笑ってこういった。
「別に、いていいですよ。私も、綺麗な田舎推奨者じゃありませんから(笑)。きゅうたが行く必要性は無いと思うなら、行かなくていいですよ。」
「ありがと、薫。・・・・ね、薫、私街中知ってるって言ったけど、具体的には知らないんだ。だって私がここに来るようになったのって、最近なんだよ。」
そう言ったきゅうたに対して、私は微笑んでこういった。
「もう確実に来て半年近くはたっているんじゃないですか?・・・街中を知らないんでしたら、一緒に出かけましょうか?街中からの空も、綺麗ですよ。それを見るだけでも、一応行く価値はあるでしょう?」
「・・・行くっ!!ありがと!!」
 そして、私たちは出かけた。街中を歩くことにしたのだった。街中は人であふれていて、いつもは苛々するからあまり行かないところだったけれど、きゅうたに教えてあげたかったから行くことにした。
街中は、相変わらず人で溢れかえっていて、ごみだめみたいだった。好きなところではないので、ついいやな表現をしてしまいたくなる。
そんな私を尻目に、きゅうたは街中を見ていた。とても、嬉しそうに。はしゃいでいるっていう感じだろうか。
「うわ~、街中って広いんだねっ!薫ン家の近くも人が多いなぁって思ったのに。比べらんないやぁ。」
「私の家の近くなんて、人は多くありませんよ。」
「えーっ!多かったよ!・・・・天使のいる数が少ないからそう思っちゃったのかな?」
「はは・・天使はきゅうた以外見たことが無いからよくわからないです。でも、少ないんじゃないですか?」
そう言って歩いた。きゅうたと私は街中を見ていった。街中の具体的なお店を、みて回っていった。大体、二時間くらい歩き回っていた。
「少し休みましょうか?」
「んー・・。休む。」
「じゃ、公園行きましょうか。この近くにあるんですよ。」
そう私が言うと、きゅうたはすごく嬉しそうな顔をした。
「本当?行くっ!!絶対行く!うわー・・・。すごく嬉しいなぁ・・。」
 手を頬に回して、態度でも嬉しさを表現する。
「ほんと、嬉しそうな顔してますよ。」
思わずそういって私は笑う。
「だって、嬉しいんだもん。」
そうきゅうたが言った。
歩いてすぐ、公園に着いた。いつも会っていた公園とは違い、規模が広い。噴水がある公園で、休日のせいなのか馬鹿みたいに人がいた。
「すっごい人だね。でも、いいな。すっごくイイ!いろんな公園あるんだね。こんなに広いのに、公園なんだ。」
「公園ですよ。大きさは、決まっていないんじゃないですか?よくわからないです。」
そういって私は微笑んだ。
 
 その後ですか?また色々歩き回って、最後にケーキを買いました(笑)。それで、いつも通り、ご飯作って、食べて。ケーキはデザートにしました(笑)。おいしかったですよ。


 「じゃあね!今日は楽しかったよ!! 」
 「楽しんでもらえたなら嬉しいです。」
 そう言うと、きゅうたは玄関に行き、ドアを開けた。

ガチャッ
ゴンッ

「・・・・痛い。」
 そう頭をぶつけてしまったらしい男の人が言うと、きゅうたはその男の人が誰なのかを確認せず謝った。
「えぇっ!!ごめんなさい!!痛いですよねー??!!すごい音しましたもんねー?!あああっ!!ごめんなさいー!!」
「君は、いつもはそんな言葉遣いなんだ。気を使わせているんだね。僕は。」
 そういうと、男の人は微笑みながら自分の頭をさすり、きゅうたを責めなかった。
「・・神様ですか?」
 私は思わず聞いていた。きゅうたの知り合いは、神様しか知らなかったから。
「そうです、って言うのも変だけど、神様です。話したいことあるんだけど、空に居たんじゃ誰が聞いてるかわかったもんじゃないから。今日は初めてのお出迎えってトコかな。」
「そうなんですか。」
 私は妙に納得した感じで言った。
「そーゆーコト。それにしても、うわー、ほんとに私と薫さんって似てますね。きゅうた、あなたの目、あってますよ。」
 そう神様が言うと、きゅうたは叫んだ。
「ちょっとまって!!二人で会話を進めないでー!!」
「きゅうた、僕ですよ。わかりますか?それ位は。」
そう言って神様はにっこりと微笑んだ。
「・・・・・・ッッ!!!!神様ッ??神様なんですか??どうしてここにいらっしゃるんですか!??いつもは、そんな・・・空の、私の家の結構近くで待っているだけじゃありませんか!」
「・・・話があってね。・・・薫さん、中にあがらせてもらっていいですか?薫さんにも、関係あると思うから。・・誰かに聞かれちゃ困るんですよ。三人だけでお話したいんです。」
「いいですよ。私以外には誰もいませんから。」
「ありがとうございます。」
 
 そう言って、私は神様を自分の家に上げた。自分でもおかしいくらいの自然さだった。

十一、

 神様、何故あなたは私を見守ることしかしてくださらない?私が何かをあなたに願うのは、罪なのですか?願ったら、罰をお与えになるのですか?私にとっての神様は、いつまでたっても融通の利かない、存在自体が罪のような方だ。

 神様ときゅうた、そして私。それぞれが、家の居間に集まり、コタツに入っているというかなり異様な光景だった。
「・・お茶出しましょうか?」
 そう私が言う。
「あ、もらえるんなら、いただきます。遠慮しませんよ僕は(笑)。」
「しなくていいですよそんな(笑)。」
 きゅうたにとっての神様は、かなり私に似ていて、それで人間という存在に似ていた。しゃべっていて、変に気を使う必要性もなく、とても気楽だったのを覚えている。
「・・・・神様がここに来たっていうことは、重要なことがあったんですよね。」
 きゅうたはいつになく弱気な感じで神様に問う。
「よほど僕は君に対して冷たい態度をとってきたみたいだね。ごめん。重要なことが無いと、きちゃいけない?・・・まぁ、あるんだけどね。重要な用事。」
「・・・冷たい態度をとっていたなんて、そんなことありません!!私には、勿体無いくらいやさしい態度です!私は、いつも神様との約束を破っていたのに、それをわかっていてもいつもとかわらず接してくださったじゃないですか。それが、どれだけ嬉しかったか!」
「そんな。きみが羽を取ったっていうことは、僕にとっちゃあたいしたことじゃないからね。ほかの人が言ってきたことだから、僕にとっては重要なことじゃない。それで、きみが嬉しかったんなら、僕も嬉しいよ。自分にとってたいしたことじゃなくても喜んでくれるならさ。楽なものだ。」
 「その言い方は冷たいと思います。」
 きゅうたがきっぱりと言った。
「だってそーいう言い方を選んだからね。・・結局、僕は何の力もありはしない。それなのに、君が喜んで、嬉しいと思うと、僕は罪悪感でいっぱいになるんだよ。」
「・・・・。その気遣いは、優しいって言うのかは微妙なもんですね。あ、どうぞ、お茶です。」
 そう言って私は神様にお茶を渡した。
「あ、ありがとうございます。・・優しくないですか?この気遣いは。」
 神様は苦笑する。
「私にとっては、やな気遣いですね。されたくありませんよ、そんな気遣い。それより、いい気分にさせてくれるほうがよっぽどいい。後で気づく優しさほど、いやなものはないです。たいてい、気づいたときはその人にお返しをすることが出来ない状態になっているんだから・・・。」
「薫が言ってることは、正しいと思う。・・神様、私もそう思います。で、重要な話って何なんでしょうか?」
「ちょっと待って・・。お茶飲む。」
 神様はそう言ってお茶を飲んだ。結構ゆっくりな動作だった。そして、ひと段落つけ終わるとこう言った。
「えっと、言いたい事っていうのはきゅうたはわかってると思うけど、十月のことについて。あと、きゅうたに対しての処分が決定したっていうこと。」
 事務的な言い方だった。出来るだけ、感情を込めないようにしているようだった。
「・・・・処分が、決まってしまったんですか?私は、結局何をされるんですか。」
「・・・言いにくい。けど言わないで勝手に処分されたほうがもっと気分が悪い。だから、言う。けど・・・その前にこれはわかっておいてほしい。この結果は僕の本意じゃない。不本意そのものだ。神様ってやつは、融通が本当に利かない。古いことを守っていれば、それが正しいと信じきっている。そんなやつばっかりだ。」
 神様はそう最後のほうを冷たく言い放った。私は、それを聞いて神様に問いかけた。
「・・きゅうたに、何かされるんですか?」
「される。正しく言っちゃえば、僕以外の神様って言うやつがさ、羽をとったやつが気に入らないからきゅうたを見せしめに殺してやろうってだけ。最近羽を勝手に取るやつがでてきたんだよ。邪魔だからって。そしたら気に入らないんだとさ。羽とるっていう行為がサ。」
「羽を取ったこと・・・?」
 きゅうたが、私に羽を渡したことを思い出した。あれが、神様にとってはやってはいけないことだったのか・・・。                   


後悔という味が、自分の口の中に広がっていく感じがした。

十二、
 きゅうたへの処罰。決めかけていた覚悟。すべてが私のもとに現実となって私に問いかける。おまえは、何をしてきたんだと。
 

 言いがたい沈黙が、居間に広がる。きゅうたは、黙っていた。私は、神様にまた問いかけた。
「それで、結局きゅうたはどんな処罰を受けるんですか?」
「・・・存在を、無にするそうだよ。つまり、殺したいそうだ。神様たちは。」
「・・・ほかの人たちを神様というのはやめてください!!」
 きゅうたが、突然そう大声でどなった。
「私にとっての神様は、あなただけです!!ほかの人なんて、どうでもいいです!・・・処分をしたいなら、してください。それで、気が済むのなら。そんなことをしても、私が空に近づくだけ・・だ・・・も・・っ。」
 きゅうたの声が、途中で止まった。代わりに、きゅうたの頬に泪がぽろぽろと流れた。
「羽が、そんなに大切なものだったなんて・・・。」
 私は、思わずそう言っていた。きゅうたが、殺されてしまうほど、してはいけないことだったなんて。そうと知っていたら、絶対受け取ったりしたくなかったのに。つけていてくださいって、ちゃんときゅうたに言えたのに・・・・。そんな思いが、私の中いっぱいに広がった。
「大切、らしいね。羽が。薫さんが受け取ったのは、不可抗力でしょう。知らなかったんだから。それに、僕が思うにきゅうたが薫さんに会った途端に羽をはずしていたんでしょう?」
「私が、珍しげに見ていたから・・。はずして、私にくれたんです。」
 そう言った。もう、後悔でいっぱいだった。
「神無月きゅうたって、名前言われたときから気づいていたはずでしょう?きゅうた。もう僕の力ではきゅうたを守りきれないことが。」
「・・・え?」
 私が、不思議そうな顔をすると神様はこういった。
「神無月。神無月ってきゅうたがここに来る際にもらった名字なんです。元は名字なんてものはないんですよ、私たちには。聞いているでしょう?薫さんも。きゅうたのフルネーム。神様がいないってことをさりげなく伝えたかったらしいですよ。もろばれ、センスなさ過ぎって感じですけど。きゅうたにとっての神様が僕だってことを考えての名前だそうです。もうおまえを守ってくれるやつは、何の力もないってね。」
そう、神様が言ったとき、泣いていたきゅうたがこう言った。
「神様は、いつだって一人だよ・・・。今ここにいる、この方だけだよ・・・・!!おかしいよぅ・・。だって、私にとって、いつだってっ!!いつだって・・・!神様は居るよ。神無月なんかじゃ、ないのにぃっ!っ、っく、・・・。」
そうきゅうたは主張する。決して、私以外は認めてはくれない主張を。認める私に一生懸命、主張する。私は小さな子をあやすように抱きしめる。それは、とても自然な行為だった。きゅうたは安心そうに目を閉じる。
 それを見た神様が、きゅうたの頬を触りながらこう言った。
「神さまは、僕だけじゃない。一人だけじゃ・・ない。僕だけだったら、君が死んだりなんかするわけないじゃないか・・・!」
 神様が、本当に悲しそうだった。きゅうたは、声を殺して泣いていた。
「声を押し殺してなく必要は、ありませんよ。」
 そう、出来るだけ優しい声できゅうたに言った。
「どうして?なんで・・・・・・?なんでっ、薫みたいな人に、会っちゃうんだろうね?」
「ははっ、会いたくありませんでしたか?」
 思わず私がそういう。きゅうたは、私の服をつかんでこういった。
「やさしすぎるよ・・・。私、思っちゃうよ・・・。人間だったらよかったのにって!! 」
「・・・・・。」
 私は何も言うことができなかった。


 
 後悔で、ただただいっぱいだった。羽を取ることが、いけない行為だなんて知らなかった。でも、知らなかったからしたことは、罪にならないなんてことがあるわけない。そう思った。結果きゅうたが死ぬのに、知らなかったで済ませることが、今の私にはもう不可能だった。それ位、存在が。きゅうたの、存在が。私の中で大きくなっていたことに、そのとき初めて思い知らされた。

 

十三、
さよならと、言いたいわけじゃない。言わざるを得ないから、言うだけ。本当は、また明日会って下さいねと言って、君と別れたかった。

 神様が、きゅうたを連れて帰ろうとした。
「・・もう、帰りますよ。きゅうた。きゅうたに対しての話は、まだあるんです。」
「・・・わかりました。帰ります」
 そうきゅうたが言った。私は、きゅうたを送り出して家に入った。
 こらえきれないものが、一人になって溢れ出した。後悔をして流す泪は、初めてのような気がした。こんな初めてなんて、経験したくはなかった。
 きゅうたは、このまま家に帰って、私のところには来ないまま、死んでしまうのかと思った。それは、いやだった。気づかないうちに、死んでしまうなんて。伊織のときに、もう経験した。あんな思いは、もういやなんだ・・・。
 

さよならという言葉ですら、今はほしい。
君がいなくなるのなら。



十四、


 きゅうたが、いつもどおり私と会う。いつもどおり、私と話をする。いつも通り変わらない。
唯一違うのは、私と、さよならの仕方。

 「やっほー!薫、今日お休みでよかったぁ。平日だから会えないと思った。」
 「有休というものが、きちんとあるんですよ。」
 そう言って、笑った。
 そして、公園に出かけていった。空は晴れていて雲ひとつない。空気も、澄んでいた。
「今日は、天気がいいですよ。やっぱり、晴れているほうが私は好きです。」
 私はきゅうたにそう言った。
「うん!私も晴れてる空、大好きだよ!今日、空がこんな風でよかった。最後だから、最高の笑顔見ておきたかったんだよね。私の大好きな、空の笑顔!」
 そう、きゅうたが笑顔で言った。
「・・・・最後?」
「うん。最後。・・・今日ね、私いなくなるんだぁ。」
「・・・・え?」
 あっさりと、悲しそうにも言わなかった。私は、悲しくて仕方がなかった。いつも、会う人が急に目の前からいなくなる現実。それが、私には辛い。
「薫、私を通して奥さんを見てるって言ったよね・・。」
「ええ。」
「・・そんなの、うそだよ・・。だって、私を通して奥さん見てたらそんな淋しい顔できないよ・・。」
「今淋しい顔をしているのは、あなたが消えてしまうといったからです・・。」
きっと、今私の言った言葉の語尾は、聞こえない。悲しみが口いっぱいに広がって、言葉の代わりに出るのは、泪だけだ。
「やだ・・薫。泣かないで・・。私、幸せなんだから。フフッ・・。無になったらね、私、やっと欲しかったものがね、手に入るんだぁ・・・。」
きゅうたが欲しいもの。私が欲しくなくても、いつだってそこにあるもの。きゅうたにはなくて、私には、与えられていたもの・・。
「そうですね・・。きゅうたにとってそれが幸せなら、私が泣いているのは・・おかしな光景ですね。」
「そうだよ!泣いちゃ、だめだよ・・。私、思っちゃうから。」
「何をですか・・・?」
「薫に対しての、おねがい。」
 もう消えそうなのか、きゅうたはどんどん薄くなって風に溶けていっているように思えた。泪がきゅうたをぼかしていって、声だけが、私にはっきりと聞こえる。
「どんなおねがいですか・・?」
私がそういうと、きゅうたは私の頬に手を持っていく。触れているはずのきゅうたの手のひらの熱さが、私には感じられなくて、頬にあるきゅうたの手を確かめずにはいられなかった。
「私のおねがい・・。ごめんね、二つあるんだ。」
そういってきゅうたは微笑んだ。私にはそのきゅうたの表情を感じられることがうれしくてならなかった。
「二つとも言って、結構ですよ。」
「二つとも言うよ。だって、もうこうして会えることはないもん・・。あのね、私が無になったら、空を見て。空にね、きっと私がいるから。奥さんも、フフッ私に似てるんだったら、きっといるから・・。奥さん目当てでいいから・・。ついででいいから・・。私のこと、思い出してね。」
 ついでに思い出すような、そんな中途半端な存在ではないよとはっきり言いたいのに、やはり相変わらず私の口は言葉を伝える機能を失ったままだった。
「あと一つはね、薫・・。泣かないで・・。それじゃあ、最後のおねがいが聞いてもらえるかわかんないじゃない・・。」
「言っていいですよ。」
そういうと、きゅうたは顔を私の耳に近づけて、つぶやくように言った。
「・・・・薫、笑ってよ・・。」
「・・・ははっ、そんな・・そんなことですか・・。」
「・・うん。」
「そんなこと・・・。簡単じゃないですか・・・・・・」

どうか、どうか、ちゃんと笑えていますように―――。

 目を細めるたびに、泪が頬を伝わって流れていく。きゅうたの手が、私の泪で濡れることはないような気がして、きゅうたのねがいを、叶えてやれていないような気がして、怖くて仕方がなかった。
 「薫、ありがとう。私、最後に会えた人が薫みたいな人でよかったなぁ・・。」

 そういったきゅうたが、少し泣いているように見えた。


 いやらしいくらいに空は澄んでいて、風は冷たい。きゅうたにとっての神様が、少しでも彼女に対して何かを思いますように。そう願った。きゅうたが悲しくなるような事じゃないことであるようにとも、願いつつ。
 空を見る。痛々しくて、悲しみだけが私を支配しているような錯覚を覚える。それでも、私は空を見上げて、二人の女性を思うのだ。
 ○月○日(○曜日)晴れ
 空を見た。きゅうたが、そこにいるといったから。伊織も、そこにいるだろうといったから。私が、そこに悲しみしか見出せなくなりそうだとしても。
  神様は、もう私を見守らない。私が、神を思うことがないように。
                     ―――――――葉月薫の日記より
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