ティカッテュしましょう！

先日、突然町中が断水になってしまいました。

朝、マルツェルをいつも通り仕事に送り出し、その後子供たちに朝ごはんを食べさせながら「さぁ昼食の支度をしようか」と思ったら水が出ません。特にお知らせの張り紙もなかったしなぁと思い、マルツェルに何か知らないかと電話してみるも知らないというので、お隣さんへ聞きに行きました。

普段は挨拶を交わすだけのお隣さんですが、きっと私よりは年上で、とても良い方な印象でした。お隣さんは水が出ないことにもまだ気づいていなかったようで、私が行ってから蛇口をひねってみて「あら、ほんと！」と。やはり何も聞いていなかったとのことで、ご主人に電話して聞いてくださいました。ご主人もやはり知らず、団地の管理をしている人に問い合わせてくれるというのでその返事を待つ間、玄関先に顔を覗かせたそのお宅の猫ちゃんと子供たちが遊びはじめました。そうしたら、「猫ちゃんがどこで寝るか、猫ちゃんのベッド見てみる？いらっしゃい。」と家に呼んでくださいました。スロバキアではネズミ捕りのために猫を飼う家も多いのですが、放し飼いにしている人が多い中、この家の猫は完全に家ネコで、人にもよくなついていて、子どもも大好きなんだそう。子どもたちは猫と遊ばせてもらい、私はお隣さんとおしゃべりをしました。家の住み心地や家族のことなど話していたら、スッと手を差し出し、

Mozeme si tykat？（ムオジェメ　スィ　ティカッテュ？）と言いました。

スロバキア語は尊敬語のある言語です。日本語と同じ、あまり親しくない人や、目上の人には尊敬語を使って話します。具体的に言うと、スロバキア語にはあなた、英語でYouに当たるものが２種類あります。

ひとつはTy、これは親しい人（単数）に使い、
もうひとつはVy、こちらは親しい人（複数）、もしくは目上の人（単数・複数）に対して使います。TyかVyによって、後に続く動詞の形ももちろん変わります。ネルカとサクルカはおじいちゃん、おばあちゃんに対してTy～（タメ語って正式には何と言うのでしょう？）で話しますが、私は義父母に対してVy～で話します。

初対面の人やこのお隣さんのようなそこまで親しくない人とも日本語の感覚と同じでVyを使って話しますが、少し気心の知れたところで、「敬語はやめましょう。」と言って、そこからはタメ語で話すようになります。

お隣さんの言ったMozeme si tykat？（ムオジェメ　スィ　ティカッテュ？）はそのTyを使って話しましょうか？（敬語はやめましょう！）です。そしてここで握手（と場合によっては頬にキスをし）もう一度あらためて自己紹介をします。今までは苗字で○○さんと呼んでいましたから、「私は△△（下の名前の愛称）よ」と。

とても嬉しかったのですが、彼女はもうすぐ３０歳になるお子さんのいる女性、とても若く見えますが私よりも年上なのは明らかで、彼女は私にタメ語を使えても、私が彼女に対してタメ語で話すのは失礼にあたるのではないか？それとも、敬語はやめましょうと言ったのに、それでも敬語を使ったら逆に失礼にあたるのか、少し戸惑ってしまい、夕方マルツェルが帰ってから聞いてみました。マルツェルもこのあたりの礼儀はよく知らず、以前義母の友人（先日お邪魔したチェルヴェニークラーシュトルの方）に聞いたと教えてくれました。自分よりも年上の方が「敬語はやめましょう」と言った場合は、自分の考えに関わらず、タメ語で話すのがその方に対しての礼儀だと。
次に会ったときはタメ語・・・嬉しいけれど、なんだかちょっと勇気が要ります。

でも日本なら、敬語で話し始め、その内なんとなく年は近いだろうなぁとわかり、何度か話していく内にいつからタメ語にするか迷うことがよくありますが、そのタイミングでサラッと率直に敬語はやめましょうね！と言えるのはとても良い習慣だなぁと思います。

結局先日の断水、私たちの棟だけでなく、ママ友や少し離れた義父母のところ、町中が断水になってしまい、復旧も夕方４時ごろで、雨降る中子ども2人を連れてスーパーへペットボトルの水を買いに行ったり、近くに来た給水車にバケツを持って水をもらいに行ったり、ちょっとした面倒もありましたが、ご近所さんと親しくなる嬉しいきっかけももたらしてくれました。