詐欺に出会って、お父さんは天国へ行きました

開口一番

ワタシは父の話を遮る勢いで

「奥さんは？」

とっさに口をついて出たのは

それまでの非常な女性の行いを見てきたからだ

朝起きたときに姿が見えず

ふてくされて2階で寝ているのではないかと

下から声をかけると

機嫌悪そうにしぶしぶ降りてきたという

父はバックを知らないかと

前夜置いた食卓の上を指差すと

「知りませんよ」と

父はすぐ110番をした

そして各銀行、郵便局

取引のある所すべてに

紛失した旨

110番した旨を伝え

利用停止してもらうのだが

なんと

その時点で

定期預金以外

キャッシュカードでおろせる普通預金は

全部引き出されていたという

110番をしてすぐ

女性は大事(おおごと)を理解したか

2階へ駆け上がり

オルゴール付きの宝石箱を持って

「おとさあん、わたしもーダイヤモンドがありませーん」

そういいながら降りてきた

父は

「あんたダイヤなんて持っとったんか？」

不謹慎にも

それを聞いたとき

ワタシは「ぶっ」と吹いた

「その宝石箱って、ワタシのよ」

実家に置いて行った

ワタシのものだ

首を横に振りながら

話を丁寧に聞いていった

つづく