よしだ まさしさんから、「懐旧的香港電影妄想譚 新・君の夢で逢おう」をご恵存いただきました。ありがとうございました。しかし20数年前、私はここに収録されているどれかの記事にコロッと騙され、もーーーのすごくイヤな五里霧中気分を味わったのです。何のこっちゃ??? とおわかりにならない方が多いと思うので、まずはそもそもの発端、よしださんこと吉田真司さんと伊藤卓さんが発行していらした雑誌「電影風雲」のことからご説明しましょう。
のちに四方田犬彦先生が自著のタイトルにパクることになる、中国語で「映画」という意味の「電影」と、1987年・88年の香港映画監督林嶺東(リンゴ・ラム)作品に冠せられた題名「龍虎風雲」「監獄風雲」「学校風雲」等の「風雲」をドッキングさせた「電影風雲」という名の手作り雑誌に私が出会ったのは1993年のこと。発行は1990年からだったらしいのですが、最初の3年分は買い損ねました。上写真左の1993年号は背表紙がないのに132ページという厚さで、右の1993年續集号はきちんと背表紙ができていて144ページ。ものすごく厚くて読み応えのある雑誌でした。目次を書き出すのが面倒なので、スキャンしてしまいます。1993年号の中身はこのとおりで、どれも面白い記事でした。
香港映画好きの人なら、このちょっと気取ったタイトルの中身が大体想像できると思うのですが、同時にその充実ぶりも認識できるはずです。この中の「新・君の夢で逢おう」というのが、今回の冊子にまとめられた一連の記事に付けられた総合タイトルで、何の気なしに読んだ私は、本当に起こった出来事をルポしたもの、と思い込んでしまったのでした。でも、この1993年号にある「②九二沖天大火災」は、『タワリング・インフェルノ』(1974)の続編を香港で撮る、という話で、どうも私が読んで煩悶した記事ではなかったような気がします。私が読んだ記事はもっと後のもの――例えば張國榮(レスリー・チャン)の歌と同題名の作品を扱った「新・君の夢で逢おう3 風繼續吹」だったのかも知れません。「電影風雲 1994」に掲載された記事です。
内容は皆さんが読んでのお楽しみとしますが、20数年前に読み終わった時、「あれ~、私、どうしてこの映画を見ていないんだろう? 見たけど忘れたのか、それとも、存在を知らずに見ようとしていなかったのか...」と非常に混乱したことを憶えています。一時は、自分の記憶力の衰えまで心配したほどで、そのイヤ~な気分は、1996年の「電影風雲」中「新・君の夢で逢おう5 新龍争虎闘」の冒頭で、よしださんが書いたイントロの文章を読むまで続いたのでした。そのイントロには、「この『新・君の夢で逢おう』は、『こんな香港映画があったらいいなあ。いや、こんな香港映画があるべきなんだ』という僕の妄想から始まった」とあって、「な~んだ、全部ウソ八百だったのかぁ」と一挙に疑問が解けたのでした。このイントロでは、「新・君の夢で逢おう」に騙された数々の香港映画ファンのことにも触れられていますが、本当に、罪作りな記事だったのです。私は一瞬、ムカッとして、「電影風雲1996」に背負い投げくらわしてやろうか、と思ったほどでしたが、思いとどまったのはカッコいい表紙のお二人(下写真)ゆえです、というのはウソで、自分が見逃したとか、見たけど忘れていたとかじゃなかったんだ、と大いに安心して脱力したのでした。
今、「懐旧的香港電影妄想譚 新・君の夢で逢おう」を見てみると、「電影風雲1994」で「新・君の夢で逢おう3 風繼續吹」に続いて載っていた「風と塵の寓意 『風繼續吹』によせて」が収録されていません。前者は吉田さんの文、後者は伊藤さんの文で、後者がダメ押しになっていたからよけい信じたんだと思うのですが。それと、「懐旧的香港電影妄想譚 新・君の夢で逢おう」の《あとがき》には、「『電影風雲1994』において野暮を承知の上で『これまで書いてきたことはすべて嘘です(中略)』という原稿を掲載した」とあるのですが、どこに書いてあったのやら。それを読んでいたら、2年間も悶々とすることもなかったのに、と思ってしまいました。
とまあ、勝手な個人的思い出を綴ってしまいましたが、上の本が「懐旧的香港電影妄想譚 新・君の夢で逢おう」で、1部1,000円(送料込み)です。目次は下の通りです。
火爆城市(ルパン三世 九龍の財宝)___________ 4
九三沖天大火災(タワーリング・インフェルノ’93)__________ 20
超人計劃1993__________ 30
風繼續吹__________ 32
龍珠__________ 50
美少女戦士計劃1994__________ 61
江湖情未了__________ 63
新龍争虎闘__________ 67
金二玉妾__________ 83
THE MAN FROM SOUTH__________ 87
黄飛鴻一九九九之龍虎相幇_________ 98
熱血英雄之新千年紀_________ 110
紅三四郎_________ 112
踊る大魔神_________ 113
あとがき_________ 115
よしださんのブログを見てみると、東方書店でも買えるようです。店舗までおいでになれない方は、こちらからよしださんが通販してくれますので、ぜひお求め下さい。ちょうど本日より、この本の表紙に登場する周潤發(チョウ・ユンファ)主演作『男たちの挽歌』(1987)の4Kリマスター版が公開となりましたので、予告編を付けておきます。映画の公式サイトはこちらです。「去睇医生(医者に行けよ)」とか、この映画のセリフも結構憶えている私ですが、本当にあの頃の香港が懐かしいです...。
男たちの挽歌 日本版予告編