アジア映画巡礼

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<香港映画祭2021>昨日より大阪で開幕!

2021-11-28 | 香港映画

以前ご紹介した<香港映画祭2021>が、昨日より大阪のシネ・ヌーヴォで開幕しました。映画祭の公式サイトはこちら、このブログの以前のご紹介はこちら、作品紹介『最初の半歩』(2016)はこちらです。今回オムニバス映画『夜の香り』(2020)も見せていただきましたので、ちょっとご紹介しておこうと思います。

『夜の香り』
  2020 年/78分/原題:夜香、鴛鴦、深水埗
【監督】レオン・ミンカイ(梁銘佳)、ケイト・ライリー 
【出演】グレゴリー・ウォン(王宗堯)、ラム・イウシン(林耀聲)、ケイト・ライリー

①『禁断の都市』(原題:出城記)

舞台は元朗(ユンロン)。こぢんまりしたアパートの1部屋に住む老婦人(梁卓美)は、認知症気味ながら元気のいいお婆さんです。同居しているのは、インドネシアから来たメイドのミア(ミア・ムンギル)で、老婦人の息子から、物忘れがひどいのであまり外出させないように、と言われています。老婦人はその息子が出世した話や、自分が10歳の時に大陸から香港に泳いで渡ってきた時の話、難民時代の貧困暮らしでトイレも十分になく、”倒夜香”をした(夜におまるの回収業者が来るので、汚物をためておいたおまるを家の外に出す)話などを、何度もミアに繰り返します。いやがらずに話を聞き、老婦人を立てていたミアでしたが、「同郷会の会合があるから中環(セントラル)まで出かける」と言われ、困ってしまいます...。

フィリピン人メイドはこれまでも香港映画によく登場していますが、インドネシア人メイドは珍しく、やさしくて機転の利いた人に描いてあって心温まりました。このパートだけなぜかスタンダード画面で、少し前に撮られたものでは、という感じです。

 

②『玩具物語』(原題:玩具故事)

若い男性2人が下町の広い通りを歩いて行きます。2人は兄弟で、母は玩具店を経営していたのですが、それを閉めるにあたって、店の品物をチェックするためにやってきたのです。兄(林耀聲/『最初の半歩』にも出演)はすでに結婚して独立し、男の子が1人います。店にある品物の中でも知育玩具を探すなど、父親の自覚は十分と見えますが、それもそのはず、妻は第二子を妊娠していて、女の子とわかっているのだとか。弟(顧定軒)は数ヶ月前に上司とケンカして勤め先を辞めてしまい、それを母に言えないでいます。でも以前から時間のある時に玩具店の手伝いをしたりしていたので、在庫品には詳しくて、セーラームーンのフィギュアやらセナのレーシングカー、あるいは「頭文字D」のプラモやらを出してきて、兄と昔話で盛り上がります...。

おもちゃ関係の”なんでも鑑定団”の方には、店で兄弟が次々と見つける玩具に心惹かれるかも知れません。このパートの最後に、弟が国に帰るらしい西洋人女性を空港まで送っていき、彼女が故郷の自宅に持っている玩具について話す場面が出てくるのですが、その女性が次のパートの主演女優ケイト・ライリーに見えたので、2つのパートに何か繋がりがあるのでは、と思ったものの、私の勘ぐりすぎでした。

 

③『鴛鴦(ユンヨン)』(原題:鴛鴦)

中学校(日本で言えば中学校+高校)に赴任したアメリカ人の英語教師ルース(ケイト・ライリー)と、香港人の経済学教師ジョン(王宗堯)は、学校の自販機の前で初めて顔を合わせます。ルースが取り出そうとしたのは鴛鴦、つまりミルクティーとコーヒーを混ぜた飲み物で、以来ルースはジョンに案内され、ディープな香港街グルメをいろいろと味わうことになります...。

「鴛鴦」というタイトルが出てのちも、「始業式」「試験最終日」「クリスマス3日前」「イースター休暇4日前」等々、その時期を解説するテロップが入ります。どうやら1年間経った、ということを見せたいらしいのですが、毎回の2人の服装がちょっとちぐはぐ(クリスマス前は香港も寒いぞ~、とツッコんでしまいました)で、そのためテロップで説明を入れることにしたのかも知れません。「クリスマス休暇前日」に2人が行くのは、「香港で一番ロマンチックな○○○」と言われるファストフード店で、なぜそう言われるのかは下の写真でわかる人にはわかり、わからない人には最後に謎解きがしてあります。

調べてみると、主演をつとめたグレゴリー・ウォン(王宗堯)は、2019年6月の逃亡犯条例反対運動時に立法会を占拠した1人として同年9月末に逮捕されたそうです。その時彼がフェイスブックに載せたメッセージが、運動中にスローガンのようになった「没有暴徒、只有暴政」だったとか(出典はこちら)。本作はその前に撮影されていたのでは、と思いますが、本作ではきれいな英語を駆使して、アメリカ人女性相手に香港下町グルメのうんちくを傾ける、ダンディな先生を演じています。私も本作で、「鴛鴦」の生まれたわけと役割を初めて知りました。あと、「豬腸粉」やら、何と呼ぶのかわかりませんが「鹹蛋フレンチトースト」などが登場します。食通の方は必見です。

 

④『深水埗(サムソイポー)』(原題:It’s not gonna be fun)

深水埗の区会議員選挙。有力な候補者は、区議を12年勤めている親中派女性議員劉佩玉ですが、今回彼女に立ち向かって立候補したのはまだ若い女性林倩同(ジェシカ・ラム)でした。街頭演説や活動をする姿、自宅で2匹の猫とくつろぐ姿、彼女を支える運動員たち、バイト先での様子など、選挙結果が出るまでの彼女の日々を追っていきます。

と、これまでの3編はフィクションだったのに、突如最後はドキュメンタリーが登場。「深水埗」というくくりでは、②「玩具物語」とこのパート④は舞台が同じく深水埗なので、OKと言えばそうなんですが。

「タイの女性監督アノーチャ・スウィチャーゴーンポンとずっとタッグを組んできた、香港人撮影監督レオン・ミンカイ待望の初監督長編!」と紹介されていたのですが、「長編」ではなく「短編集」ですし、それも「オムニバス」というにはパート相互間に脈絡がなく...という、ちょっと不思議な作品でした。香港のネットでいろんな紹介記事に当たってみると、製作費が思うように集まらず、当初の予定から変更がなされたようで、それでこんな作品になったのかも知れません。なお、監督の2人、レオン・ミンカイとケイト・ライリー(女優として出演も)はご夫婦で、レオン・ミンカイは『叔・叔(ソクソク)』(2020)やTIFF2020で上映された『メコン2030』のアノーチャ・スウィチャーゴーンポン監督パートなどの撮影監督としても知られています。さらには、インドのマラーティー語映画『Ek Hazarachi Note(1000ルピー札)』(2014)の撮影監督も務めたりして、アジアを股に掛けた活躍をしている撮影監督でもあります。

こんなバラエティに富んだラインアップの<香港映画祭2021>、今後の上映予定は下の通りです。あなたのお近くに行ったら、ぜひお見逃しなく!

■期間・会場
2021年11月27日より全国5都市にて順次開催!
 11月27日(土)~12月3日(金)シネ・ヌーヴォ(大阪) 
 12月3日(金)~12月9日(木)出町座(京都)
 12月11日(土)~12月17日(金)元町映画館(兵庫)
 12月18日(土)~12月24日(金)シネマスコーレ(愛知)
 12月29日(水)、30日(木)ユーロライブ(東京)


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