ムンバイよりナマスカール。チェンナイからムンバイに移動してきました。ムンバイも30度超で暑いです。
今度のホテルは、独立直後の1948年からの歴史を持つウェスト・エンド・ホテルです。中心部、ボンベイ・ホスピタルの向かいにあります。昔は、隣にあるリバティー・シネマの方が有名だったのですが、今ではリバティーのような独立した建物の映画館は寂れてしまい、アールデコ調の内装で有名だったリバティーもその名前を言ってもタクシーの運転手さんは知らない、というような状況になってきました。
ウェスト・エンド・ホテルはさすがにムンバイのホテルだけあって、Wifiでネットにつなぐことができ、ホッとしました。ただし、1時間税込み137ルピー(約240円)。ネットカフェなら1時間30ルピーなので、インドでは高い値段です。まあ、それでも通じるだけありがたいですね~。
前回チェンナイからご報告したタミル語映画『友だち』に続き、今回はヒンディー語映画のお話です。そうそう、チェンナイで見た映画は結局7本。タミル語映画は『友だち』のほか、古い時代の村の掟を描いた『アラヴァーン(Aravaan)』、先日日本でもテルグ語ヴァージョンが上映された『愛のゴタゴタ(Kathalil Sodhapuvathu Yeppadi)』の3本で、一方ヒンディー語映画は、ヴィディヤー・バーラン主演の『物語(Kahaani)』、リテーシュ・デーシュムクとジェネリア・テスーザ主演の『あんたに恋しちゃった(Tere Naal Love Ho Gaya)』、実在の人物に題材を採った『パーン・シン・トマル(Paan Singh Tomar)』、そしてアリー・ザファル主演の『ロンドン・パリ・ニューヨーク(London, Paris, New York)』の4本です。ヒンディー語映画のうち、数年にわたる男女の関係を描いた『ロンドン・パリ・ニューヨーク』はゴミ映画(!)だったので置いとくとして、あとの3本についてちょっと書いておこうと思います。
ヒンディー語映画『物語』は、今回見た中でダントツの力作。サスペンス映画なのですが、脚本がとてもよくできていて、映画の中に引き込まれたまま一気にラストまで持っていかれます。舞台はコルカタ。臨月間近の女性(ヴィディヤー・バーラン)がロンドンから到着、警察署に直行して、「行方不明になった夫を探してください」と訴えるところから”物語”が始まります。実はその前、映画の冒頭に、コルカタの地下鉄で日本のサリン事件と同じような事件が起きて多くの人が亡くなり、犯人の計画を事前に察知して実行させまいとしていた政府の捜査官も犠牲になる、というシーンが出てきます。この冒頭の事件へと”物語”は収斂していくのですが、それに観客が気がつくのはラストのどんでん返しでのこと。それまでは、大きなお腹を抱えて大儀そうに動くヒロインと、彼女を助けて一緒に夫の足跡を探し回る人のいい警官に感情移入して、”物語”にからめとられていくことになります。
主演のヴィディヤー・バーランは、昨年の『ダーティーな映画(Dirty Picture)』の大ヒットで、今一番油が乗っている女優。『物語』でも巧みな演技で観客を惹きつけました。彼女と行動を共にする警官役のパランブラト・チャテルジーも、キャラの薄さがサブ主人公にピッタリという適役。脇を固めているのがベンガル語映画の重鎮俳優ら個性派俳優たちで、キャスティングもうまい作品でした。
『あんたに恋しちゃった』は、主演が前述した通りリテーシュ・デーシュムクとジェネリア・デスーザで、製作費もあまりかかっていないのでは、と思われる作品なのですが、これが思わぬ拾い物でした。オート・リキシャ(三輪タクシー)の運転手(リテーシュ)が、車体に隠していたお金ごとオーナーにリキシャを売り払われてマジギレ、オーナーの娘の婚約式に乗り込み、はずみから娘を誘拐してしまいます。ところがこの娘、婚約者が嫌いだったもので、絶好の機会とばかり運転手と一緒に逃亡、彼に知恵をつけて父親に身代金を要求させようとするというトンデモ娘でした。その後後半は運転手の実家に2人が連れて行かれ、誘拐を生業にする(!)運転手の父も交えて、お話はますますとんでもない方向へ。ハッピーエンドになるまで、ノンストップで笑わせてくれる快作でした。
特に、トンデモ娘になるジェネリア・デスーザが生き生きとして、すごく魅力的。『秘剣ウルミ』の彼女ですが、今回のぶっ飛んだ女の子のキャラは、以前のヒット作『君は知っているのやら、知らないのやら(Jaane Tu...Ya Jaane Na )』のヒロインに通じるものがあります。映画の中で次々に周囲の人々が虜になるのも納得のキャラクターを出現させていました。
最後にチェンナイで見た作品『パーン・シン・トマル』は、人一倍足が速かった軍人パーン・シン・トマル(イルファーン・カーン)が軍のスポーツ専門部隊に入って東京オリンピックに出場したりするものの、最後には身内の争いからダコイトと呼ばれる盗賊(彼ら自身は”義賊”と称している)になって、警官隊に討伐されてしまう、という物語です。実在の人物をモデルにしたそうで、数奇な運命を辿った彼の軌跡をなぞっているのですが、いまひとつ言いたいことが見えてこない作品でした。あと、東京オリンピック再現シーンで、サインボードすべてが英語と中国語という「ああ、勘違い!」があったり、彼のファンになった日本人女性が、「パーンさ~ん、アイ・ラブ・ユー!」と叫ぶという困ったちゃんシーンも。この映画はインド国際映画祭に出品されたようで、珍しく英語字幕付きプリントでした。
チェンナイでめぼしい映画を見てしまったので、さて、ムンバイでは何を見ればいいのやら。私の大好きな紙製品屋さんチマンラールもあるし、お買い物に走りることになりそうです....。
イルファンとヴィディヤがとても好きなので、「物語」と「パーン・シン・トマル」、ぜひ見たいです。
このあともレポート楽しみにしていますね。
日本とは時差が3時間半もあるので、ちょっと調子が狂いますが、香港へ着くまで何とかがんばってみますねー。