アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

今年のベストワン? イラン映画『別離』

2012-02-19 | イラン映画

昨日の新潟出張は、幸いにお天気もよく、楽しいお仕事となりました。一昨日の金曜日は地吹雪状態で大変だったらしいのですが、その雪が大量に積もっていたものの、昨日18日は時折太陽ものぞくいいお天気。たまーに雪がちらつくことはあったけれど、全然気になりませんでした。新潟駅前近くの大通りの雪景色です。

お仕事はこのパンフレットの講座だったのですが、その会場から写した雪景色がこちら。これとは別方向ですが、遠くに真っ青な日本海が見え、海好きの私は内心大喜びの会場でした。

講座受講者の方の出席率は、さすがに大雪で2~3割減とのことでしたが、シニアの方が多い会場は皆さん熱心に聞いて下さってありがたかったです。「インド映画をご覧になったことのある方は?」という質問には約半数の方が手を挙げて下さり、新潟、すごいじゃん、とびっくり。びっくりと言えば、終了後「ブログ見てます」と言ってきて下さった方が1名いらして、これまた感激でした。若い男性の方だったのも嬉しかったです~。

今回は日帰りでした。あの大雪だったので、上越新幹線初体験の私は列車が遅れないかとすごく心配したのですが、これは杞憂でした。新潟までの道のりはほとんどがトンネルの中。あれなら時間通りの走行も可能ですねー。新幹線とき号は、ラインの色がイエローとピンクの両方あってカワイイです。しかし、2階建ての車両の1階は、大柄な私にはちょっと息が詰まりました。

このとき号、行きは満席で、なぜか女性客ばかり。スキー客かな?と思ったのですが、トンネルが切れて大雪が見えると「雪だよ~~~(半泣き)」という声があがるなど、どうもスキー客とは違うような...。新潟で出迎えてくれた友人によると、18日(土)と19日(日)新潟朱鷺メッセで東方神起のコンサートがあり、ファンの人たちが乗っていたのでは、とのこと。今、東方神起の公式サイトを見てみたら、11日(土)、12日(日)は福岡マリンメッセでの公演だったそうで、偶然にも私と同じスケジュールだったことになります。あらまあ。

今回新潟で雪にもめげずスムーズに移動等ができたのは、ひとえに新潟在住のこの友人のおかげです。お昼はタイ料理に連れていてくれたり(カオマンガイのたれがすごくおいしかった!)、終わってからもおみやげ買いにつきあってくれたりと、数年ぶりの再会をたっぷり楽しみました。彼女は映画好きの上、一時は「シネマジャーナル」にも書いていたことのある、映画的センスに優れた人です。彼女が書いた「シャー・ルク・カーン、香港に来たる!」の記事はこちら。ナマ写真もいっぱい載っています。何と香港で、シャー・ルクたちのスターショーを見ただけでなく、記者会見にも出席してるんですよ。うらやましすぎる!

その彼女がとても見たいと言っていたのが、イラン映画『別離』。そうなんです、先日試写で見せていただいて、これはひょっとして今年のベストワン作品かも、と私も思った作品です。昨年のアジアフォーカス・福岡国際映画祭で『ナデルとシミン(仮題)』として上映された作品で、この時も福岡観客賞を受賞したのですが、世界中でいろんな賞を受賞しており、その受賞一覧リストたるやA4判1枚にはおさまり切らないほど。しかしながらそれは結果であって、受賞作品だからオススメするわけではありません。これを見ておかないと、あなたの映画大好き人生にぽっかり穴が開く、というような作品だからなのです。

『別離』  公式サイト  予告編(公式サイトでも見られます)

 原題:Jodaeiye Nader az Simin(シーミーンと(からの)ナーデルの別離)
 英題:Nader and Simin, A Separation
 2011年/イラン/123分/ペルシア語
 配給:マジックアワー、ドマ

<スタッフ>
 監督・脚本・プロデューサー:アスガー・ファルハディ
 撮影監督:マームード・カラリ
 編集:ハイェデェ・サフィヤリ

<キャスト>
 シミン(妻):レイラ・ハタミ
 ナデル(夫):ペイマン・モアディ
 ホッジャト(ラジエーの夫):シャハブ・ホセイニ
 ラジエー(ヘルパー):サレー・バヤト
 テルメー(シミンとナデルの娘):サリナ・ファルハディ
 判事:ババク・カリミ
 ナデルの父:アリ・アスガー=シャーバズィ
 シミンの母:シリン・ヤズダンバクシュ
 ソマイェ:キミア・ホセイニ
 ギャーライ先生(テルメーの先生):メリッラ・ザレイ

※今春、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー

 

チラシの裏を大きく載せたのは、登場人物の顔を見ておいていただきたかったからです。右上が妻のシミン、左下が夫のナデルです。シミンは中学生(高校生かも)の娘テルメー(中央のスチール、メガネの女の子)の将来を考えるとイランに住み続けるのが心配で、外国に移住する決心をします。しかしながらナデルは老齢の父がアルツハイマーになっており、父を置いては行けないということでシミンに同意せず、2人は離婚を考える羽目に。一時的にシミンが実家に去った後、ナデルは父の介護のためにヘルパーとして、人妻であるラジエー(中央のスチール左端)を雇います。

ところがある日、テルメーの下校を迎えに行ったナデルが帰宅してみると、ラジエーの姿は見えず、父はベッドから落ちてぐったりしていました。しかも、手がベッドに結びつけられていて、まるで拷問のようなひどい姿。ナデルは戻ってきたテルメーのいいわけを聞こうともせず、彼女を玄関ドアから突き飛ばすようにして追い出します。直後にテルメーは階段にうずくまってしまい、その後流産したことから、ナデルは殺人罪に問われることになります。短気なテルメーの夫ホッジャトは怒り狂い(中央のスチール左から2枚目)、判事も最初はテルメー夫婦に同情的でしたが、ナデルは何とか無実を証明しようとし、シミンも協力しているうちにお話は意外な方向に....。

アスガー・ファルハディ監督の前作『彼女が消えた浜辺』 (2009)もそうでしたが、見ている観客は胃が痛くなるような焦燥感を味わうことになります。一体どうなるんだ、というサスペンスに翻弄され、観客の知っている事実を思わず証言したくなるほど作品に引き込まれ、その結果見事に監督に裏切られ...とまあ、超一流の観客ころがしを味わわされることになるのです。でも、『別離』は前作よりも登場人物それぞれのキャラクターがはっきりしており、どの人物にも血が通っていて、たとえば超脇役の警官などでさえも魅力的でした。ベルリン国際映画祭で、銀熊賞の男優賞・女優賞が授与された時、「キャスト全員に対して」と付記されていたのがうなずける作品です。

ラストの意外な着地点は、イスラーム教の教えが厳しいイランの現状を逆手に取ったものでしょうか? いくらでも深読みできる、イラン映画の傑作です。まだ初日が決まっていないようですが、ぜひご注目下さいね!

 


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2 コメント

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新潟の友様 (cinetama)
2012-02-20 09:34:28
ご丁寧にコメント、ありがとうございます~。あの折は本当にお世話になりました。

『別離』、新潟でも公開されるといいですね。
この記事、配給元マジックアワーの社長が見て下さったようなので(「載せました」とマジックアワー社宛にメールでお知らせしたら、現在@ベルリンという社長からメールが入ってびっくり)、新潟に待ち望んでいる映画ファンがいる、というのはわかって下さったと思います。お楽しみに~。

そうそう、マジックアワーは今夏、香港のアニメ『マクダルのカンフーようちえん』も公開予定とか。こちらもお楽しみに~。
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ありがとうございます! (新潟の者)
2012-02-20 07:23:58
cinetama様
うわ~~~新潟のことをこんなに素敵に書いて下さり感激です!しかも私のことまで。。赤面(笑)
こちらこそ、久々にお会いでき本当に楽しく貴重な時間を過ごさせていただきました。ありがとうございました。
インド映画、アジア映画をもっと普及させなきゃ!って決意も新たにし、これからもこの地で頑張ります。
また暖かい季節になりましたらいらしてくださいね。
お待ちしております。
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