本日(11月23日)から第25回東京フィルメックスが始まりました。ここ数年、いろいろ揺れ動いたフィルメックスですが、今年もいくつか流動的な点が。まず会場ですが、今回は有楽町の丸の内TOEIと、去年も会場となったヒューマントラストシネマ有楽町での上映です。前にも書きましたが、丸の内TOEIは取り壊しが決まっているので今回限り。これまで24年間ずっとメイン会場だった朝日ホールは今も存在しているのですが、来年戻るかどうかは不明のようです。今日1日丸の内TOEIで映画を見た感想から言えば、イスはこちらの方がずっと楽で、背もたれが短い朝日ホールよりありがたいです。ただ、ロビーが広く、1階下のエントランス部分も使えた朝日ホールの便利さに比べると、丸の内TOEIは休憩時間に過ごすスペースがありません。また、1階のトイレは地階に降りないといけないので、年寄りにはつらいものがあります。いい運動になると言えばそうなんですが、足の不自由な方などは大変です(エレベーターがどこかにあるのかな?)。今日は2作品ともほぼ満席だったため、トイレは男女とも長蛇の列。平日になると客足も鈍ると思いますが、本当に一長一短ですね。では、これから「毎日フィルメックス」なので、簡単にレポートしていきます。
11月23日(土・休)15:10~
『DIAMONDS IN THE SAND』
2024年/日本、マレーシア、フィリピン/102分/原題:DIAMONDS IN THE SAND
監督:ジャヌス・ビクトリア
出演:リリー・フランキー
主人公は中年のサラリーマンヨージ(リリー・フランキー)。妻とは離婚して一人暮らし。勤務先の会社TOMOKO(とも工、らしい)では閑職で、同僚などは勤務時間中にポルノ映画をイヤホン音声で見ている始末。年老いた母親は介護施設に入れており、そこでヘルパーとして働くフィリピン人の女性が親切なのが心和む時間、というような暮らしです。そんな時、マンション階上の住人が孤独死し、ヨージがその遺体を発見する羽目になり、孤独死現場の現実を目の当たりにします。その後母親も亡くしたヨージは、介護施設にいたフィリピン人の女性を頼ってマニラへ。そこでヨージは、楽天的なフィリピンの人々の暮らしと厳しい現実とを目にすることになります。
この日は、舞台挨拶にジャヌス・ヴィクトリア監督と主演のリリー・フランキー、そしてプロデューサーのローナ・ティーと曽我満寿美が登場。上映後のQ&Aにも監督とリリー・フランキーが登場して、ほぼ満員の会場(2階席もあるんです、このホール)を沸かせました。リリー・フランキーはいくらでもしゃべりたい人のようで、司会の神谷ディレクターが汗をかきながら時間の終了を告げていたりして、とても味のあるQ&Aでした。私の席は後ろの方で、私のメニエール病耳には音声がいまちはっきり聞こえなかったため、写真だけいっぱい付けておきます。
11月23日(土・休)18:20~
『新世紀ロマンティクス』
2024年/中国/111分/原題:Caught by the Tides 風流一代/配給:ビターズエンド
監督:ジャ・ジャンクー
主演:趙濤(チャオ・タオ)、李竺斌
物語は、テレビの正月番組などのあと、「2001年 大同」というテロップが出て、女性たちが集まって歌を次々に歌っていくシーンから始まります。「歌えな~い」とか恥じらいながら、次々と様々な歌を披露していく女性たち。当時の映画館が写されたり、鳳凰テレビの番組が出てきたりする中、ヒロインのチャオ・タオがクレオパトラみたいな黒髪のウィッグを付けて登場。そのお色気に地元の男どもはぞっこんで、彼女もそれを十分に意識して振る舞います。彼女には好きな男がおり、この2人の有為転変を20数年にわたって描くのが本作です。それも昔撮った映像を上手につなぎ、現在のパートまでいろんな流行歌を入れながら、この四半世紀の中国を描いていきます。最初、「2001年 大同」シーンに登場する女性たちが、その頃の服装をしているのを見て、再現能力がすごいなあ、と思ったのですが、当時撮った映像だったとは。
Q&Aに登場したジャ・ジャンクー監督によると、もともと本作は「デジタルカメラを持って撮影する人」というタイトルにする予定だったのだとか。その時々で思い出しては好きなように好きな所で撮っていた映像だそうで、撮りためた映像20数年分を使ってこの物語ができたようです。この間にコロナ禍があり、これが終われば新しい時代が来るのでは、自分が2000年から撮りためてきたものを何とかしなくては、と思ったそうで、2022年に脚本を書いてできあがったのが本作だとか。神谷ディレクターの「音楽に力が与えられていて、ヒロインのチャオ・タオにはセリフがない、どうしてこんな作り方に?」という質問には「確かに19曲使っています。その時その時の曲を入れておいたのに加え、自分が監督として選んだ曲が入っています」との答えがあり、音楽をふんだんに使うのは昔から変わらないのね、と思いました。ジャ・ジャンクーの写真を付けておきますが、サングラスをしているのは目を痛めていて光がまぶしいからで、「僕はウォン・カーウァイ監督ではありません(笑)」と言って会場を沸かせていました。
リリー・フランキーさん、とてもマイペースな人で面白かったのですが、きっと監督は苦労したんでしょうね。そうした苦労話も聞いてみたかったです。
ゲストのサインをもらうスポット、実は設定してあるんですよ。
劇場入り口の向かって右側に、東映本社に入る入り口があるのですが、あの前で待っているとゲストの方が出てきてくれることになっています。
今日もインド映画『サントーシュ』の監督サンディヤ・スリさんがサインしてくれましたし、また、ロウ・イエ監督も出てきてくれるようで、夜9時半過ぎなのに中国人の方が大勢待っていました。
リリー・フランキーさんはわかりませんが、ジャヌス・ヴィクトリア監督はサインをして下さったのでは、と思います。
どなたか、サインをおもらいになった方、いらしたらコメントして、よしださんに「残念(泣)」と言わせてあげて下さい(笑)。
お勧めの『JAWAN/ジャワーン』、川口市の映画館でも上映があるので、きっと観られると思います。楽しみです。