香港旅行から帰った友人、鉄屋彰子さんから、「林青霞:窗裏窗外」という本をおみやげにもらいました。女優の林青霞(ブリジット・リン)が出したエッセイ集です。出版社は香港の天地圖書、2011年7月の出版で、価格は178香港ドル。左が表表紙、右が裏表紙です。
写真ではちょっとわかりにくいかと思いますが、実はこの本の表紙は赤一色。それにブリジット・リンの写真が印刷してある幅の広い帯がついているのです。しゃれた作りですね。表紙の赤色は、張國榮(レスリー・チャン)の歌「紅(Red)」を思い出させます。見返しや序文の所にもこの赤色の紙が使ってあり、とても華やかです。
中の文字は縦組みで、大きなフォントの中国語はデザイン的にも美しく、読みやすいです。さらに、ブリジット・リンの出演映画のスチールやスナップ写真、それからプライベートな写真まで、ふんだんに写真が使われています。テレサ・テンとの水着姿のツー・ショットとか、ブリジット・リンがインドやカンボジアに行った時の写真とかもあり、もちろん仲の良かったレスリー・チャンとのツー・ショットも。『大英雄』 (1993)の時の写真だそうで、レスリーのあのおとぼけメイクが懐かしいです。レスリーに関するエッセイは「寵愛張國榮」という題で、2003年3月(亡くなる直前です)に会った時のことなどが綴られています。レスリー・ファンにはちょっぴり悲しい内容です。
その中に、鉄屋彰子さんに関するエッセイ「一生有幾個十年」も入っていました。ちょっとサワリをご紹介すると;
”人の一生には、10年が何回あるだろうか? 日本のライター鉄屋彰子は、彼女の一番実り多い10年を惜しげもなく使ってしまった。彼女の夢だった、「林青霞」に関する本を完成させるためだ。
その10年間に、彼女は何度となくロサンゼルスと香港と台湾を往復し、たった1人で仕事を進めた。彼女にインタビューされたり、彼女に資料を提供した人たち--監督やカメラマン、美術監督、私の親友たち--は、どの人も彼女の粘り強さと誠実さに感動したものだった。”
2008年4月11日に書かれたこの文は、鉄屋さんの仕事ぶりを称えており、ブリジット・リンと鉄屋さんのツー・ショットも掲載されています。鉄屋さんのご苦労は、私もほんの一部を傍らで見ていて知っているのですが、彼女は実にたくさんの人にインタビューしてブリジット・リン像を浮かび上がらせようとし、香港や台湾に行くたびに約束を取り付けては膨大なインタビューを行っていました。さらに、ブリジット・リン主演作のスチール写真を手に入れるのにも苦労していましたし、また、英語で書き上げた原稿をブリジット・リン自身にチェックしてもらうのにも相当な年月がかかっていました。そういう苦労の末、2005年に出版された本が"The Last Star of The East: Brigitte Lin Ching Hsia and Her Films" ですが、これは彼女の自費出版本でした。
その後、この本の内容が評価され、英語から中国語に翻訳されて、2008年6月に台湾の出版社から発売されました。それが大塊文化出版から出た「永遠的林青霞」です。
鉄屋さんの話ですと、前述の文「一生有幾個十年」はこの本の序文として書かれたものながら、残念ながら台湾版には載らず、大陸版から収録されているとのことです。そのあたりにも、いろいろな事情があったようです。
いずれにせよ、ブリジット・リンは鉄屋さんのインタビューに刺激されて、自分のこれまでの仕事を振り返り、自分で備忘録のようなものを書いてみようと思ったのでは、と私は思っています。華やかなスターとしての生活から、1994年の『楽園の瑕』を最後に引退状態になり、実業家の妻、そして2人の娘の母として暮らしている中で、自分の仕事をそれはそれは詳しく振り返らせてくれる人と出会った--それが彼女の文才を目覚めさせることになったのでは、と思うのです。
今回のエッセイ集には、デビュー作『窗外』 (1973)や李翰祥(リー・ハンシャン)監督作『金玉良縁紅樓夢』 (1977)の話、香港に移って撮った『スウォーズマン』 (1992)や『ドラゴン・イン』 (1992)の話、親友である楊凡(ヨン・ファン)、徐克(ツイ・ハーク)、黄霑(ジェームス・ウォン)らの話と、香港映画や台湾映画好きのミーハー心を刺激するような文章も多数入っています。2004年12月から2010年6月までの文章が収録された「林青霞:窗裏窗外」は、写真も含めて、中国語圏映画の貴重な資料でもあるのです。
これがエッセイスト、ブリジット・リンの第一歩ですが、彼女の引き出しにはまだまだ書くことがいっぱいあるに違いありません。貴重な写真も含めて、どんどん発表してくれることを願っています。あ、そうだ、鉄屋さんもブログがんばって下さい! 香港でのブリジット・リンのトーク・ショーの様子、早くアップして下さいね!
ご存知のように、私は中国語の文章を漠然としか理解できないので、せっかくの「林青霞:窗裏窗外」も、写真を眺めるて想像力を働かせるしかないです。
ついでに、私の「永遠的林青霞」も売れるといいなぁ、とつまらないことを考えています。
(ブログもなんとか更新します)
私も中国語は、波トタンの上をさあーっとなでるだけ、という感じで拾い読みしているのですが、それでもブリジットの文章は簡潔で読みやすいです。これからも書き続けて、2冊目、3冊目と出してほしいですね。それでもって、関連本として「永遠的林青霞」も売れてくれるといいなと願ってます。
では、またブログにお邪魔しますので。