もうすぐバンコクに行くので、今どんな映画をやっているのかな、と久しぶりにタイ映画のサイトをチェックしてみました。すると、「おお!」な映画を発見。1992年に亡くなったタイの歌手プムプアン・ドゥアンチャンの生涯を描いた映画『プムプアン:ザ・ムーン』 (原題:Pumpuang: The Moon)です。「なに!? 早く見てチェックしたい!」という方向けの、詳しいタイ語紹介サイトはこちら。美麗ポスター、予告編が複数見られます。
プムプアンをご存じない方のためには、ここで簡単に彼女の解説を。まず、彼女のコンサート(ディナー・ショーかナイトクラブのよう。でも、バックダンサーの豪華さは普通のステージと同じ)のカラオケ・ビデオから、プムプアンらしい写真を1枚。20代後半は、バンダナがトレードマークでした。
プムプアン・ドゥアンチャン(1961.8.4 - 1992.6.13)は、タイの演歌と言えるルークトゥンの女王と呼ばれた歌手です。インドネシアのダンドゥットで言えばエルフィ・スカエシ、と言ってもピンと来ない方には、チャイニーズ・ポップスで言えばテレサ・テン、と表現すればわかっていただけるでしょうか。前川健一著「まとわりつくタイの音楽」(めこん、1994/画像は最後に添付)によると、プムプアンは貧しい家に生まれ、小学校を2年で中退。歌が上手だったので11歳の時歌手の一座に雑用係として加わり、14歳でデビュー。その後1983年に出した歌が大ヒットし、人気歌手の仲間入りをします。以後、50枚以上のアルバム、というかカセットテープを出した、押しも押されぬトップ歌手です。彼女のライブ映像をご覧になれば、その人気のほどがおわかりになるかと思います。
しかしながら実生活では、2度の結婚がいずれも夫の浮気で破綻するという不幸に見舞われます。最初のトランペット奏者の夫は、プムプアンの妹と関係を持ち離婚。二度目の夫は俳優で、前妻と別れてプムプアンと結婚しますが、男の子もできたのにやがて前妻とよりを戻してしまい、子供を連れてチェンマイの前妻の元に。そんな心痛もたたったのか、プムプアンは腎臓病を患い、まだ30歳という若さで亡くなってしまったのでした。
下は亡くなった時に出た芸能誌の表&裏表紙で、1992年8月にタイに行った時に買ったものです。ここに写真が出ている俳優の夫とは離婚はしなかったので、いわゆる喪主の座には夫がついていたものの、その後プムプアンの家族との間で熾烈な遺産相続争いが繰り広げられたとか。夫の浮気のせいで、こんなにかわいい坊やとも引き離され、プムプアンはどんなにつらかったことでしょう。
同じ時に買ったのが、下のプムプアン追悼ビデオ。男女の司会者が出てくるので、テレビ局の特番かも知れません。生前のプムプアンがテレビの歌番組やトーク番組に出演した時の映像や、ステージの映像がたっぷり見られます。歌う姿はもちろん魅力的ですが、トークもとってもチャーミング。小学校2年までしか行かなかったため読み書きができなかった、とのことですが、品のいい話しぶりからはとてもそんなことはうかがえません。
実は、プムプアンの生涯は以前にも映画化されたことがあります。『プムプアン』 (原題:Pumpuang)という作品で、どっちかと言えばそっくりさんを起用した実録映画、という感じ。そっくりさんが結構年を食っており、作りもチープで、いまイチ、いまニな作品でしたが、プムプアンの歌声も流れて、特に2人の夫との愛憎劇の部分は、「こんな風だったんだろうな~」と思わせられた作品でした。
これはVCDですが、ご購入はあまりオススメしません。というのも映画はシネスコで作られているらしく、VCDのスタンダード画面ではあっちが切れたり、こっちが写らなかったり。VCD作製用カメラがパンしたりしているものの、映画としては全然楽しめないからです。最後の亡くなる場面もエグくて、特にファンの方はご覧にならない方がいいかも知れません。
プムプアンについて詳しく知りたい方は、英語版Wikiもありますが、前川さんの前述の著書をぜひどうぞ。表紙もプムプアンで、彼女と彼女を取り巻く1990年代のタイの音楽状況がよーくわかります。
まとわりつくタイの音楽 | |
前川 健一 | |
めこん |
さて、今度の映画『プムプアン:ザ・ムーン』はどんな出来でしょうね。楽しみです。
この映画のほかにも、『キング・ナレスワン4』(紹介サイトはこちら。あ、また矢野かずき扮する山田長政が登場してる!)が11日から公開されるし、題名は読めないけれど、アナンダ・エヴァリンハム(ですよね? 最近出まくりです~。アジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映される『レッド・イーグル』もとっても見たいぞ!)とペットターイ・ウォンカムラーオの出ている時代劇も上映中みたいだし、これは忙しくなりそう。ん? そのほか『武侠』も『關雲長』も上映中ではありませんか! ソラポーン・チャトリの出ているタイ舞踊の映画『コン・コーン』 が見られそうになくて残念に思っていましたが、いやいや、これだけ見る作品があれば結構忙しいかも。また現地からレポートしますね!
情報ありがとうございます。感想を楽しみにしています。
初めてタイポップを聞いたのがプンプアンのベストアルバムで、めちゃくちゃカルチャーショック受けました。
インドネシアならオールラウンドに歌えるヘティ・クース・エンダンにも例えられるでしょうか。
タイ語分からないからDVDには中文字幕かせめて英語字幕がついてほしいのですが難しいですかね?
インドネシアで言うと、エルフィよりもヘティ・クース・エンダンですか、なるほど。コケットリーという点でエルフィに通じるところがあると思っていたのですが、音楽的にはおっしゃる通りかも知れませんね。
タイ語、私もぜ~んぜんダメです。一度夜間の講座に通ったんですが、落ちこぼれました。
タイ映画のDVD/VCDには、最近は英語字幕が付いているものが多いです。上映も英語字幕付きの上映をやっている劇場が選べますし、ひと頃よりもずっと楽になりました。