アジア映画巡礼

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マラヤーラム語映画の力作『ആടുജീവിതം/The Goat Life/羊の生活』を見る

2024-09-15 | インド映画

やっと生活がのんびりしてきたので、Netflixの映画を見まくっています。最近のNetflix、インド映画が多いこと多いこと。日本語字幕のある作品も結構あり、また連ドラも力作があって、これは他の仕事ができなくなりそう。そんな乱読ならぬ乱視(って言うのかしらん?)に一応区切りをつけるために、見たかったけどヘビーそうなので置いておいたマラヤーラム語映画『The Goat Life(羊の生活)』(2024)を見てみました。主演は、『SALAAR/サラール』(2023)のW主演の1人、プリトヴィラージ・スクマーランです。まずは映画のデータをどうぞ。

『The Goat Life(羊の生活)』
 2024年/インド、アメリカ/マラヤーラム語/173分/原題:ആടുജീവിതം(Aadujeevitham)
 監督:ブレッシー
 出演:プリトヴィラージ・スクマーラン、アマラ・ポール、K.R.ゴークル、ジミー・ジャン=ルイ、ショーバー・モーハン
    インド公開:2024年3月28日

私が見たのは、ヒンディー語吹き替え版でした。ですので、Wiki「The Goat Life」を参照しながら書きますが、細部が違っていたりしたらお許し下さい。また、ストーリーを最後まで明かしてしまうので、ネタバレを忌避したい方は読まないで下さいね。本作には原作小説があり、2008年に出てベストセラーとなったマラヤーラム語のベンヤミンによる同名小説が元になっています。この小説は、実在の人物でマラヤーリー(ケーララ人)のナジーブが実際に経験した、湾岸諸国への出稼ぎ体験に基づいて書かれました。あまりにも過酷な出稼ぎ実態を描いたためか、完成した本作は当初アラブ諸国では、UAE(アラブ首長国連邦)でしか上映が許可されなかったのですが、その後クウェートとサウジアラビアを除くすべての国でOKとなりました。

ケーララから、ナジーブ・ムハンマド(プリトヴィラージ・スクマーラン)と若いハキーム(K.R.ゴークル)がサウジアラビアの空港に到着します。ナジーブは村で結婚して間もない妻サイヌー(アマラ・ポール)、そして母親と共に自給自足に近い生活で暮らしていたのですが、子供が誕生するとなって、アラブ諸国への出稼ぎで金を稼ぎ、もっといい生活をさせたい、と思うようになります。そして村人のつてを頼って、ブローカーのような大物に大枚のお金を支払い、パスポートとヴィザを取得してハキームと共に飛行機に乗ったのでした。ブローカーの話ではオフィスの仕事で、空港に迎えが来ているから、とのことでしたが、それらしい人は空港におらず、2人は途方にくれます。そんな時、年寄りのアラブ人が空港にやってきて、彼らを見て何やら命令します。その人が雇い主か、と思った2人はピックアップの荷台に乗せられ、砂漠のただ中に運ばれていきます。途中ハキームがある牧場のような所で降ろされ、ナジーブは最後に別の牧場へと連れてこられます。言葉も通じず、「家に電話させてくれ」と頼み込んでもすべて無視。おかしいと思いながらも、砂漠の真ん中から逃げるすべはなく、ナジーブはそこでおんぼろトラックをベッド代わりにして、羊の放牧や搾乳を学んでいきますが、それには常に暴力支配が伴っていました...。

ナジーブとハキームは英語もろくにしゃべれない、という設定で、アラビア語で何を言われてもまったくわかりません。それにつけ込む形でアラブ人たちは牧場で働く奴隷として彼らを砂漠に連れて行くのですが、言語力以外にも、人との交渉術、困難な状況に陥った時のサバイバル能力といったものが2人とも皆無で、特に前半は非常に歯がゆく思えてしまいます。2人とも名前からムスリム(イスラーム教徒)とわかるため、クルアーンの一節を使ってコミュニケーションを取るとか、クルアーンを学ぶ時憶えた単語で用を足すとかできないのかしら、とかなりいらつきながら見てしまいました。中盤以降、引き離されていたナジーブとハキームが砂漠で出会い、ハキームの仲間でソマリア人のイブラヒム・カドリーという男が道を知っていることから、それぞれの牧場を逃げ出し3人で砂漠脱出をめざすのですが、その時もあやしまれるというので旅行装備は何もなし、等々、思わず「頭を使え!」と言いたくなることが多い映画でした。ナジーブは最後町にたどり着くことができ、収監されて皆と共に雇い主の逃亡奴隷チェックみたいなものを受けます。最初に砂漠に連れてきた老人もそこにやってくるのですが、彼は本当はナジーブの雇い主ではなかった、ということから、ナジーブは解放されて帰国することができます。この間3年ほどだったようなのですが、上のポスターのように、30代の働き盛りの男が老人のようになっていくのをプリトヴィラージ・スクマーランが熱演していました。

音楽はA.R.ラフマーンで、監督のブレッシー(ブレッシー・イペ?・トーマス)はもうベテランの域に入る人ですが、本作は11年ぶりの劇映画となります。衝撃的な物語が評判を呼んだのか、今年の3月28日に公開されたあと多くの観客が詰めかけ、海外も含めて16億ルピーの興行収入となりました。これは、マラヤーラム語映画では歴代興収第3位となります。また、8月16日に発表されたケーララ州映画賞では、監督賞、主演賞等9部門で受賞を果たし、「『The Goat Life』が大勝利」と新聞の見出しを賑わせました。よかったら、ぜひNetflixでご覧になってみて下さい。最後に予告編を付けておきます。

Aadujeevitham | Official Trailer | Prithviraj Sukumaran | Amala Paul | Blessy

 

<ちょっとオマケ>
この間、ツインさんに打ち合わせで行ったら、小さなペットボトルに入った冷水をコースターの上に載せて出して下さいました。へー、日本でもこんな少量のペットボトルがあるのね、と思ってよく見たら、何と下のコースターがこれ↓↓↓でした。

帰り際、「このコースター、いただいていってもいいですか?」と聞いたら「どうぞどうぞ。まだありますから、余分にどうぞ」とご親切にも5枚ほど出して下さいました。わーい! 超ラッキー♡ プラバース・ファンの方はインド料理店エリック・サウスにいらしてゲットなさったのでは、と思いますが、なかなか粋な宣伝物ですね。プリトヴィラージ・スクマーラン・ヴァージョンはないようなので、このプラバースもので『SALAAR/サラール』(2023)の宣伝を。公式サイトはこちらです。新潟の高田世界館では昨日、9月14日から上映が始まっていますし、やはり大画面で見たい作品なので、まだの方は上映の機会があったら逃さずにご覧になって下さいね。こちらも予告編を付けておきます。上の作品との、プリトヴィラージ<ギャップ>スクマーランをお楽しみ下さい。

『SALAAR/サラール』本予告

 

 


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ポコポコ)
2024-09-22 20:40:41
こんにちは。ネットフリックスでThe Goat Lifeみ見ようと検索したところこの動画は検索できませんでした。
VPNでインドに接続して、この動画を見られたのでしょうか? もしお分かりでしたら、教えてもらえますか。
返信する
ポコポコ様 (Cinetama)
2024-09-23 00:30:47
お問い合わせありがとうございました。

ネット検索するとVPNのアカウントがどうのこうの、というのが出てきますが、私は確か、「Browse by Languages」をクリックして、「Select Your Preferences」を「Original Language」と「English」にしただけだったと思います。
そうやって「The Goat Life」を検索すると、こういう画面が出てきます。
https://www.netflix.com/search?q=The%20Goat%20Life

操作したのがもう数年前なので、ちょっと不確かなのですが、確かアルカカットさんがどこかに書いていたのを参照したので、彼の最近のブログから関連しているページのアドレスを付けておきます。
https://filmsaagar.com/index.php/2022/03/30/hindi-films-in-netflix/

日本語字幕のものは従来通り見られますし、これで多分大丈夫だと思いますので、お試し下さい。
返信する
Unknown (Cinetama)
2024-10-08 10:23:12
> Cinetama さんへ
回答遅くなりましたが、無事に設定できました。
補足で伝えると、アプリ上ではなく、WEB上言語で英語を選択するのですが、あわせて字幕でもデフォルトで日本語になってるところを外し、英語に選択したら、日本語字幕もないインド映画も選択されるようになりました。
新たにインド映画が見えるチャンスが増えました。情報ありがとうございました。
返信する
Unknown様 (Cinetama)
2024-10-08 20:29:41
ご丁寧にご報告をありがとうございました。
補足も付けて下さってすみません。
これからどんどん、英語字幕でもインド映画をご覧になって下さいね。
ヴィジャイの『GOAT』こと『The Greatest of All Time』も早速見られるようになりましたし、インド映画は世界中で好評なのか、一般公開作もどんどんネトフリ入りしています。
いいのか悪いのか、評価が分かれるところですが、とりあえず楽しめてありがたいですね。
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