アジア映画巡礼

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1週間後に『国際市場で逢いましょう』

2015-05-09 | 韓国映画

昨日来の風邪が本格化しつつあります。喉が腫れて、声がだんだん出なくなってきました。皆様もお気をつけて。わが家ではパソコンも風邪を引いてしまい、本日日帰り入院しました。何のウィルスに感染したんだか、ですが、働かせすぎかも知れません。

さて、そんな風邪も吹っ飛ぶ活きのいい韓国映画『国際市場で逢いましょう』が、いよいよ1週間後に公開されます。韓国庶民現代史ものの秀作が、またまた登場しました。こちらの記事でもご紹介したように、昨年度の観客動員第5位の作品です。これは昨年の年末時点のことなので、まだ上映継続中だった『国際市場で逢いましょう』は今はもっと上位に上がっているかも知れません(今ちょっと調べてみたら昨年の興収第2位で、歴代でも2位の成績になったとか)。まずは、基本データをどうぞ。

『国際市場(いちば)で逢いましょう』  公式サイト 

 2014年/韓国/116分/原題:国際市場
 監督:ユン・ジェギュン
 主演:ファン・ジョンミン、キム・ユンジン、オ・ダルス、チョン・ジニョン、チャン・ヨンナム、ユンホ(東方神起)
 配給:CJ Entertainment Japan
 宣伝:中目黒製作所(電波・紙媒体)/田中舘(WEB・モバイル媒体)

5月16日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、シネマート新宿ほか全国順次ロードショー


(c)2014 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved.

オープニング・シーンは現在の釜山(プサン)。年老いたドクス(ファン・ジョンミン)が、国際市場(いちば)にある「コップンの店」と名付けられた自分の食料品店をめぐって、立ち退きを勧めに来た人たちを追い返しています。妻のヨンジャ(キム・ユンジン)や子供たちも、ドクスの頑固さには辟易ぎみ。ドクスがこの店にこだわるのには、それだけの理由があったのでした....という出だしから、ファン・ジョンミンのうまさが際立ちます。老けメイクが板に付いていて、老人特有の意固地さ全開ぶりも、まるで本当に70歳ぐらいの人が演じているかのよう。ここでぐっと、観客は物語に引き込まれていきます。

(c)2014 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved.

そこから朝鮮戦争当時の1950年12月へとお話は飛び、今は北朝鮮東岸の港となった興南(フンナム)でのドクス一家の脱出劇が描かれます。父(チョン・ジニョン)と母(チャン・ヨンナム)はドクスら4人の子供を連れて、侵攻してくる中国軍から逃れようとするのですが、船に乗る時にドクスが背負っていた妹マクスンがはぐれ、そのマクスンを捜すために父は後に残る決心をし、こうして一家は分断されてしまいます。その時父がドクスに、「これからはお前が家長だ。家族を守るんだぞ」と言った言葉が、ドクスの一生を決定するのです。


(c)2014 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved.

やっと父の妹である叔母コップンが店を持っている釜山に辿り着き、苦労しながら一家は生き延びていくのですが、ドクスは妹を見失った負い目もあって、常に家族の犠牲になろうとします。お金を稼ぐため、西ドイツ(当時)の炭鉱に出稼ぎに行き、そこでやはり看護師として病院で働いていたヨンジャと出会い、のちに結婚。この出稼ぎで家を建てることができたドクスは、今度は妹の結婚資金を得るためと大学に進学する弟の学費のために、南ベトナム(当時)に技術者として派遣されていきます。そこでは人気歌手のナム・ジン(ユンホ)と出会うなど、楽しいこともあったのですが、常に死と隣り合わせの毎日でした。ついに銃撃を受けて足を負傷したドクスは、治らない足を抱えたまま帰国することになります。

(c)2014 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved.

こんなドクスにいつも同行していたのが、小学校時代からの親友ダルグ(オ・ダルス)でした。お互いに言いたい放題なので、腐れ縁と言った方がいいかも知れませんが、このお調子者のダルグがいてくれたおかげで、ドクスは生死の境をくぐり抜け、家族の元へと帰ってこられたのでした。そして1983年、朝鮮半島の分断で生き別れになった人々の肉親捜しがテレビ局によって始まります。ドクスの元にもマクスンの情報が寄せられるのですが....。

 

(c)2014 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved.

1950年から現在までの、文字通り激動の韓国史が庶民の生きざまとして描かれます。これまでも、西ドイツへの出稼ぎは『怪しい彼女』(2014)など、ベトナム戦争への軍人と民間人の関与は『あなたは遠いところに』(2008)や『情愛中毒』(2014)など、いろんな作品で描かれてきましたが、本作では「家族のために」を掲げてそれらの歴史的事件を突き抜けていく主人公が飾り気のない姿で描かれていきます。ヒーローではないのだけれど、それぞれの時代の韓国人を代表するような人物、とでも言えばいいのでしょうか。映画館に足を運んだ韓国の観客が、主人公の物語に激しく共感したであろうことは想像に難くありません。

(c)2014 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved.

そして、別れ別れになった妹マクスン探しのシーンは、部外者である我々の心も揺さぶってくれます。こういう物語が韓国中に存在していたのだろうなあ、とは思いつつ、前半に悲劇的な別れのシーンが出てくるだけに、それから30数年たって妹がわかるのか、とか、ハラハラドキドキさせられます。

こういったカタルシスも用意しながら、物語は穏やかなラストを迎えるのですが、これまでの作品と違うのは、最後に主人公が弱音を吐くこと。「父さん、家族を守れという約束は果たしたよ。でも....本当につらかった....」こういった正直な姿に、観客はさらに共感を寄せたのかも知れません。そんな新しさも見える『国際市場で逢いましょう』、いよいよ1週間後に公開です! 




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2 コメント

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どうぞお大事に (きたきつね)
2015-05-10 12:56:00
お風邪とのこと、この春の風邪は喉がやられ長引くようです(私も咳が取れるのに1か月以上かかりました)。
どうぞお大事になさってくださいね。
「国際市場で会いましょう」観たいと思っていました。今週末から札幌でも公開されるので、観に行きたいと思います。
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きたきつね様 (cinetama)
2015-05-10 16:21:53
お見舞い、ありがとうございます!
今朝、喉の炎症を鎮めるクスリを買ってきたので、これをあと1,2回飲めば少しは楽になるかと思います。
以前、よく3月の香港で風邪のため声が出なくなり、映画祭のオープニングパーティーで身振り手振りで話をしたりました。
ここ数年、そんなこともなく油断していたら、このザマです....。
手元に「京都念慈■枇杷潤喉糖」ののど飴があったので、大いに助けられています。今度は香港で大量買いしてこようと思います。

では、『国際市場~』楽しんで下さいね。
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