アジア映画巡礼

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TIFF&FILMeX:DAY 4 モノクロ作品『リンボ』のド迫力!

2021-11-02 | 香港映画

本日の目玉は、何と言っても鄭保瑞(ソイ・チェン)監督による香港映画『リンボ』でした。原題は『智齒』で、歯の「親知らず」のことです。劇中で主人公となる2人の刑事のうち、李淳(メイソン・リー/アン・リー監督の息子)が演じる若いけれど有能な上司の刑事が親知らずの痛みに苦しみ、ハードな捜査の合間にアスピリンか何かの痛み止めを山と飲む、というエピソードから題が取られたようです。もう1人の刑事はたたき上げのベテランで、こちらは少し長髪気味の林家棟(ラム・ガートン)が演じます。他の出演者も含め、皆さんの汚れっぷり&雨に濡れっぷり、それから痛めつけ&痛めつけられっぷりが特筆に値する作品で、流血シーンや遺体(やその一部)の出現シーンも多く、カラー撮影だとあまりに生々し過ぎる、というのでモノクロ作品になったのでは、と思われます。本編前の製作会社のロゴフィルムも全部モノクロになっており、B&Wのコントラストが際立つ作品でした。

『リンボ』
 2021年/香港/原題:智齒/英題:Limbo
 監督:ソイ・チェン(鄭保瑞)
 主演:ラム・カートン(林家棟)、メイソン・リー(李淳)、池内博之、劉雅瑟(チャー・リウ)
 配給:未定

©2021 Sun Entertainment Culture Limited. All Rights Reserved

雨期の香港。切り取られた左手が続けて見つかる、という事件が起きます。どちらも女性の手と思われ、担当となった刑事のラウ(劉中選/ラム・ガートン)と、その上司で赴任してきたばかりのエリート刑事ヤム(任凱/メイソン・リー)は、チームを率いて捜査に当たります。マネキンや事務椅子などが積まれた業務ゴミの中から女性の遺体が見つかり、これで身元がわかれば犯人の目星も、と思ったのも束の間、ラウは捜査の途中でワン・トゥオ(王桃/チャー・リウ)の姿を見かけます。彼女は2、3ヶ月前に出所したばかりで、更生を見守っている社会事務所からは「自動車修理工場で真面目に働いていますよ」と言われるのですが、ラウ刑事の勘にどこか引っかかってきます。実はラウ刑事とワンの間には、浅からぬ因縁があったのでした...。

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”実は”ついでに、ワンは物語冒頭にも登場するのですが、そのシーンが意味するものが観客にわかるのは、ずっとあとになってからです。そこに至るまでにワンを演じるチャー・リウは、何度殴られ、何度地面に叩きつけられたかわかりません。上手な演技なのかも知れませんが、どうも実際に殴られているような...。以前のTIFFで上映された『ファーストフード店の住人たち』(2019)では、薄幸の女性を演じていたチャー・リウですが、今予告編を見てみたら、この映画のプロデュ-サーはソイ・チェンだったので、それで今回の役に抜擢されたのかも知れません。映画賞ものの演技でした。

©2021 Sun Entertainment Culture Limited. All Rights Reserved

そして、こちらは『リンボ』のプロデュ-サー葉偉信(ウィルソン・イップ)がお気に入りの日本人俳優、池内博之も登場します。詳しくは言わない方が今後ご覧になる方にとっての見応えに繋がると思うので、上の画像から想像してみて下さいね。池内博之もまた、ガチのアクションシーンを繰り広げてくれて、見ているだけでも相当イタいです。ちょっと残念だったのは、池内博之が登場するシーンではセットの布置小道具が作り込みすぎというか過多すぎて、現実感を薄れさせてしまっていたことです。過ぎたるは及ばざるがごとし。香港映画は時々こういう装飾過多をやっちゃいますね。

©2021 Sun Entertainment Culture Limited. All Rights Reserved

警官のピストルも重要なエピソードの種になっていて、つい、林雪(ラム・シュッ)の演じる警官がピストルを紛失する『PTU』(2003)を思い出してしまいました。さて、配給さんが付くでしょうか? もう1回、11月6日(土)の12:35~ヒューマントラストシネマ有楽町での上映がありますので、香港映画ファンの方はぜひどうぞ。そうそう、今日のよみうりホールも結構いい入りで、香港映画への支持は今も熱い、と感じさせられたのですが、ご覧になった皆様、これがシネコンでの上映だったらなあ、と思われませんでしたか? よみうりホールは残念ながら映画上映には、特に1階席はNGでした。姿勢良く座ると後ろの人の視界を大いに妨げる(2割方見えない)ことになり、体を倒して見るには席が狭く、前後左右も窮屈で無理、と、今日の上映は2時間難行苦行でした。齋藤敦子さんのブログに掲載された市山尚三プログラミング・ディレクターのインタビューによると、来年は丸の内ピカデリーが改装を終えて復活するそうで、ぜひ映画専門の劇場を使っていただければと思います。

Dean Shek 20160409.jpg

それから、会場でお目にかかった丸目蔵人さんからは、石天(ディーン・セキ/上写真はWikiより)の訃報を聞かされてびっくり。『酔拳』(1978)ではジャッキー・チェンをいじめ抜く先輩、『男たちの挽歌2』(1987)では大ボス役と、たくさんの映画が印象に残っています。以前からガンを患っていたそうで、享年72はまだまだ早すぎる死ですよね...。おっと、最後に『リンボ』の予告編を付けておきます。香港でも現在公開中です。

《智齿》/ Limbo 曝光预告( 林家栋 / 刘雅瑟 / 李淳)【电影预告预告 | Official Movie Trailer】

 


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