アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

TIFF&FILMeX:DAY 5『永安鎮の物語集』と昨日のイラン映画2本

2021-11-03 | アジア映画全般

映画祭も中日(なかび)となりました。TIFFにとっては初めての有楽町ですが、いろいろ不便なこともあって、六本木が懐かしいと思うことがしばしばあります。この前写真でお見せした、有楽町駅前のチケット&インフォメーションブースもそうで、プレハブの階段を上がって窓口に行くのですが、窓口が低くて小腰をかがめるどころか、体を二つ折にして相対しないといけません。また、JRの高架に近いので、音がうるさくて聞き取りにくいことも多く、六本木の時はよかったなあ、とため息です。今日も右端のインフォメーション窓口で「TIFFのカタログはどこで買えるんでしょうか?」と聞いたら、宣伝用のプログラム冊子を出されて「これですか?」とえんえん何か説明され、腰をかがめているのがつらくて困りました。「買う」と言ったのですが、あのプログラム冊子がほしいと誤解されたようです。結局、チケット売り場の左端の窓口で買えることがわかったものの、一番端の窓口で売っていると言われてからまたえんえんと何か説明され、中腰のつらさをわかってくれい! と泣きたくなりました。ボランティアの人で窓口経験のあまりない人だったので、親切心からあれこれと説明が続いたのかも知れません。それにしても、あの窓口の設計はどうにかしてほしいです。

本日はフィルメックスで1本だけ見たのですが、ついでに昨日見たイラン映画についてもちょっと書いておきます。

『永安鎮の物語集』@東京フィルメックス
  中国/2021/123分/原題:永安鎮故事集/英題:Ripples of Life
 監督:ウェイ・シュージュン(魏書鈞)
 出演:ヤン・ツーシャン(楊子[女冊])、ホアン・ミーイー(黄米衣)、リウ・ヤン(劉洋)

湖南省の永安鎮に、映画の撮影隊がやってきます。彼らが泊まる宿泊施設の食堂では、中年の夫婦とその息子の嫁とが働いていますが、嫁は映画の撮影と聞いて赤ん坊の世話もおろそかになりがち。撮影隊から衣裳合わせのモデルを頼まれたりして、舞い上がっていきます。でも、主演女優が到着すると、みんなの注目は一挙に女優の方へ。永安鎮出身の女優は大歓迎され、幼なじみの男性と再会したり、いろんなイベントに顔を出したりして、「故郷に錦を飾る」状態になっていきます。でも、招かれて訪問した幼なじみの家では、彼の妻が嫉妬心半分、息子を映画に出させたい下心半分で女優に迫り、ついには女優はそこを飛び出してしまいます。そんな一方で、監督と脚本家はえんえんと製作論議をかわし、一体映画は出来上がるのだろうかと、見ている側にも不安がきざしてきます...。

3部構成になっていて、第一部が食堂の嫁編、第二部が女優編、そして最後の第三部が監督&脚本家編となっているのですが、第三部が長く、少々退屈してしまいました。第一部と第二部は「映画あるある」「主演女優あるある」がいろいろ出て来て面白く、その後に期待したものの、第三部が動きも少なくて盛り下がりました。フィルメックスの地方農村もの中国映画は、毎年秀作が登場するので今回も楽しみにしていたのですが...。でも、休日のせいもあってか客席の埋まり具合は上々で、少しホッとしました。

『砂利道』 @東京フィルメックス
 イラン/2021/93分/原題:/英題:Hit the Road
 監督:パナー・パナヒ
 出演:ハッサン・マジュヌニ、パンテア・パナヒハ、ラヤン・サルラク、アミン・シミアク

一家4人が、土漠地帯をドライブしていきます。オープニングシーンはウルミア湖付近で車が停まった状態で始まり、中年過ぎの夫婦と、20歳台の長男、そして小学校低学年の次男が紹介されていきます。何だか異様な緊張感が漂っていて、いったいどこに行くの? 何をしに行くの? と疑問に思いながらも、陽気でハイテンションな次男に振りまわされ、よく内容が見極められないまま物語は進行します。多分日本公開はないと思うので書いてしまいますが、長男がイランを出る決心をし、彼を国境近くまで送り届けて、出国組織に託す旅だったのでした。

あとのQ&Aでは、ジャファール・パナヒ監督の息子でもあるパナー・パナヒ監督(下写真)が、自分たち一家のことにも言及しながらいろいろ語ってくれました。達者すぎる子役の少年は小学校1年生で、まだ難しい言葉も多い脚本は読めず、母親に読んでもらってセリフを憶えてきたのだとか。演技の勘も非常によく、たびたび監督を驚かせたようでした。また、劇中でいろんな歌が出てくるのですが、ほとんどがイラン・イスラーム革命前の曲だそうで、実際にイランの人は今もよく聞いているそうです。また、「車の中」という特殊な空間がイランにおいてどういう意味を持つのかという面白い発言もあり、活字化されて公式サイトに掲載された暁には、ぜひ読んでいただきたいQ&Aでした。


『世界、北半球』@東京国際映画祭
 イラン/原題:/英題:World, Northern Hemisphere
  監督:ホセイン・テヘラニ [حسین تهرانی]
 出演:レザ・ショハニ、メーラン・アタシュザイサイデー・アルバジ

冒頭、割と大規模な青空バーザールで、鳩を売っている少年アフマドが登場します。隣の店は鶏屋で、そこの親父とケンカしたりしながら、アフマドは商売を続けます。アフマドの父は亡くなり、母と姉、そして妹がいるため、母が農作業をして収入を得ているものの、4人分の生活費を稼がなくてはならないのでした。姉はまだ14歳なのに、従兄弟で年が10歳以上離れているネマドが姉と結婚したがっており、何かとアフマド一家のことに口を出してきます。姉はもちろん結婚の意思はなく、母も「まだ早すぎる。結婚話は2~3年待って」と言いますが、ネマドは強引に長老達を連れてきて、婚約式を挙行しようとまでします...。

土地から武器の破片が出て来たりする地方なので、イラン・イラク戦争を経験した南部の地方では、と思います。母親役がすごく老けていて、最初祖母かと思ったぐらいでした。厳しい生活環境が影響して、女性を老けさせてしまう、ということを見せたかったのでしょうか? この疑問始めいろいろ引っかかるところがあり、よくわからないまま見終わった作品でした。

明日は『ジャッリカットゥ 牛の怒り』のリジョー・ジョーズ・ペッリシェーリ監督の新作『チュルリ』が見られます。さて、どんな作品なのか、楽しみにしています~。


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