かいじゅうたちのいるところ
注意*完全ネタバレ*
パッケージの怪獣の表情が
もう なんとも言えない。
ちょっと切ない感じに惹かれる。
と言うわけで観た。
この作品は、
骨に染みるような重さを持って、
あたしの中をずっと、苦しくさせた。
それから何だか優しくも。
名作でしかない。久々に喰らった。
主人公のマックスは子供。
彼にしか理解できない孤独を持ってる。
かまってほしいが、素直にもそれを表現できないし、結局人を困らせて、ちょっと自分でも苦しそう。
最初の映画のタッチから見るマックスは、『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』を思い出す。
孤独が深そうな子だな、と。
部屋に飾ってる船にマックスの名前がある。父から贈られたようだが、この家には母親と姉だけ。
母親が友人と言って連れてきている男の人が気に入らない。
自分の事を母親がかまってくれないから。それだけだろうか?そうは思えない。父以外の人がいるのも嫌なのではないか、と思ったりもする。
原作を知らないからわからない。
原作は絵本らしい。
物語は、ここから。マックスが母親を噛んで怒られる。そのショックで家を飛び出し、彼は
かいじゅうたちのいるところへやって来るのだ。
かいじゅうたちは、見た目は様々で、性格も個性的。そしてすんごくでかい。
そのうちのキャロルと言う怪獣が、暴れている。どうやらキャロルは、ブチ切れてみんなの家をぶっ壊しているようだ。
みんなはキャロルにただただ迷惑しているが止められず手をこまねいている。
キャロルの怒りは悲しみだ。
だけどだれにも理解できない。
そのキャロルに時折垣間見える孤独が、キャロルの悲しみが、自分と重なったのだろう。マックスはこっそり覗いてた場所から出て行って、キャロルと一緒に家を壊し始める。
そうこうして怪獣の王様として、マックスはみんなに迎え入れられた。
マックスはみんなとずっとここで遊んでいたいしみんなもそうだ。
キャロルと友達になり、大きなみんなの家を作ったり、泥だんごの戦争ごっこをして遊ぶ。
キャロルには大好きなKWと言う女の子の怪獣がいる。でもキャロルは相変わらずで、KWも周りを傷つけてしまう。
キャロルの勝手さは、マックスと同じで、そしてキャロルもマックスも、そうしたいわけではないのに、そういう風な自分をコントロール出来なくて苦しいのだ。
普通に周りと合わせることが、キャロルもマックスも出来なくて、勝手になってしまう。結果、自分が一番辛い。
この怪獣のいる世界は永遠のように続いていく。けれど、楽しい事ばかりではない。キャロルの事が原因でみんなが、苦しくなったり、どうやったらうまく行くのか、わからないで落ち込んだりする。マックスは彼らと一緒に考える。
そうしていく事で、マックスの心が徐々に成長していく。
かいじゅうたちが成長させていく。
そしてマックスは 家に帰ることに決めた。現実に戻るのだ。
お別れの日、キャロルと喧嘩をしていたマックスはみんなに見送られて船に乗る。するとキャロルが泣きながら走ってくる。お別れの気持ちは言葉にもならない。
ただ、キャロルは遠吠えを繰り返した。
みんなもマックスも。
前に遠吠えをして遊んだ日のように。
それからマックスは心配して待っていた母親のもとへと帰ってくる。
そんなお話。
キャロルとマックスは同じ。
この後、マックスは大人になっていくだろう。おそらくマックスの場合は、うまくやる方法を知り、世界と折り合いをつけて生きていくかもしれない。しかし出来ずに作家か何かになるかも?
キャロルは多分変わらない。
キャロルはちょっと、暴れない程度にマシになるかもしれないが、勝手さは多分ずっと同じ。だって、そうじゃなきゃキャロルじゃないもん。
あのかいじゅうたちのいるところは、マックスの想像の世界ではなく、子供が行く事の出来る世界なのかもと思えた。
出来なくて辛い人は出来る人の何倍も優しいかもしれない。ちょっと繊細なのかもしれない。
あたしは優しさも繊細さもなく、ただただ勝手なのだが、二人の寂しさは心に刺さる。
でも、マックスには家族がいて、キャロルには仲間がいる。だから大丈夫。
マックス目線だと、とてもキャロルの欠点が目につきやすいのかもしれないが、もっとキャロルには他に魅力があるのだろうな。だから結局仲間がいるのだろう。
ある怪獣は、泥だんごの戦争ごっこの時に傷を負った。その傷が本当に痛そうで辛かった。
とても素敵な映画だった。
なんども泣きそうになった。
曲も最高に良かった。