チョコレートドーナツ
*完全ネタバレ*注意
ゲイであるカップルの二人が主人公。
「ベルベットゴールドマイン」のような垢抜けたゲイの世界ではない。
70年代、今よりさらに偏見が当たり前の時代で、堂々とゲイであるルディと、密かにそうであるポール二人が出会い、母親から冷遇され放置されているダウン症の男の子マルコが二人と一緒に暮らし始めると言うストーリー。
ショーガールのルディは、歌手を目指していて素晴らしい歌の才能がある。性格は堂々と自分を貫くタイプで、本物の女性よりも女性だった。この人の包容力はまるで女性のものだし、ホッとする。男性、女性関わらず、みんなが魅了されてしまうだろうって思うような魅力的な人物で、この人の存在が、映画に引き込んでくれる。
一方、ポールはのちにカミングアウトするも最初は隠していた。弁護士だし雰囲気も女性から持てそうなタイプ。
マルコはルディのアパートの隣に住んでいて、こんな幼い子が親から冷遇されている事に心を痛めて、一緒に過ごすようになる。
これは、実際にあった話らしい。
結果から言うと、非常に重い話。
ただルディの明るさや、ポールと二人一生懸命で、マルコもいて、見るのが辛い重たさではない。
ポールがルディと付き合い始めたころ、弁護士がポールはゲイであると気づき、早速嫌がらせを始める。まずポールをクビにする。
さらに、二人が、マルコと一緒に暮らしている事を問題にし始める。
マルコは、二人と一緒に暮らして本当に幸せで、毎日が楽しくて、ずっと笑顔。
マルコの親は麻薬で刑務所だったので、親が戻るまで自分たちが面倒を見るという事を、親に直接許可ももらっている。
ただのクソ親父の偏見が、この人たちの人生をめちゃくちゃにし、しまいには、マルコの親に、二人からマルコを返すよう言えば刑務所から出すとまで取引し、結果的に、マルコは二人から引き離されて、母親の元へ。
だが母親は出てきて早々に麻薬に浸り子供を放り出す。
マルコは家を探しさまよい、死んでしまう。
最後には、ポールが、嫌がらせをやった連中らにマルコが死んだという知らせを送る。
歌手を目指していたルディは、見事歌の仕事についている。
彼の歌がとても深い悲しみを歌う。
これが事実なら、嫌がらせをやった連中らも母親も人殺しだろう。
ゲイに嫌がらせをすることが、何か良い事でもやってるつもりなのか、自分が嫌だから排除すると言う典型的な悪者。
偏見が人を殺している。
どうしてゲイだとかで、いちいちブツブツ言う奴がいるのか?不可思議。
人が誰を好きになるかなど他人に口を出す権利はない。あたしは異性愛者で、今の彼が好きだけど、その事を口出されたら許せない。
誰もが自分の愛する人の罵倒など寛容ではいられないはずだ。
それなのに自分が誰かを愛するくせに人にケチつけるなんて信じられない。
キリスト教の右派とかはゲイを禁止したいって言う。もちろん彼らの自由だろう。けれどまあ、キリスト教の神というのは、そんなにも不寛容なのですか。
確かイエスって、愛を説いたのではないの?矛盾しない?
そういえばアフリカのとある国へ向かった宣教師が、ゲイはくそったれだと説いて、その国の人たちに教えたから、その国は愚かにも、ゲイを法律で禁止することにしたっていう最近の話もあった。
一体何様だろうかと思う。
ゲイであることが駄目だとか言って人を差別して、そういうことをやりなさいと神に言われたのか?キリスト教という宗教のイメージを著しく害してるんでは。
もはや、ゲイだのなんだのを、ごちゃごちゃいう暇はない。だって人はそれぞれ違っていて、勝手な解釈を押し付けられて人権を冒涜するような世界ではなくなっているからだ。
そもそも、人と違うと駄目だとか言う考えも理解できないものだ。
たぶん、キリスト教がとか言い訳してるだけな気がする。と言うのは、不寛容すぎるからだ。そんな寛容さのない神が世界中で信じて貰えるわけがない。きっと、神が寛容なのに気付かないということもありえるのだろう。
だってキリスト教が禁止しているというなら、世界のキリスト教の国はすべて禁止になってるはずだからだ。
宗教を差別の理由にしてはいけない。
人は所詮人だし、キリスト教の教えを守るのは自由だけど、他人がそれを押し付けられるならば、あなたの権利も認められない。
他人の権利を認めなければ、己の権利も認められない。
さらに、ただたんに偏見で、こんな風に結果子供を殺すことになる連中ら。
嫌いでも構わない。が、普通、そこまで嫌いなら無視するのではないか。
わざわざ嫌がらせをする意味がわからない。それでは一生不幸になる。
どんな音楽が好きかとか、どんな映画が本が、理想が、男性が、とかいちいち人に指図されることじゃない。
偏見をむきだしにするものたちは視野が狭すぎて、根暗すぎて、ただ気持ちの悪い嫌な人以上になり得ないだろう。
この映画のラストは確かに衝撃的だし、重い話だし、どうして子供が犠牲になるのか、本当に許せない気持ちになる。
でもこの映画は、すごく必要とされる映画であるに違いない。
みんなが見た方がいいと思うような映画。
そういう意味で素晴らしい作品だった。