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ロートル技術屋の日記

3Dプリンターのスイッチング電源S-360-24の修理 NTCサーミスタ交換 Tronxy XY2 PRO

3DプリンターTronxy XY2 PROの電源が入らなくなりました。
前触れとして少し焦げ臭い匂いがしたのと搭載されているマイコンが再起動を繰り返していました。
電源の電圧が安定していない時の症状なのでスイッチング電源関係の故障が疑われました。

購入前、機種選定をしているときに当該機種に電源スイッチが焦げるという症状があることを確認していました。
また、3Dプリンター全般の話としてスイッチング電源が壊れるという話がありました。

そこで電源周りを調べることにしました。
電源部は本体の下側に収納されているので横倒しにして電源スイッチを調べました。
電源スイッチはファストン端子で接続されていたので事前に写真を撮って配線状況を記録してからファストン端子を外しました。
電源スイッチとインレットが一体となっているものを外してから、はめ込みになっている爪を時計ドライバーのマイナスドライバーを押し込んで電源スイッチを外しました。

下側の端子に取り付けてある保護用のビニールカバーが茶色く変色していました。(反対側を撮影すれば良いのに...)

スイッチは簡単な構造で赤いシーソーボタンが軸ではまっているだけでした。
外枠を広げるとシーソーボタンが外れて中にU字型の金具が2つ入っていました。


シーソーボタンでU字型の金具を押すことでON/OFFしているようです。
接点部分が少し黒くなっていたのでやすりで磨いて元に戻してみましたが、電源は入りませんでした。
スイッチが原因でないという事はスイッチング電源の故障という事になります。

スイッチング電源の故障も購入前の機種選定段階で情報を得ていたのでNTCサーミスタの故障だろうという予測が付きました。

サーミスタは温度で抵抗が大きく変化する素子で名称は英語の thermal(温度) と resistor(抵抗器) を組み合わせた造語です。
この現象は1833年、有名な科学者マイケル・ファラデーによって基本原理が発見されたそうです。
温度が上がると抵抗が増えるサーミスターをPTCサーミスタと呼び、抵抗が減るサーミスタをNTCサーミスタと呼びます。
(NTC:negative temperature coefficient「負の温度係数」、PTC:positive temperature coefficient「正の温度係数」)

PTCサーミスタは温度測定用のセンサーとして良く使われています。
NTCサーミスタは保護回路に使われることが多いです。
NTCサーミスタの中で大きな電流を流せるものをパワーNTCサーミスタ、パワーサーミスタと呼ぶことがあります。
スイッチング電源の入力部分にNTCサーミスタが使われることが多いです。
スイッチング電源は交流の入力電力を一旦直流の電力に変換した後、高い周波数でON/OFF(スイッチング)してトランスで変圧し直流に変換して所定の直流電力を得ています。
高い周波数でON/OFFすることで効率よく直流電力が得られるようになっています。
最初の交流の入力電力を一旦直流の電力に変換するところに大きなコンデンサーという電気をためる部品が使われています。
電源入れる前はコンデンサーに電気がたまっていないため、電源スイッチを入れた瞬間に突入電流というものすごく大きな電流が流れることになります。
場合によっては家庭のブレーカーが落ちてしまうことがあるくらいです。
突入電流を防止するためにNTCサーミスタが使われます。
NTCサーミスタは温度が低い時は抵抗が高いので電源スイッチとコンデンサーの間に入れておくことで突入電流を減らすことができます。
電流が流れ始めると温度が上がって行きNTCサーミスタの抵抗が低くなって回路としての影響が小さくなるのと発熱も小さくなります。

たとえるなら、川で水門によって堰き止められていた水があったとして、水門を一度に全開すると一気に大量の水が流れてしまうのを、徐々に水門を開けてゆっくり水量を増やしていくというような動作をさせるのがNTCサーミスタです。

NTCサーミスタが壊れると電源が入らなくなってしまいます。

Tronxy XY2 PROに使われているスイッチング電源はS-360-24という型番でした。


Tronxyブランドになっていますが物自体はこちらと同じように見えます。
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分解してみたところ予想通りNTCサーミスタが壊れていました。



黒い丸形の部品がNTCサーミスタです。
焦げている反対側で5D-15という型番が読めました。


ネット上に情報がいくつかあったのですが、もともと取り付けられている部品の正確な情報が無かったので型番が読み取れたのは幸いでした。
最初の「5」が25℃での抵抗値5Ωを表していて後ろの15は素子の直径を表しています。
5D-15以外でも5D-18、5D-20などの素子サイズが大きいものであれば使えると思いますが、安定してからの温度が上がらず抵抗値が下がりきらなくなり、かえってNTCサーミスタ自身が発熱する可能性があります。
また、電気用品安全法では同じ規格の部品交換修理は認められていますが違う部品への交換は改造になり認められていませんので同じ規格の物を使うべきです。

アマゾンで探したところ、オーディオファンというところの5個セット680円がPrimeの翌日配送で最安だったので購入しました。


到着したものに交換してみたところ無事に動作するようになりました。

同様の修理をネットで公開している人の中にNTCサーミスタのことをPTCサーミスタやバリスタと表記している人がいます。
PTCサーミスタは完全な間違いです。
バリスタは雷などの異常な高電圧から電気製品を保護するための素子で雷ガードなどに入っているものです。
AC100Vよりも高い電圧がかからないと電流が流れません。
バリスタをNTCサーミスタの代わりに取り付けると電流が流れないのでスイッチを入れても動きません。
バリスタを買ってはいけません。
アマゾンでもNTCサーミスタをPTCサーミスタ、バリスタなどと間違った表記しているものがありますのでこれらは選ばない方が無難だと思います。

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