倉敷出張は装置のメンテナンスが仕事でした。
うまく測定できていないという連絡があり、納入後10年以上経過しているのでメンテナンスとして費用をいただく形で調査することになりました。
光を使って測定する装置で、確実に信号がでる測定用サンプルを持参し測ってみたところ確かにうまく信号が出ませんでした。
カバーを開けて中を確認するとレンズ類のあちらこちらに埃が積もっていました。
最悪だったのがカビが生えていたところでかなりひどい状況でした。
お客様に状況を確認していただいてクリーニングすることにしました。
埃は除去可能でしたが問題はカビです。
まず、マニキュアのように塗って剥がすタイプのクリーナーでクリーニングしてみましたが全く取れませんでした。
カビは取れませんでしたが表面に付着しているかもしれない細かな砂などの固いものは除去できたと判断しました。
(砂などの固いものがある状態でこするとレンズに傷がついてしまいます)
そこでアルコールで少し強めに拭いてみましたがびくともしません。
なにか方法はないかと考えて、昔、ガラスの研磨を教わった方が言っていたことを思い出しました。
「油分はアルコールやアセトンで落ちる。塩分は水で落ちる」という話です。
油分は水では落ちず、塩分はアルコールでは落ちないと教わりました。
アルコールに水は溶解しますが、濃度の高いアルコールは周りから水分を奪います。
水分を奪うことで菌類の細胞膜を破壊し死滅させることができるので消毒に使われるわけです。
カビも細胞があるので水分を奪われると細胞膜だけになり落ちないのではないか、水分を与えると細胞膜が柔らかくなるかもしれないと考えました。
しかし、アルコールは持参しましたが水はありません。
レンズ類を清掃するときに息を吹きかけて結露で曇ったところを拭く(水分で拭く)という作業をしていますのでこれをやってみました。
するとアルコールではびくともしなかったカビが少し落ちました。
予想が当たったようです。
息を吹きかけては拭き取るという作業を数十回繰り返しカビをすべて除去でき、本来の性能を取り戻せました。
カビの除菌というとアルコールを使うという先入観があったので本当に「目から鱗が落ちる」とはこのことでした。
最近はスマホで簡単に写真が撮れるようになったのでカメラを使う機会が減っています。
私が若いころは一眼レフカメラを持つことがある種のステータスになっていました。
使わずに押し入れなどに入れたままにしておくとなぜかレンズにカビが生えてしまいます。
レンズに生えたカビを除去する際、アルコールで取れない場合は水で拭いてみると取れるかもしれないので試してください。