何よりも君の死を恐れ、誰よりも君の死を望む。
■監督 ベネット・ミラー
■原作 ジェラルド・クラーク
■脚本 ダン・ファターマン
■キャスト フィリップ・シーモア・ホフマン、キャサリン・キーナー、クリス・クーパー
□オフィシャルサイト 『カポーティ』
1959年11月15日。 カンザス州ホルカムでクラッター家の家族4人が、
惨殺死体で発見される。 翌日、NYで事件のニュース記事を見た作家
トルーマン・カポーティ(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、これを次の小説の
題材にしようと決心。 ザ・ニューヨーカーの編集者ウィリアム・ショーン
(ボブ・バラバン)に話を持ちかけたカポーティは、幼馴染みで彼の良き理解者の
女流作家ネル・ハーパー・リー(キャサリン・キーナー)を伴い、すぐさま現地へ向かう。
小さな田舎町は前例のない残酷な事件に動揺していたが、やがて2人の青年が
容疑者として逮捕された。 カポーティは事件の真相を暴くべく、拘留中の彼らに
接近していく。
おススメ度 ⇒★★★ (5★満点、☆は0.5)
cyazの満足度⇒★★★☆
第78回アカデミー賞においてフィリップ・シーモア・ホフマンが主演男優賞を
受賞した作品が本作だ。
すでに作家としての地位も名誉も手中に収めた超セレブのトルーマン・カポーティ。
今でこそセレブの間では当たり前となったプライベートジェット機で世界を飛び回る
ことは、当時彼はセレブ中のセレブで、彼はこのジェットセットの“はしり”だったそうだ。
カンザス州の田舎町で起きた一家4人惨殺犯のふたりに接近し、彼らへの取材を重ね、
カポーティはノンフィクション小説「冷血」を書き上げた。
映画の冒頭から気になるのはキザな態度と高い特徴のある声だ。 すでに名声を
勝ち得て比較的やりたい放題だったカポーティだが、実際のカポーティがこんな感じ
だったのかどうかはわからない。 しかしホフマンは徹底的にカポーティを研究し、
映像にあるカポーティを作り出していた。
カポーティを検索していて見つけた写真の中にはメガネをかけて澄ましている
表情はホフマンが演じるカポーティに似ていたかもしれない。
彼はこの事件の取材のためには、いたるところでありとあらゆる金とコネクションを使う。
犯人とのつかず離れずの距離の置き方には、自分がミイラ取りがミイラにならない
ように接していたようにも思える。 それは彼が堂々とゲイだと公表していたところにも
起因すると感じた。
それはこの映画の主軸に据えている、この事件の小説化にあたり、死刑囚となった
犯人のうちの一人、ペリーだった。 取材を積み重ねていくうちにカポーティとペリーの
間にはお互いの立場を越えたところで、純粋に心を通わす。 しかし、死刑執行が
延期になったところから、ペリーが死刑にならなければ小説は完成しないことに
苛立ちを感じながらも、表面上は冷静さを装いながら、揺れ動く心の襞を、上手く
表現していた。 このところが、単に外見だけでなく、心理的な表情までも演じていた
ところがオスカーの評価にも繋がったんだろう。 時折、眼鏡の奥で光る目は心を
通い合わせた温かい目と、小説家としての厳しい目をスクリーンに映し出していた。
カポーティは12歳の頃に、学校の校長から低能児呼ばわりされ、東部の大学で
IQ(知能指数)を調べたさせたらしい。 そのIQ、なんと215だったそうだ。
また彼の悩みがひとつは背が低かったこと。 その身長は160cmそこそこ。
彼の作品を読んだことはないが、このコンプレックスはかなり根強かったらしく、
作品の中の男たちを小さくすることで解消していたようです。 男性が主人公の
場合はたいてい皆ハンサムなのに背が低い。 そして女性は好きだが、男性も好き。
自身がゲイだと堂々と表明した。
上流社交界にも興味津々で、彼の劇中でも見せる巧みな話術は、怖いものなしと
言ったところ。 たちまち社交界でも売れっ子になったという。 時に度を越して
社交界の裏ネタを今流の暴露本として公表したりして顰蹙を買っていたこともある
という。 そしてやがては社交界から締め出されてしまう。
「冷血」を完成させた後、彼は一冊の本も完成させることはなかった。
余談だが、『ティファニーで朝食を』の試写での出来事。
「ニューヨークで暮らす私は、バーで写真を見せられた。
アフリカの青年が持つ木の彫刻には、懐かしい人の面影があった。
ホリー・ゴライトリー。 彼女は今、どこにいるのだろう。
なにものにも縛られず、自由に生きていたあの女性は。 」
カポーティのイメージしたホリーは、友人でもあり、あこがれの人でもあった
マリリン・モンローだったとか。 それだけに、映画はカポーティにとって失望だった
ようです。 たしかに、育ちもよく、健善で陰のないオードリー・ヘップバーンは、
カポーティの世界の人ではありませんね。 ティファニーショップの前でヘップバーンが
パンを食べるという短絡的解釈の映画の冒頭シーンで、観ていたカポーティが椅子
からずり落ちてしまったのは有名な逸話。
このキャスティングに関し、カポーティはマリリン・モンローを主人公のホリー・ゴライトリーの
化身のように考えていた。 それでもカポーティはヘップバーンに手紙を書いて、彼女が
キャスティングされたことへの喜びを示している。 それは少し前に買った「オードリー・
ヘップバーン・トレジャーズ」に自筆コピーで紹介されていた。
カポーティの書簡 「オードリー・ヘップバーン・トレジャーズ」
キャサリン・キーナーやクリス・クーパーももちろん芸達者だが、この強い個性である
人間カポーティを演じるフィリップ・シーモア・ホフマンには脱帽だったことだろう。
ちなみに、
第78回アカデミー賞
◎主演男優賞 フィリップ・シーモア・ホフマン
<ノミネート作品>
テレンス・ハワード(「Hustel & Flow」)
ヒース・レジャー(『ブロークバック・マウンテン』)
ホアキン・フェニックス(『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』)
デビッド・ストラザーン(「グッドナイト&グッドラック」)
◎主演女優賞 リース・ウィザースプーン(『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』)
<ノミネート作品>
ジュディ・デンチ(『ヘンダーソン夫人の贈り物』)
フェリシティ・ハフマン(『トランスアメリカ』)
キーラ・ナイトレイ(『プライドと偏見』)
シャーリーズ・セロン(『スタンドアップ』)
やっぱ主演男優賞はホフマンで良かったのかなぁ~
主演女優賞は今年上期はシャーリーズ・セロンと思ったが、この間観た
『トランスアメリカ』のフェリシティ・ハフマンにあげてもいいと思った。
『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』は
未見ですが、私もフェリシティ・ハフマンに
あげて欲しかったなぁ。
主演男優賞は文句なしです。
>『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』は未見ですが、私もフェリシティ・ハフマンにあげて欲しかったなぁ。
そうですよねぇ^^ あの演技は比較できないものがありました!
>主演男優賞は文句なしです。
同じく~^^
「カポーティ」の映画の中でもマリリン・モンローについての会話がありましたね。
「ティファニーで朝食を」は私の頭の中ではオードリーしか考えられないのですが、マリリン・モンローだとまた映画の雰囲気が違ったのでしょうか。
観てみたい様な気もします。
>「カポーティ」の映画の中でもマリリン・モンローについての会話がありましたね。
そうでしたね^^
>「ティファニーで朝食を」は私の頭の中ではオードリーしか考えられないのですが、マリリン・モンローだとまた映画の雰囲気が違ったのでしょうか。
観てみたい様な気もします。
そうですね! ホリー・ゴライトリーのモンローってもっと色っぽい感じだったかも(笑) でもやっぱヘップバーンですよね!
TBありがとうございました。
PSHのなりきりぶりはすごかったですね。
作家というのは 大変な仕事なんだなぁ・・・と
改めて思った次第です。
”男前”なキャサリン・キーナーも素敵でした。
>PSHのなりきりぶりはすごかったですね。
ほんとオスカーの価値ありでした!
>”男前”なキャサリン・キーナーも素敵でした
なるほど^^ 男前でしたね(笑)
アメブロで「★試写会中毒★」を書いてますmichiと申します。
只今、gooサンへ一切のTBができなくなってしまい、
更に、URLを載せてもエラーとなってしまうため(コメント覧へのURL表示もエラーになってしまいます 泣)、URLナシでこちらへコメントさせていただきました。
申し訳ありません。。。。
本作品、人間誰もが多少なりとも持っている「偽善」ということがテーマだったので、
ずっしりと重いものがありました。。。
ホフマンのM:i:Ⅲとは全く別人の演技にも驚きです。
暗い気分の時には、観ちゃいけない映画かも。。。と思ってしまいました 笑
また遊びにきますね~★
今後ともよろしくお願いいたします。
>gooサンへ一切のTBができなくなってしまい、
更に、URLを載せてもエラーとなってしまうため、URLナシでこちらへコメントさせていただきました。申し訳ありません。。。。
お手数おかけいたしましたm(__)m
最近何だかどこも不調なようで、こちらからもTBが入らないことが多く全くgoo(グー)ではありません。
>ホフマンのM:i:Ⅲとは全く別人の演技にも驚きです。暗い気分の時には、観ちゃいけない映画かも。。。と思ってしまいました 笑
そうですね! M:i:Ⅲでもトムを食った演技でしたが^^
>今後ともよろしくお願いいたします。
いえいえ、こちらこそよろしくお願いいたします!
この頃、gooブログは、コメント欄の自分のURLの
オートコンプリート機能が効かないですが私の
PCがおかしいのかな^^
>時折、眼鏡の奥で光る目は心を通い合わせた温かい目と、小説家としての厳しい目をスクリーンに映し出していた。
おお~~~唸る表現です。
それと、背にコンプレックスあったのね~~やっぱり
ロング・コートがロング・ドレスみたいで変なのに
意地でも着込んでいるような気がしました^^
>それと、背にコンプレックスあったのね~~やっぱり
確かに強度のコンプレックスでしたね!
>ロング・コートがロング・ドレスみたいで変なのに
意地でも着込んでいるような気がしました^^
背が低いと似合いませんよね(笑)