京の昼寝~♪

なんとなく漠然と日々流されるのではなく、少し立ち止まり、自身の「言の葉」をしたためてみようと・・・そんなMy Blogに

『アジアンタムブルー』

2006-12-04 | 邦画


あなたがくれた、いちばん美しい時間

 

 




■監督 藤田明二
■脚本 神山由美子
■原作 大崎善生(「アジアンタムブルー」角川文庫刊)
■キャスト 
阿部 寛、松下奈緒、小島 聖、佐々木蔵之介、村田雄浩、小日向文世、高島礼子

□オフィシャルサイト  『
アジアンタムブルー

 成人男性向け雑誌の編集者の山崎隆二(阿部 寛)は、新進カメラマン・続木葉子(松下奈緒)と出会う。 SM女王ユーカ(小島 聖)のヨーロッパ撮影企画を、エロ写真の専門でない葉子に、というユーカからの紹介があったからだ。 しかし、エロ雑誌に芸術は必要ないと考える編集長・沢井速雄(小日向文世)の判断で、葉子は落選する。 しかし隆二は、別の撮影で予定のカメラマンが急遽不在となったため、葉子に撮影を依頼することになる。 撮影後の通り雨でできた水溜りで、葉子は隆二を被写体に写真をとる。 「ほんとの世の中よりも、水に映った世界のほうがきれいでしょう?」 その写真の透明感と葉子自身の不思議な存在感に、我知らず癒されていく隆二だった。


 おススメ度 ⇒★★★ (5★満点、☆は0.5)
 cyazの満足度⇒★★★☆



 まるで赤い糸で結ばれていた二人が、出会うべくして出会う愛もあれば、偶然が偶然を招いて実る愛もある。 この映画がどっちなのか、それは観る方の判断でいいように思う。

 一時、書店に平積みしてあった大崎善生氏の原作「アジアンタムブルー」を走り読みしたことがある。 そのときは、さわりだけだったのであまり印象に残らなかったのだが、あらためて映像にされてみるとなるほどと思える部分は多かった。

 人は誰も少なからず心に傷を持つ。 そしてそれは他人には決して介入して欲しくない部分でもある。 だけで時に直接そこに触れるのではなく、いつしか自分のほうから自然に心開いているときがある。 この映画の柔らかい部分は、きっとそんな一部分を拡大映像にしているかのようだった。 

 主役の阿部 寛はこういう孤独で寡黙な役柄は合っていると思う。 もちろんコメディタッチなものも十分こなしてしまう彼だが、他人の介入を阻止するような雰囲気もどこかに合わせ持っているような気がする。 人生を投げているわけではないが、夢を持って前向きに生きていない男が、友人と友人の奥さん(これも友人)との間のトライアングルを潜りながら、やっと自分の居場所に気付く。 愛する人のために死ねるかどうかは別として、少しでも最期まで同じ目線と彼女の温かさを感じていたいという想いはわからなくはない。

 松下奈緒が演じる葉子も不思議な写真を撮るどこか偏った女性だった。 しかし隆二と知り合い、表面とは全く違う温かさに惹かれていく。

 奈緒ちゃん自体、背が高いので、今までのトレンディドラマの相手役は並んだりするとそのバランスが悪かったが、
阿部 寛が背が高い分、恋する女性の目線にピッタシあっていたように思う。 初めてなんだかフィットするサイズのような気がした。

 そして、彼女の才能であるピアノを自ら演奏していること。 演じる人が実際にその映画の音楽に携わることは魅力的なことだと思う。 あるTVの音楽番組で奈緒ちゃんのピアノを聴いたことがある。 ルックスがいい上にピアノを上手に弾かれたら、酔ってしまうのも仕方がないところだ。 役柄に入り込み、その心情をピアノに乗せて・・・それは思ったよりも情感のあるものに仕上がるに違いない。

 この映画の
主題歌(「FLAWED~埋まらないパズル」)を歌うデルタ・グッドレムは、若くしてホジキン病という病倒れ、しかしその病を克服して奇跡的な復活を遂げた経験の持ち主だ。 奇しくも葉子と同じように環境にあったというのは何とも巡り合わせの妙だろうか。 その素晴らしく力強い“生”を感じるバラードは心地よい。

 「“アジアンタム”とはシダ科の観葉植物。涼しげにハート型の葉を揺らすその姿は若い女性に人気だが、枯れはじめると手の施しようがない、そんな繊細さを持つ。その状態は“アジアンタムブルー”と呼ばれるが、ごくまれにその“憂鬱”を抜けだし、再び青々とした葉を茂らせることがあるという。」 と、オフィシャルサイトには書かれてある。 この映画では葉子の人生と隆二の人生を比喩しているのだろうが、
特に大きな起伏がある映画ではなかったものの、こんな気持ちにもしかしたら自分の愛する人が死を宣告されたらなるかもしれない感はあった。 

 水溜りに映った被写体しか撮らない葉子の写真に興味が持てた。 普段日常の表情もワンクッション入れることでその表情は変わるもの。 例えば庭園などの池に写りこむ木々や花たちも。
 これはカメラマンの矢部志保さんの作品だそうだが、他にも人物ポートレイト、舞台写真、旅行写真などで活躍されているとサイトには書いてあった。 ちょっと気になる写真家さんだ。

 「あいつ、土踏まずみたいだったな。 裸足で歩いても、そこだけ汚れないみたいな。」
 上手い表現で、そんな人に出会ってみた気がする。

 最期の土地に選んだ
ニース。 美しいその港町の風景や風の匂いは、観ている側にもそれを感じさせてくれる優雅さがあり印象に残る。
 もし余命短いことを宣告されたなら、選択肢のひとつとしては考えてみたい風景だ。




 


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6 コメント

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TBありがとうございました。 (hal)
2006-12-06 08:19:05
小説からの私のイメージでは葉子は小柄な女性だったんですが、阿部寛とのバランスがとってもよかったので、見ていてすぐになれました。
松下奈緒さんはとてもキレイでよかったのですが、後半もう少しやつれた演出がされればよかったと思いました。
返信する
なるほど~ (cyaz)
2006-12-06 08:41:24
halさん、TB&コメントありがとうございますm(__)m

>小説からの私のイメージでは葉子は小柄な女性だったんですが、阿部寛とのバランスがとってもよかったので、見ていてすぐになれました。
原作は未読なので葉子についてはわかりませんが、二人の背丈が合っていたことは間違いないところですね(笑)

>松下奈緒さんはとてもキレイでよかったのですが、後半もう少しやつれた演出がされればよかったと思いました。
確かにもう少しギャップは欲しかったところですが、あのニースの景色でエンディングを迎えるためにはあのような感じで良かったのではないかと思います。
返信する
やつれ具合 (MASH)
2006-12-06 14:41:21
こんにちは。
僕も最初に映画を見終えた時には、あまりやつれてないのに死んでしまったな。。と思ったんですけど、その前の二人が愛を確かめ合うシーンでは、十分やせ細った印象はあったし、何よりもことさらに悲劇性を増す演出ではなく、ニースの美しい景色と共に、淡々と二人の心情を表現しようとする演出を感じて、やはりあれで良かったのだと思いました。
映画を見終えてから原作を読み返すと、また印象が変わりますよ。(^-^)
返信する
ですね~ (cyaz)
2006-12-07 08:41:47
MASHさん、TB&コメントありがとうございますm(__)m

>何よりもことさらに悲劇性を増す演出ではなく、ニースの美しい景色と共に、淡々と二人の心情を表現しようとする演出を感じて、やはりあれで良かったのだと思いました。
そうですよね^^ 仰る通りだと僕も感じました。
原作はわかりませんが、透明感と清潔感をもたせて逝くところが余韻に繋がったのだと思います。

>映画を見終えてから原作を読み返すと、また印象が変わりますよ。(^-^)
読みたい本が増えて大変です(笑)
ただいま、「手紙」を熟読中です^^
返信する
お久しぶりです! (偏屈王)
2006-12-09 13:38:39
>他人の介入を阻止するような雰囲気もどこかに合わせ持っているような気がする。
あ、これ俳優・阿部寛をズバリと言い表してますね。
コミカルだったりキレてる人間を演じてるときも、どこか孤高の人という雰囲気を感じさせる役者さんです。
返信する
おひさです~ (cyaz)
2006-12-10 00:24:17
偏屈王さん、コメントありがとうございますm(__)m

>どこか孤高の人という雰囲気を感じさせる役者さんです。
そうですよね^^ それだからいいのかもしれませんが、やはりモデルあがりのタッパのある人だけに、奈緒ちゃんとのバランスは良かったです!
返信する

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