砂蜥蜴と空鴉

ひきこもり はじめました

♯157 不謹慎戦争

2006年10月13日 | ログ
「今日も世界では誰かが死んでいる。そんな日に祝い喜び楽しく生活するのは不謹慎ではないか」

いつの世にもある意見だが今回は少しばかり様子が違った。

個人の意見ではなく世界という大きな意思の下に不謹慎の排除が始まった。

何しろ不幸を消すことは出来ないのだ。

ならば続く不謹慎を取り締まるより他にない。

あらゆる祝日と祭は消滅した。

世界の誰もが幸せならば無論、これらの行事は許されたが

そんな日が人類史上、果たして一度でもあっただろうか。

国連主導で不謹慎撲滅のスローガンが世界を廻り

あらゆる幸せを取り締まった。

世界では多くの人々が苦しんでいるのだ。

その現実を直視せず幸せになるとはけしからん、という訳だ。

当然のことだが社会から活力は失われた。

当初、後進国民は先進国民の幸せが取り締まられ

自分達と同じように苦しむ姿に喜んだが

その喜びもまた取り締まりの対象だと知り絶望した。

誰もが沼を這いずるように生きた。

やがて自殺まがいの核戦争が勃発した。

これは人類滅亡の序曲となることは世界中の誰もが知っていたが

この戦争は誰も幸せにしないことは明白であった為に

不謹慎撲滅委員会はこの戦争を承認した。