随分と間が空きました。先週は名古屋にひつまぶしなど食べに行ってまして(苦笑)
で、何を書こうかと先々週から考えていたのですが、嵐のニューアルバムをレヴューしたらあまり間をおかずに過去アルバムを、というのがここ数年のパターンになっていた様なので、1年ぶりにコチラを。
嵐
『Dream“A”live』
2008/4/23リリース
ジェイストーム
JACA-5089~5090(初回盤)
JACA-5091(通常盤)
前作『Time』から9カ月という嵐史上最短スパン、そしてジェイストーム移籍後続いてきた恒例の夏リリースを覆す春リリースというこのアルバム、ファンからはどう見られているんだろうか・・・・
別冊宝島の“音楽誌が書かないJポップ批評62”のアルバムレヴューには、こう書かれています。
『ファンの間であまり評価が芳しくないらしい』
事実、このアルバムに対するレヴューが書かれているブログでもネガティヴな意見は散見されます。
ついこの間あった“嵐楽曲大賞1999-2014”の投票結果を見ても、1曲を除いて軒並み下位の曲ばかりだったり。
どうしてなんでしょう?私、このアルバム良く出来てると思うんですけどね。個人的には初期三部作クラス・・・いや、アルバムトータルで言えばこっちの方が好きかも。
まず、楽曲のクオリティが高水準でムラが無い。テンション下がるゾーンが殆ど無い。作曲者が複数というパターンが少ないのも好みだし、生楽器の使用が多めなのも良い。
5人のヴォーカルに、まだ無垢な感じが残りつつも成長が垣間見える絶妙のバランスがあり、アイドル的ファクターがイイ感じに効いたグルーヴポップを生み出していると思います。
アルバムのオープニングはファンタジックなSEから始まり、知野芳彦のギターや打ち込みのホーンが弾けるファンキーグルーヴへ転化する「theme of Dream“A”live」。作・編曲と打ち込みはお馴染みのha-j氏。期待を煽る2分に満たないイントロダクション。
たたみかける様に鳴り出すこれまたファンクなグルーヴチューン「Move your body」のアレンジもha-j。作曲のMike Roseって何者なんだろう(笑)。後ろで控えめに聴こえる打ち込みのストリングスがイイ味わい。翔くんの短いRapを筆頭に、各人の声の個性が生きてる。2分過ぎのブレイクでクールダウンしてから、大野くんの“dance!”一発が堪りません。
3曲目はシングル「Happiness」ですが、実はこの曲・・・・・・ここ数年ちゃんと聴いてなかったんです(苦笑)。何かにつけ耳にするもんで、聴き飽きたって訳じゃないんだけどスルーしてたという・・・・・・ちゃんと聴き返してみて思ったのは、演奏が物凄く良いというコト。河村徹のドラム、種子田健のベース、西川進のギター、坂井“ラムジー”秀彰(三沢またろう氏の後輩)のパーカッションに加え、なんといっても絶品なのが河合代介のオルガン!3分過ぎの短いソロのフレーズに鳥肌立ちました。ココ聴きたさでリピートしてしまう(笑)。作曲は岡田実音、編曲は北川吟です。
4曲目の「虹の彼方へ」で少しペースダウン。味わい深いミドルポップですが、クラッシャー木村ストリングスの弦がダイナミックで良い。ちなみに勘違いしている方もいらっしゃいますが、クラッシャー木村さんは女性(笑)。翔くんの短いRapに続いて紡ぎ出される、設楽博臣くんのギターソロが絶品です。実に気持ちいいフレーズ連発。作曲は吉川慶、編曲は鈴木雅也。
5曲目「Do my best」はYouthcaseの曲を北川吟がアレンジ。「Happiness」同様、疾走感のあるアッパーなポップロック。勢いがあるけどグルーヴィではない(苦笑)が、コレはコレでアイドルチューンとしては良く出来てる。鍵盤:北川吟、ドラム:河村徹、ベース:人時、ギター:西川進という鉄壁の4Rhythmが生み出すドライヴ感に打ち込みのストリングスが彩りを添える。
6曲目「シリウス」で一息(笑)。小林建樹が書き、石塚知生がアレンジしたバラッド。弦一徹ストリングスが実に美しく曲を飾る。ギターは設楽くんでパーカッションは梯郁夫氏です。アルバム全体の流れとしても、ここでのバラッドは緩急が良く出てて、スロウチューン苦手な私も納得。
そして7曲目、このアルバム中でも相当好きな1曲「Flashback」でテンションが上がる。作曲は今井晶規で、編曲は愛しの安部潤(笑)。控えめな奥田健治のギターや山敷亮司のベースも良いですが、なんといっても安部氏の鍵盤が素晴らしい。このテンポできちんとグルーヴを出す演奏。引き算でノリが出てる。ジャジィなギター&ピアノに乗っかる翔くんのRapと、続けて繰り出される宮崎隆睦のサックスソロ、そこからラストにかけてヴォーカルと対峙するサックスブロウが最高なんです。古のソフィスティケイトソウルを彷彿とさせるアーバンでスタイリッシュな1曲。
折り返して8曲目はこれまた大好きな「Dive into the future」。理屈抜きにカッコいいです。この手の音には定評のある岩田雅之のアレンジが見事なんですが、何よりもメルヴィン・リー・デイヴィスのベースがヤバ過ぎるくらいビンビンに響いてて堪らんのです。作曲はサウンドグラフィックス社のカール・ウトバルトを含む3人の外国人。スウェーデンラインですかね?3分20秒辺りの大野くんが歌う「Give me more!」の語気の強さが彼の成長を感じさせる。
そして、2曲続いたグルーヴを9曲目「声」の優しさでクールダウン。いかにも多田慎也といった温かく柔らかいメロディがNAOKI-Tのアレンジと相まってホッとする。クラッシャー木村ストリングスや石成正人のアコギが5人の歌を抱きしめる様なバラッドです。
ここからまたアゲていくゾーン(笑)10曲目は笹本安詞の作・編曲による「My Answer」。押し出しの強いサマーアンセムで、佐野聡がスコアリングしたブラスが実に開放的。ホーンの布陣はトランペット:佐々木史郎&鈴木正則、トロンボーン:佐野聡、テナーサックス:臼庭潤、バリトンサックス:春名正治。ストレートな5人のヴォーカルが気持ち良く、Rapに続く奥田健治のハードエッジィなギターソロがまた心地良いのです。
11曲目「Life goes on」は賛否あっただろうなと思わせる曲かも(笑)。ヴァースとサビの曲調が不自然過ぎるアンマッチ具合が気になる方は多いかもしれません。私は好きですが。ABメロは岩田雅之お得意のどファンキーなアーバンファンクなんだけど、サビが切り貼りしたみたいに聴こえる。あと、所々に後期ビートルズ的なニュアンスが挟まってたり(ラストのコーラス終わりの辺りとか)。それとこのサビって、山下達郎の「FUNKY FLUSHIN'」が下敷きだと思うんだけど、これは同曲をカヴァーした事務所の先輩:少年隊へのリスペクトだったりするのかな?なんてヘンな見方をしてしまった(苦笑)。余談ですが、少年隊の「FUNKY FLUSHIN'」はカッコいいですよ。機会があったら聴いてみて欲しい。勿論、達郎御大のオリジナルも。
あ、話が逸れた。
で、個人的にこのアルバムのハイライトが、この12曲目。シングル曲でありながら、アルバムのこの位置にあっても存在感放ちまくりの名曲「Step and Go」です。作曲:Youthcase、編曲:吉岡たくによるゼロ年代のアイドルグルーヴポップの金字塔。実は私、この曲に関しては何年も前にレヴューを書いてました。今まで出したことなかったけど(笑)その時書いたモノを抜粋してみます。
“この曲を聴いていると、如何に嵐というグループが楽曲に恵まれているのかが解る。それは、決して受動的な意味ではなく、作り手のクリエイティヴィティを刺激する存在であるというコトの証。嵐、という歌い手が良い曲を引き寄せる。”
“ある意味、ゼロ年代のJ-POPを担う彼らが21枚目に放った会心の一発”
“ジャニーズポップのみならず、少なくともここ10年の音楽史上でも稀にみる歌謡ディスコグルーヴの傑作”
“打ち込みなのに、ライヴ感のある太いベースラインがグルーヴを演出している”
“ラスサビ前の大野くんソロのバックの鍵盤が実はツボ。ディテールに凝った音作りに脱帽。”
“熱帯JAZZ楽団のリードトランペッター:佐々木史郎や、角松敏生との仕事で知られる春名正治のサックスなど、ホーンの切れ味も素晴らしい(特にサビのバック)。”
“パーカッションのMATAROって、三沢またろう氏かな?いい感じに曲をドライヴさせる。”
“決してBPMが早い訳ではないのに、めちゃくちゃ踊れるこのグルーヴ感。これこそが、オールドディスコを再構築する際のキモです。下半身に響く、腰を躍らせるファンキーグルーヴの真骨頂。”
“これだけの楽曲を輝かせるのも、結局のところパフォーマーの力量に委ねられる部分が大きい。その点で、嵐というグループの凄さが見えると思うのです。リーダー:大野智を中心としたヴォーカルバランスの良さは聴き手のココロに楔を打つ。特に、大野くんのヴォーカルが醸し出すしなやかな強さと、色気漂う危うさの絶妙なブレンド加減。スムースなのに微妙に引っかかりを残す研磨が生み出す効果。そこには聴き手を惹きつけるマジックがあります。音楽史に残る名パフォーマーが必ず持っていたオーラが、確かに存在するのです。”
“これは、アーティテストとしての豊かな才能と、アイドルとしてのたゆまぬ努力と、エンターテイメントのプロとしての美意識の高さと、少しの遊び心が生み出した、稀代の名曲だと思うのです。”
ま、この頃からベタ惚れでした(笑)。当時は、嵐のCDって殆ど持ってなかったけど。
さて、初回盤の本編ラストはライヴでシンガロングすると映えるだろうな・・・と思う壮大なスロウチューン「YOUR SONG」。作曲は杉山勝彦、編曲は高橋哲也です。河村徹のドラム、種子田健のベース、林部直樹のアコギと大西省吾のエレキギター、弦一徹のストリングス、ハルナ・田中亜由子・ツヤトモヒコのコーラス・・・・全てが一つの方向を向いている様な印象があります。
通常盤のボーナストラックは「Once Again」オーストラリア人のアルフレッド・トゥーイとベトナム系オーストラリア人のタン・ブイが書いた曲をCHOKKAKUさんがアレンジ。随所に漂うエスニックな匂いと重ためのギターやリズムが印象的。個人的にはそれほど好みではありませんが(苦笑)
初回盤には各メンバーのソロ曲が収められたボーナスCDが付いてます。各曲について詳しくは書きませんが、翔くんの「Hip Pop Boogie」が絶品だったというのは特筆すべきかと。韻シストのShyouとTAKUを中心としたCOUNTFORCEがトラックメイクと演奏をしたこの曲、実にカッコいいです。ニューオリンズ系のルーツミュージックの香り漂う、小田進弘のトランペットや井上純一のアルトサックス、鈴木健司のテナーサックスといったホーンが実にファンキー。田中亜由子のコーラスも効いてるし、翔くんのRapもヴォーカルもホントにカッコよくて大好きな1曲。
あと、ニノの「Gimmick Game」は彼のソロの中では好きな方(笑)。キザイア・ジョーンズの弾くエレガット風のギター(打ち込みだと思いますが)が印象的で、ライトなR&Bテイストは好印象でした。
他の3名については、他のアルバムに入ってるソロ曲の方が好きなので、特に言及しません(苦笑)
長々と書いてきましたが、このアルバムは嵐の中でも相当上位に来る傑作だと私は思ってます。ウチの奥さんがこのアルバムを聴いて、次のオリジナルアルバムでもっとエッジィで硬質なファンクグルーヴな盤が出てくる!と思ったのも頷けます。結果的に次のアルバムは結構ヴァラエティに富み過ぎた感じになりましたが(苦笑)
これで、嵐のジェイストーム移籍後のアルバムは全部レヴューした。嵐ファンではない一ポップマニアの意見としてご容赦頂ければ幸い。