嵐さんが11カ月ぶりにアルバムをリリースしましたので、感想を少しばかり。
盲目的なファンの立場からではなく、純粋に彼らの音楽に惹かれる一人のポップスマニアの見方としてごらんください(笑)
嵐
『Beautiful World』
2011/7/6リリース
ジェイストーム
JACA 5270
まず驚いたのが、そのリリースのスパン。
確かに、シングルを連発していたけど、1年経たないのにここまで楽曲を揃えてきたことに驚かされる。
それくらい、今回のアルバム曲の出来が粒揃い。
逆にいうと、シングルの練り込みの甘さが目立つんだが(苦笑)
それでも、CDの収録限界に近い時間をめいっぱい使って1枚に収められた(ココ重要!ww)18曲は、これから訪れる更なる高みを見据えた作品群なのだと思う。
オープニングは、5人がラップを繋ぐミクスチャーロック。アルバムを大きな組曲と捉えた場合、序曲にあたる部分。というより、その為に作られたとしか思えない(笑)
しかし、その序曲を引き継いで聴こえてくる第一楽章、「まだ見ぬ世界へ」には唸らされる。
弦一徹のストリングスが演出する疾走感が堪らなく心地よいアッパーグルーヴ。奥田健治のギターや打ち込みのフィルインが作り込まれたディテールを感じさせる。iiSAKと吉岡たくによるアレンジが絶妙。
この流れでいくと、同じ弦一徹のストリングスをフィーチュアした「Love Rainbow」が気にならない。シングルの時は多少懐疑的に見てましたが、良いメロディです。取ってつけた様なCメロが無ければの話ですが・・・・
このアルバムでも大活躍の若手ギタリスト、設楽博臣がイイ仕事してます。
「always」は、少年隊の様な往年のジャニーズクラシックを彷彿とさせる。しかし、アレンジの上手さが2011年の音にアップデートさせていると思いました。そして何よりも、サビが二段階になっているのが個人的に好き。
潤くんのソロ「Shake it !」に関しては、本作でもハイライトの一つ。ワタクシ、こーいう曲が大好物です(笑)オールドタイミーなディスコファンクだけど、ここでも吉岡たくのアレンジが冴える。打ち込まれたホーンのフレーズが実にグルーヴィ。それから、Bメロが素晴らしくキャッチーなんです。The仙台セピア、侮りがたし(笑)
しかし、最初に違和感を覚える瞬間が6~7曲目なのです。
今までエッジが効いてたのが、急に消える。
「虹のカケラ~no rain,no rainbow~」が、嵐版の「世界にひとつだけの花」みたいに聴こえてしまう。あれだけの楽器を詰め込んで(タブラや琴やフィドルまで使ってる)いるのも、多少あざとさを感じてしまうのはどうしてなのか・・・・・・・
「Dear Snow」にしてもそう。ジョン・ロビンソンやネイザン・イーストといったリズム隊を使い、ゴージャスなホーンセクションやストリングスを使いながら、どうも出来上がったモノが軽い。
やはり、一般的には解りやすいバラッドチューンが必要だというコトなんだろうか?
エッジを立て過ぎたモノは、拒否反応が起こり易いというコトなんだろうか?
そんな気分を払拭するのが、大野くんのソロ「Hung up on」から「Joy」への流れ。
久しぶりにダンスグルーヴをソロナンバーに持ってきた、大野智という才能。この曲を書いたのが「Dear Snow」と同じ、大島こうすけだというのも面白い(笑)
増崎孝司のギターを、もう少し強めにフィーチュアしても良かった気がするけど、全体にシャープで強いグルーヴが感じられます。
そして「Joy」には、更に強いグルーヴが感じられる。山下達郎のツアーにも参加した小笠原拓海のドラムと、元オリジナルラブの小松秀行によるベース。同郷の誇り、小倉博和のギター。“日本のシーラ・E”の異名を持つ、小野かほりのパーカッション。エリック宮城のトランペットや、竹野昌邦のサックス・・・・・・・・全ての楽器が一体になってエモーショナルな音を作る。この曲のアレンジが「虹のカケラ~no rain,no rainbow~」と同じ、石塚知生だというのも面白い(笑Ⅱ)
ニノのソロに関しては、個人的に苦手な部類の曲です。バラッドでグッとくるモノを作るなら、もっともっとメロディにフックが無いと。ただ、コードの感じやドラマティックなアレンジは悪くないです。
「negai」は、苦手な人いるだろうな~(苦笑)
このベタな歌謡曲テイスト、私は大好きなんですけど。薄っすらラテン風味というのも、このテの曲には定番で、哀愁を演出してるんだね。
「Lotus」は、このアルバム中で唯一、絶賛できるシングルです。こうしてアルバムに収まってもクオリティの高さは色褪せない。佐々木博史のストリングスアレンジが素晴らしいの一言です。
相葉ちゃんのソロは、オールドジャズの味わいがワシャワシャした声にマッチしてる気がする。実はこの曲の作・編曲も大島こうすけ(笑Ⅲ)良くも悪くも、多彩な楽曲を作るなぁ。
個人的には、生音のジャズコンポにバックをやって欲しかったかな。
「morning light」のアレンジも佐々木博史なんだ・・・・好きです、このアレンジも。
ヴァースとリフのテンポチェンジ、間奏のプログレライクな様式美、強烈な大野くんのフェイク。全てが疾走感に繋がる。
そういや、このアルバムって大野くんのフェイクがやけに目立つ気がするわ(笑)
「To be free」って、典型的な“サビがっかり”曲なんじゃないのかな・・・・・私は、そんな風に思いました(苦笑)どうも、メロディがモタモタしてる感じがして。
翔ちゃんのソロは、どう捉えたら良いんだろう?
低音を響かせるラッパー:櫻井翔のイメージからは程遠いミドルポップ。でも、彼の本質はコッチにある様にも思うのです。真面目で優しい根っこが透けて見える様な。
「果てない空」って、こうしてアルバムの中の1曲として聴くと、そんなに悪くない。決して絶賛はできないけど(苦笑)まぁ、ha-jのストリングスアレンジが無かったら多分聴けないと思うのも本音だけどね
で、ラス前3曲で若干ローになった私のテンションを果てしなくアゲる、カタルシスを感じる曲がラストの「遠くまで」
この曲、イントロからエンディングまで隙がありません。イントロのギターが入ってくる瞬間に血糖値が上がる(爆)
ベースのHitokiって、黒夢の人時かなぁ?ドラムは“千手観音”神保彰だよね(笑)
面白い人選だし、実際よく合ってる。やっぱ、佐々木博史のアレンジが好きなんだよ
で、長々と全曲の感想を書いてきたんだけども。
誤解を恐れず言えば、このアルバムは習作に近い。
多分、(近い)将来に生み出されるクリスタルの原型。
近年、国民的アイドルと称され、多少窮屈になったであろう音楽活動をリファインする過程で生み出された、進化の一ページ。
けれど、ちゃんと楽しめるエンタテイメントコンテンツに仕上げられているのは流石。
彼らのエモーションが込められた、いい作品だと思うのです。