きみの靴の中の砂

夏が、早々と腰を据えようとしていた




 そして海辺の六月 —— 夏が、早々と腰を据えようとしていた。

 ビーチサイドレジデンスに入居して間もなく、最初に挨拶をしたのは103号室の谷田部という老人で、このアパートの住人についての知識のほとんどがこの老人からと言ってよかった。なんでも、かつて、大学で音響学を教えていたとのことで、何年か前に奥さんを亡くしてからは鎌倉の自宅を売って、このアパートでひとり住まいを始めたと話した。

 なお、その元教授によれば、ぼくの部屋の前の住人は四十絡みの男で、どうやら、やばいクスリに関わっていたらしく、ある日、警察に連れて行かれたまま、二度と戻って来ることはなかったという。

 

 

【KT Tunstall - Suddenly I See】

 

 

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