相づちを打つはずもなく
珊瑚をあしらい、南海に見立てたウォーター・タンク(水槽)の中で、熱帯魚が昇降運動を繰り返すのをふたりで見詰めていた。 ...
海棠、そしてアヤメ、花菖蒲...
「鎌倉の駅から歩いてほんの数分のところに、こんな静かな花のお寺があるのをどうしてみんな知らないのかしらね」 言い終わると水口イチ子は山門をくぐって、ひとりで先に行っ...
とにかく黄色好き
ぼく達の黄色好きは、いったい、いつの頃からだったか。 古い記憶をたどれば、黄色好きの本家はぼく...
黄色い浮き袋
夏の想い出 1994
わからない
違うふたつの話題を交互に話すから、どっちの話題に相づちを打っているのかわか...
七の倍数で生まれ変われる
人間の細胞って六、七年で全部入れ替わるって聞いた。 だからそれ以来、人は...
1991年の夏が始まった頃
「外国に身を置いて初めて見えてくるものってあるよ」 と水口イチ子が言った場面...
あと8秒あるかなしか...
ところで、太陽は時速160万キロメートルという、ちょっと想像し難いスピードで銀河系宇宙を楕円を描きながら回っていると言われている。でも、そんな速さでも一周するのに...
どの靴を履いていくかも決められないのに...
今週末、食事に誘われている ―― しかも三人から。 手が空かないのを理由に、まだ誰にも返事をしていない。...
古い8ミリフィルムに映るコップの水の向こう
気温が上がるに連れて、飲物も次第に温かいものから冷たいものに移っていく。 そうするうちに夏。 アイスティーも飲み飽きた頃、やっぱり冷たい水が美味しいと思う...