何故このように、ママの方からパパにプロポーズするに至ったのか……。
ママがパパに惹かれた同じく理由の一つを、二人の新婚時代にスポットを当てた「新婚はヤキモチだらけなのだ」(71年50号)で、はっきり確かめ得ることが出来る。
この挿話で、ママの実父が、二人の新居に訊ねて来るシーンがあるが、この父親の風貌や雰囲気が、何と、パパにそっくりなのである。
つまりママは、重度のファザーコンプレックスで、無意識裡に、容姿が実父に酷似しているパパに好意を抱いていた可能性が、充分に考えられるのだ。
また、前述のエピソード「白痴パパをもったママのないてあかした100日間なのだ‼」で、同級生が語っていたところによると、女学生時代のママは、常々ピカソのような芸術家と結婚したいと公言していたらしい。
従って、人間社会におけるあらゆる規約や柵から解き放たれたパパのアナーキーな感性に、ママが前衛アーティスト特有の自由奔放な生き様を二重写しで見ていたであろうことには、推測出来なくもない。
ママはパパやバカボンの馬鹿さ加減に、時には呆れ果てたり、また本気で怒ったりもするが、バカに対する差別感は決して抱いてはいない。
このように、連載初期における『バカボン』世界の特質としては、バカや常識人が、ヒエラルキーの介在しないコミュニティーを形成し、各々の個性や人格を尊重し合うファミリーファンタジーとしての側面が強く、その要となる存在こそが、ママの寛大なる優しさであり、ハジメが生まれたことで更に強まった家族愛であるという解釈に、異論を挟む余地はないだろう。
尚、1994年、ママが、ブルドッグソースの新商品「東京のお好みソース」のイメージキャラクターに単独で起用され、お茶の間の耳目を集めたことがあったが、この際、同商品のオリジナルCMソングを歌うとともに、その声を当てていたのが、80年代の最強歌姫・中森明菜であるという事実は余り知られていない。
増山さんもお亡くなりになるとは、個人的にはたいへんショックでした。
そのお綺麗なルックスも去ることながら、艶っぽさの中にも品位を湛えたお声、赤塚不二夫が惚れ込んだのも想像に難くありません。
峰不二子にパーマン3号とはまり役は数しれず。
改めて増山さんの御冥福をお祈り申し上げます。
増山さんといえば峰不二子(「元祖」の次だったな)を筆頭に、キューティーハニーなどを演じてましたが、ママ役は赤塚先生が「変えないで欲しい」と願うほどの名キャラでした。