・漢方薬 Chinese herbal medicine かんぽうやく
西洋医学の医者30人に聞いた「プライベートでも使いたい漢方薬」が、テレビ番組で以前に話題になっていました。
取り上げられた漢方薬は次の4種類です。
◇葛根湯(かっこんとう)
◇芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
◇五苓散(ごれいさん)
◇加味逍遥散(かみしょうようさん)
これらの漢方薬を四回に分けて、含まれる薬草などについて調べてみることと致します。
ちなみに西洋医学の薬剤では、鎮痛とか、血圧を下げる、特定ウイルスのひとつの症状、病気に、直接的な治療に作用するといいます。
漢方薬は、何種類もの生薬、薬草を混ぜ合わせることによってできているため、幅広い症状に効果があるのを特徴としているといえるでしょう。それぞれに良さがあります。
一回目の今回は、
◇葛根湯(かっこんとう)第2類医薬品について
風邪の引き始めには「葛根湯」とよくいわれています。
風邪を中心に、次のようなたくさんの症状を緩和するといいます。
風邪・インフルエンザ・中耳炎・扁桃腺・急性胃腸炎・(胃痛)・(下痢)・月経痛・頭痛・肩こり・ひざ痛・筋肉痛・腰痛・下半身のしびれなどなどです。
葛根湯には、体を温めるという7種類の生薬を含みます。
葛根(かっこん)・麻黄(まおう)・桂皮(けいひ)・芍薬(しゃくやく)・甘草(かんぞう)・大棗(だいそう)・生姜(しょうきょう)です。
■葛根(かっこん)はマメ科、葛Arrowrootの根です。山野に自生するつる性の多年草で花は、目立ちませんが8、9月に赤紫の小さな花が群生して咲き秋の七草のひとつになっており、日なたで初秋に葉が大きくなります。
葛粉は、葛の根を10月から堀起こし採集し、掘り出した葛の根を砕きもみだし沈殿させ精製しています。糊化温度が低く熱湯を注いで葛湯とし家庭で利用されたり菓子の原料(葛きり、葛団子、葛もち)にしています。
葛の根は、「葛根湯(かっこんとう)」とし、有効成分としてイソフラボンを含み解熱、発汗、保温、抗酸化作用があり漢方薬とし風邪予防、下痢症に用いています。体を温めるのに有効としています。
精力アップにつながるとし花を乾燥させ葛花(かっか)といい民間薬として煎じ、胸焼け、二日酔いに利用していることもあるようです。
■麻黄Ephedraは、マオウ科、中国原産です。乾燥した奥地に産する草本状の低木、雌雄異株、松と同じ裸子植物に属し、緑色の細い木質の茎から伸びた草質の茎であり、退化した小さな鱗片葉が節で対生して目立ちません。
この緑色の細い茎、根が、生薬マオウ(麻黄)として、麻黄湯、葛根湯、麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)などを始め多くの漢方処方に配合している重要な生薬の一つです。
白色、結晶性のアルカロイドのエフェドリンEphedrine(1887年)、その有用性は喘息の特効薬としています。
現在では化学合成(1927年)によって発汗、抗炎、解熱、鎮咳、去痰、利尿にも使わます。
副作用として頭痛、めまい、不整脈、不眠、神経過敏、血圧上昇などが起きることがありますので注意が必要です。
■桂皮とはシナモンCinnamonのことです。クスノキ科、漢方では、樹皮を桂皮(ケイヒ)、若い小枝を刻んだものを桂枝(ケイシ)と呼んでいます。
桂皮に含む有効成分のケイヒアルデヒドは、香りの成分で体内の水分を調節してむくみを改善したり、血流を良くして冷えを改善します。
樹皮、葉と若い枝から精油し特有の芳香、辛味のある黄色の液体でニッキ(肉桂に由来)飴、芳香剤、防虫剤に使われ合成でも製造しています。
民間療法で健胃、発汗、解熱、鎮痛に用いています。
■芍薬Peonyはボタン科、春季の5月ごろにピンクまたは白色の大輪を咲かせ立てば芍薬、座れば牡丹といわれるように多年草で園芸用品種が多くみられています。
薬用には、根の発育をよくすることから花の蕾を摘み取り、4~5年経過した根を秋から冬にかけて掘り起こし主成分ペオニフロリンPaeoniflorin、アルビフロリンAlbiflorinのモノテルペン配糖体を含み鎮静、鎮痙、鎮痛、抗炎作用があり筋肉、腱の痙攣、腹痛、婦人病に用いられています。
漢方で知られる当帰芍薬(とうきしゃくやく)は更年期障害に、芍薬甘草(しゃくやくかんぞう)が腱、筋肉の痙攣、腰痛、尿路結石などに用いています。
最近では血管性認知症(痴呆症)にもよいともいわれ多くの漢方処方に利用しているようです。
■甘草Licoriceはマメ科、西アジアを主産地とし薄黄色のちょうに似た形の花が咲き、卵型の葉をつけ高さ70cm程度の多年草です。
独特の甘味(砂糖の50~200倍)のある根を乾燥させてグリチルリチンGlycyrrhizinの精油で、多くは、食品の甘味料として甘味、塩なれ(塩辛さを相殺する)の食品添加物の調味料として味噌、醤油、ビール、ウイスキーにも利用しています。
甘草は、漢方薬としても咳止めに、抗炎(グリチルリチン酸二カリウムDipotassium glycyrrhizate)、鎮痛、鎮咳(ちんがい)、健胃、抗アレルギー、保湿に用いられています。
グリチルリチン酸(Glycyrrhizinate,Glycyrrhizic acid )が代謝加水分解されグリチルレチン酸Glycyrrhetic acid となり水分を体内に貯留する低カリウム血症を伴う作用があるため高血圧症では使用を避けた方が良いといわれています。
■棗Common jujubeはクロウメモドキ科、中国で広く栽培しており、干したなつめを粥、煮物、スープ、菓子の餡によく用います。そのままでも食べますがドライフルーツ、シロップ漬け、あん菓子に使われます。
薬膳で滋養強壮、整腸、更年期障害、鎮痛、鎮静、貧血によいとして用いています。
有効性分は糖類、有機酸、トリテルペン、サポニン、ベンジルアルコールbenzyl alcohol 配糖体 glycoside(ジジベオシド:酸棗仁(さんそうにん)の香り成分)などです。甘味種の大棗(たいそう)といい漢方で飲みにくいものと一緒にして利用します。
酸味種の酸棗仁(さんそうにん)の種子は大きく日本名をサネブトナツメといい不眠症に用いています。
ナツメの葉には甘味受容抑制の甘味阻害物質のジジフィンZiziphin(トリテルペノイド配糖体)を含み甘味を感じなくする作用があります。
■生姜・生薑Gingerはショウガ科、熱帯アジア原産です。
漢方で根茎を蒸して乾燥させたものを乾姜(かんきょう)といいます。
6~8月に収穫するのが色が白く軟らかで新生姜の旬です。9、10月に収穫する生姜を根生姜(ひね生姜)といい秋に掘り起こされ旬とし翌年の夏ごろまで貯蔵でき、色素、辛味、香り成分を多く含みます。
初夏の新(葉)生姜は辛味が少なく湯通しして醤油漬け、酢漬け(寿司用ガリ)、味噌付け、薬味とし利用しています。
ひね生姜(根生姜・土生姜)は、臭み消し、針生姜、紅生姜、清涼飲料、菓子の風味づけ、香辛料に用いられます。
辛味のジンゲロールGingerol、ジンゲロンZingerone(結晶)、ショウガオールShogaolが新陳代謝を高め、発汗作用があります。
黄色の色素クルクミンが肝臓の働きを強くし、アミラーゼ、プロテアーゼなどの分解酵素が微量含まれ消化、吸収を助けます。
香りの精油成分は主にジンギベレンZingibereneを含み他にカンフェンCamphene、シネオールCineole、ゲラニオールGeraniol、ガラノラクトンGalanolactoneが血流をよくし、保温効果が高く、痛みを和らげ消炎作用を有し風邪引き、咳、冷え性に生姜湯、湿布にし利用しています。
割合としての例は、葛根4.0g麻黄3.0g生姜1.0g大棗3.0g桂皮2.0g芍薬2.0g甘草2.0gの合計17gから1包・顆粒・錠剤とし4.0g程度にしています。
または葛根8.0g麻黄4.0g大棗4.0g桂枝3.0g芍薬3.0g甘草2.0g生姜1.0gの計25gの処方があり製造した乾燥エキスを服用しやすいように乳糖、D-マンニトール、白糖、蔗糖脂肪酸エステルを添加物としているようです。
葛根湯は、それぞれの薬草に保温、抗炎、鎮痛(葛根・芍薬)、解熱、血流改善、更年期障害、鎮咳、保湿、貧血によく、発汗を促す作用のある生薬を混合していることがわかります。
生姜・大棗は、全体の副作用を緩和する目的で多くの漢方薬に用いているようです。
葛根湯で、煎じて飲まれますが、最近では煎じたものを濃縮したエキス、エキスの水分を無くして顆粒、錠剤として販売していることもあります。
葛根湯は体力のない人、幼児、高齢者には向かない不向きとしています。また、胃腸の弱い人や発汗の多い風邪についても葛根湯は適さず副作用の強い麻黄(エフェドリン)、甘草(グリチルリチン)によるものと思われます。
体力がある初期、急性期のうちの風邪、痛み、炎症に有効としています。
薬草としているものは、野菜といわれるものと異なることは、その作用が早くに現れるということではないでしょうか。
野菜から薬草が見出され、さらに、西洋医学ももとは、モルヒネ、アスピリン(発見当初ヤナギの樹液より採取:鎮痛作用)に始まるアスピリンの柳の樹液です。そこから精製度の高いものが生まれ、多くの合成品が生まれるに至っています。
食事の大切さが認識されアメリカの食事指針で1977年のマクガバン報告があります。
現代の医学は、薬や手術といったことだけに片寄り過ぎ、栄養に盲目的な片目の医学であった。栄養に盲目的でない医学に作りかえる必要がある。としています。
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