・苦味物質Bitter substances/Bitter principle にがみぶっしつ
春野菜は、ほろ苦さが魅力です。日本では古くから「春は苦味を盛れ」といわれ、その独特な風味を楽しんできました。実はこの苦みにこそ、冬から春の体に変わるメカニズムをスムーズにする働きがあるのです。春の山菜には抗酸化力の高いポリフェノール群、食物繊維を含み冬の間に体内に溜まった老廃物や脂肪を排出します。春先の疲れやだるさを取り去り、そしてやがて訪れる暑い夏を、元気に乗り切るための体を作ります。
比較的アクの弱い山菜は、さっと湯通しするか、あるいは0.5~1%の塩でゆで、軽く冷水にさらし水気をきってアク抜きします。170度以上の高温で調理すれば、アクの主成分のシュウ酸を分解することから天ぷらや薬味に使う時は、アク抜きの必要はありません。近年は灰汁の少ない栽培種が多くアク抜きの必要のないものが出回っているようですので、その時は長くに水さらしの必要はありません。
さらに山菜と毒草を間違え、うっかり食べて中毒を起こさないように十分に注意しましょう。
主に知られる山菜は、
あしたば、アケビの芽、いたどり、うこぎ、うるい、オケラ、行者にんにく、クレソン、クサソテツ、こごみ、コシアブラ、山椒、シオデ、じゅんさい、せり、たらの芽、つくし、根曲がり竹、のびる、ふきのとう、ふき、みず、三つ葉、山ウド、ヨモギ、わさびの葉などです。
アクの強い山菜のゼンマイ、ワラビの類は木草灰あるいは重曹0.1~0.3%を入れた熱湯でゆで、そのまま冷ましてからていねいに水洗いをしてアクを抜きます。重曹の量が多いとやわらかくなり過ぎたり溶けてしまいますので注意しましょう。木草灰を使う時には振りかけてから、熱湯を十分に注いで一晩おき、水をかえてからゆで、冷水にとってアクを抜きます。
アク抜きで気をつけたいことは、「ゆですぎないこと」と「水にさらしすぎないこと」です。山菜のもつ苦味や香り成分を失わないようにしましょう。
苦味成分にはアルカロイド(カフェイン、テオブロミン)、ポリフェノール、配糖体(ナリンジン・ヘスペリジン・リモネン[柑橘類]、イソフラボン(大豆)、ククルビタシン[きゅうり]、ルチン[そば:ケルセチン])、糖誘導体、カルシュウム、マグネシュウム(にがり)、ビールのホップ[フムロンHumulone、ルプロンLupron、タンニン]、ビタミンB6、サントニンSantonin(よもぎの精油成分:回虫駆除)、様々な天然物に存在するフェノール系の抗酸化物質チロソールTyrosol(日本酒・オリーブ果実)、胆汁酸などがあげられます。
代表的なのは、キニーネで一般にアルカロイド類は、植物の苦味成分として存在します。水に難溶性のものが多く、他の味覚、甘味、酸味、鹹味(かんみ: 塩け)に比べ直ぐに味覚として反映されることは少なく、後から徐々に感じられ、そしていつまでも舌に味が残っているという特性があります。飲み込んでからもまだ苦味として舌に残っています。その働きは多種多様であり少量であれば体によい働きをするものも多く、まさに「良薬は口に苦し」なのです。
ふきのとうなどの苦味成分はポリフェノール類のクロロゲン酸でポリフェノール類には、活性酸素除去する効用が期待できる成分です。配糖体の中でもとりわけ苦味の強いグループがあり、これを苦味配糖体と称しています。民間薬として用いてきたセンブリにはスウェルチアマリンSwertiamarin、生薬リュウタン、ゲンチアナにはゲンチオピクロシドGentiopicrosideというセコイリドイド配糖体Secoiridoid glucosideを含み、いずれも苦味のある健胃薬です。これらの生薬はいずれもリンドウ科植物を基原としており、セコイリドイドは広くリンドウ科植物に含まれる成分群です。
その他の苦味成分としてはアルカロイドや変形トリテルペノイドが挙げられます。アルカロイドは一般に苦味があり中には強い苦味を呈するものがあります。
舌に触れてから味覚として感じられるまでの時間がキニーネ1.1秒、砂糖0.4秒、食塩0.3秒、塩酸0.5秒程度です。苦味を感じる限界量も低く塩酸キニーネで0.016mg、カフェン0.040mgぐらいです。
苦味は一般に好ましい味としていませんが飲食物と調和したものでは、食味を増す役目を果たします。冷たいと苦味が目立ち常温付近になると和らぎ、さらに甘味を加えて対比効果で和らげることができます。 人は苦い・酸っぱいと聞くだけで、唾液が出で、それと同時に胃などの消化液も出てくることによって苦味健胃薬ともなるのです。
初春の山菜探しで、体を動かし、食べることによって、春を感じ体調を整え、エネルギッシュな夏に備えましょう。
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