◎種実類Nuts and Seeds しゅじつるい
日本で採取しているものでは、多くが秋に収穫の時期を迎えます。世界では、アジア、アメリカ大陸を主な主産地としています。
種子、胚乳を食用としているものを一般的名称とし種実類として果実類の中で子房が硬化し、その種子が食用になるもののことです。普通の果実といわれる仁果類(じんかるい:りんご、なし、びわ)、準仁果類(じゅんじんかるい:柑橘類、柿)、核果類(かくかるい:梅、アンズ、さくらんぼ、もも)、漿果類(しょうかるい:いちご、ぶどう、イチヂク)とは異なり水分含量が著しく少なくなって保存性に優れています。
食品成分表ではアーモンド、あさ、えごま、カシューナッツ、かぼちゃ、かや、銀杏(ぎんなん)、栗、胡桃(くるみ)、けし、ココナッツ、胡麻、しい、すいか、とち、はす、ひし、ピスタチオ、ひまわり、ブラジルナッツ、へーゼルナッツ、ペカン、マカデミアンナッツ、まつ、落花生を記載してています。一般に堅果類(ナッツ類Nuts)ともいわれ堅い殻に包まれています。
風味がよく和え物、つまみ、チョコレート菓子に利用します。多くは水分(3~7%)含有量は少なく、たん白質(15%~30%)と脂肪(25%~70%)に富んでいます。アミノ酸組成は、トリプトファン、含硫アミノ酸のメチオニン、シスチンに乏しいのですが他の含有量は高く良好です。
トリプトファンの少ないのは、アーモンド・カシューナッツ・クリ・クルミ・ゴマ・ピスタチオ・ヒマワリノタネ・ヘーゼルナッツ・マカダミアナッツ・松の実・落花生
メチオニンの少ないのは、アーモンド・カシューナッツ・クリ・クルミ・ピスタチオ・ヘーゼルナッツ・マカダミアナッツ・落花生
シスチンの少ないのは、胡麻・ひまわりの種・松の実などとなります。
栗、銀杏、ハスの実の類は水分60%内外、炭水化物35%、たん白質5%内外、脂質1%内外となっています。
アミノ酸スコアは、41(ヘーゼルナッツ)から82(カシューナッツ)程度です。
脂肪酸組成では100g中で
アーモンド:脂質54.2g・脂肪酸51.98g(飽和4.23g、一価35.05g、多価12.68g)
カシューナッツ:脂質47.2g・脂肪酸43.71g(飽和9.49g、一価26.48g、多価7.74g)
ピスタチオ:脂質56.4g・脂肪酸53.81g(飽和6.26g、一価31.02g、多価16.53g)
ペカンフライ味付け:脂質73.4g・脂肪酸68.79g(飽和7.40g、一価37.33g、多価24.06g)
ヘーゼルナッツ:脂質58.8g・脂肪酸56.21g(飽和4.23g、一価46.10g、多価5.88g)
マカダミアナッツ:脂質76.8g・脂肪酸73.35g(飽和12.52g、一価59.29g、多価1.54g)
落花生:脂質47.4g・脂肪酸46.16g(飽和8.67g、一価22.99g、多価14.50g)
ぎんなん:脂質1.7g・脂肪酸0.85g(飽和0.14g、一価0.34g、多価0.37g)
クリ:脂質0.3g・脂肪酸0.15g(飽和0.07g、一価0.04g、多価0.04g)
クルミ:脂質68.7g・脂肪酸67.33g(飽和6.94g、一価10.24g、多価50.68g)
ゴマ:脂質51.9g・脂肪酸48.83g(飽和7.47g、一価18.94g、多価22.42g)
ヒマワリノタネ:脂質56.4g・脂肪酸53.14g(飽和5.53g、一価10.10g、多価37.51g)
ブラジルナッツ:脂質65.0g・脂肪酸62.40g(飽和15.60g、一価20.02g、多価26.78g)
松の実:脂質60.8g・脂肪酸56.61g(飽和4.99g、一価16.90g、多価34.72g)
アーモンド、カシューナッツ、ピスタチオ、ペカン、へーゼルナッツ、マカダミアンナッツMacadamia nuts、落花生などではオレイン酸を多く含みコレステロール値を上昇させません。
脂質とたんぱく質が、アーモンド(たんぱく質18.6g)、カボチャの種(たんぱく質26.5g)、カシューナッツ(たんぱく質19.8g)、ゴマ(たんぱく質18.8g)、スイカのタネ(たんぱく質29.6g)に多く含んでいます。
水分を多く含んでいる蓮の実(水分13.1%・炭水化物62.6%)、ぎんなん(水分53.6%・炭水化物38.5%)、くりは(水分58.8%・炭水化物36.9%)と、炭水化物を多く含む種実類です。
胡麻が近年健康食品として注目されていますので少し詳しく紹介致しましょう。
胡麻Sesame seeds
ゴマ科、一年草、高さ70cm~1mに成長、原産地は、インド周辺といわれています。近年多くは東南アジア、アフリカ、中国で生産され輸入しています。日本へは、中国を経て伝わったとみられ奈良時代には既に栽培がされておりナタネより古い歴史があるともいわれます。白色種の成育期間は短く黒色種になるにつれ成育期間が長く成熟期が遅くなります。
日本でも栽培されていますが数量は少ないようです。晩春に植付けが始まり夏の盛りに7~8月にかけ淡紫色のリンドウに似た花を咲かせます。9~10月頃実がなり種子がはじけ出しそうになった頃刈り取り乾燥させ選別し得られます。
言い回しとして「開け胡麻」は、大事なものが早く出てきてほしいとの願いが込められているといいます。粒のままでは外皮が硬く消化吸収率が劣るので煎ったり、すりゴマにすると外皮、細胞が破壊され吸収率が高まり、香りが引き立ちます。
ごま塩、和え物、胡麻豆腐、製菓に使われます。製油には白ゴマがよく、種子を圧搾して50%内外のごま油を得ています。
胡麻のたん白質は主にグロブリン(グルタミン酸、アスパラギン酸に富む)であり、特に黒ゴマにポリフェノール(血行をよくする)の一種のアントシアニン系色素を含みます。ビタミン、ミネラルを含み自然に補えます。15g/1日程度蜂蜜と混ぜペースト状でトーストに塗ったり、ヨーグルトにつけて利用するとより効果的です。脂質とたんぱく質に富み昔から滋養強壮、催乳、便秘によいとし利用されてきました。
100g中で炒り胡麻の成分は、エネルギー599kcal、水分1.6g、タンパク質20.3g、脂質54.2g、炭水化物18.5g、
灰分5.4g、ナトリウム2.0mg、カリウム410mg、カルシウム1200mg、マグネシウム360mg、リン560mg、鉄9.9mg、亜鉛5.9mg、銅1.68mg、マンガン2.52mg、
ビタミンA:3μg、ビタミンD:(0)μg、ビタミンE:2.5mg、ビタミンK:12μg、
ビタミンB1:0.49mg、ビタミンB2:0.23mg、ナイアシン5.3mg、ビタミンB6:0.64mg、ビタミンB12:(0)μg、葉酸150μg、パントテン酸0.51mg、
ビタミンC:Trmg 食物繊維12.6gを含んでいます。
カルシウムを多く含み、さらにビタミンE2.5mg/100g中、ゴマリグナンの抗酸化作用により、生活習慣病予防に役立ちます。ゴマの香ばしい香りの主成分であるピラジンが、血栓を作りにくくし血液凝固を防ぎ血行をよくし、肝機能を強化します。
リグナンLignan
リグナンは植物界では細胞壁として幅広く茎、根、種子などに配糖体、遊離の状態で存在し、食物繊維、アントシアニンやフェノール酸、植物性エストロゲンの類です。色素成分を含み、胡麻リグナン類ではセサミンSesamin、セサモリンSesamolin、セサミノールSesaminol、セサモールSesamole、セサモリノールSesamolinolなどで熱に強く、脂溶性(セサミン・セサモリン)、水溶性(セサミノール配糖体)食物繊維で抗酸化力が強く活性酸素の除去、脂肪分解、肝機能を強化、血流を改善しています。
セサミンSesamin
胡麻に含むポリフェノール、ゴマリグナンのひとつでゴマリグナンの約半分を占め生胡麻に0.5%程度含みます。ビタミンEとともにセサミンの抗酸化力が強く活性化させ、動脈硬化、心筋梗塞予防、保湿、肝機能強化作用、自律神経調節作用があり生活習慣病予防に役立ちます。特に肝機能を強化しアルコールの分解を促進、アセトアルデヒドの生成を抑制します。
胡麻油Sesame oil
胡麻種子の香味を生じさせることから、脱色、脱臭の必要がなく高温で煎り圧搾し白色(含油量55%)、褐色、黒色(50%、収量が多い)が得られ、精製も不純物を軽く除く程度としています。比較的値段が高いことから大豆油と混合し調整油としていることが多いようです。
半乾性油でマイナス6度で固まり、特有の香味(こうみ)があり、貯蔵に耐え、和え物、天ぷら、卓上の調味油に用いています。脂肪酸組成は、不飽和脂肪酸であるオレイン酸(体脂肪の蓄積を防ぐ)39.1%、、リノール酸(必須脂肪酸、血栓を作りやすい)44.8%を主に含み注目のゴマリグナン(抗酸化作用)を微量(1%)含みセサミノールが多くなっています。
その他におもな種実類の特長をまとめてみました。
◇南瓜種子
主に中国で食用にされている長径2~3cmの長円形で乾燥させ塩煎りしたものが瓜子(グワズー)といいつまみにしています。パンプキンシードともいいナッツとしてパンや洋菓子のトッピングとして用いられます。100g中にエネルギー574kcal、たんぱく質26.5g、脂質51.8g、炭水化物12.0g、マグネシュウム530mg、鉄6.5mg、亜鉛7.7mg、銅1.26mg程度含み可食量は1/10ぐらいで10g程度としましょう。ペポカボチャという殻がない種子をもつ品種があり薬用に使われ種子に含まれる脂肪酸と植物ステロールが皮膚粘膜、筋力の強化、脱毛、薄毛の原因とされる5αーリダクターゼ5alpha-reductaseの酵素を阻害し、特に女性の排尿によいとし用いられます。
◇胡桃Walnut
クルミ科、炭水化物11.7%、脂肪70%(リノール酸42.0%、αーリノレン酸[体脂肪の蓄積を防ぐ]9.1%、オレイン酸[体脂肪の蓄積を防ぐ]10.2%)、たん白質(疲労回復)15%あり、ビタミンE(細胞の再生に関与)3.6mg/100g中、ビタミンB1(疲労回復):0.26mg/100g中に含みます。
◇落花生Peanut
マメ科、渋皮にポリフェノール(タンニン、レスベラトロール)を含み最近では渋皮ごと使い加工しているものもあります。
585Kcal/100g中、水分6%、炭水化物18%、蛋白質25%、脂質45~50%(オレイン酸48~42%、リノール酸35~31%、リノレン酸0.2%)、食物繊維は落花生(炒り)7.2%を含みます。
ビタミンE(老化防止)1.1mg/1回の可食量10g中(亜鉛0.2mg、銅0.06mg)を含みます。
◇カシューナッツCashew nuts
ウルシ科、ナッツの炒ったものでエネルギー576kcal/100g、水分3.2%、炭水化物26.7%、たん白質19.8%、脂質47.6%(オレイン酸65%)を含みコレステロール値を上げない作用があります。ビタミンE(1.1mg%)は、ナッツ類の中では少ない値です。
◇アーモンドAlmond
バラ科、100g中の成分は、エネルギー598kcal、水分4.6g、タンパク質18.6g、脂質54.2g、炭水化物19.7g、
灰分2.9g、ナトリウム4.0mg、カリウム770mg、カルシウム230mg、マグネシウム310mg、リン500mg、鉄4.7mg、亜鉛4.0mg、銅1.35mg、マンガン2.63mg、
ビタミンA:1μg、ビタミンD:(0)μg、ビタミンE:32.2mg、ビタミンK:(Tr)μg、
ビタミンB1:0.24mg、ビタミンB2:0.92mg、ナイアシン3.5mg、ビタミンB6:0.10mg、ビタミンB12:(0)μg、葉酸63μg、パントテン酸0.66mg、
ビタミンC0mg 食物繊維10.4gを含んでいます。
脂質の脂肪酸組成は、オレイン酸(一価不飽和脂肪酸n-9系)、リノール酸(二価[多価]不飽和脂肪酸n-6系)が多く特にオレイン酸が不飽和脂肪酸の5割以上を占め血中コレステロール値を上昇させない作用があります。
特異な成分にビタミンE(3.2mg/10g)の抗酸化作用が、ニコチン酸(ナイアシン0.35mg/10g:糖質・脂質の代謝促進)を含みます。
◇マカダミアナッツMacadamia nuts
ヤマモガシ科、炒って味付けしたものは、73.4%の脂肪を含んで、その脂肪酸の50%以上がオレイン酸であり脳の血流をよくし活性化させます。
またパルミトレイン酸Palmitoleic acid(一価不飽和脂肪酸)を脂肪酸の20%と多く含み保湿性に優れています。
種実類の多くは乾燥させ殻を除いて市販しています。多くが輸入され炒ってツマミとして、さらにパウンドケーキ、チョコレート菓子、サラダに砕いたり、あるいは粒のまま混ぜて使われています。
ナッツ類は、多くは水分(3~7%)含有量は少なく保存性に優れ、たん白質(15%~25%)と脂肪(25%~70%)に富んでいます。
ビタミンEは食事摂取基準の成人目安量9mg、上限量600~800mgであり、アーモンド31.2mg、ナッツ類10~15mg/100gを含みます。銀杏(ぎんなん:レシチン[脳の活性化])、栗(消化吸収がよい)、胡桃(くるみ:体脂肪の蓄積を防ぐ)のそれぞれの作用があります。量的に多く摂取できるものではありませんが、発芽のための栄養素を多く含んでいますので、免疫力の強化には役立ちそうです。
がんの死亡リスクが魚、鶏、ナッツ類、大豆食品、低脂肪乳などの食品をとると、死亡率は魚7%、鶏肉14%、ナッツ類19%、大豆食品10%、低脂肪の乳製品10%、全粒粉14%と低下がみられたといいます。
さらに魚、フルーツ、ナッツなどの一定の食品の組み合わせは、アルツハイマー病リスクの低減と関連があるといいます。
時として輸入品の中には、ナッツ類につくカビのアフラトキシンAflatoxin類が付着していることがあり、この物質は発ガン物質とされていますので注意が必要です。
丸ごと摂取できるナッツ類の適量摂取が望ましいのです。
ご愛読戴きましてありがとうございます。よりよい情報をお届けしてまいります。
(初版:2020,10,10)
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