・薬酒Alcoholic drink for medicinal purposes やくしゅ
薬酒には、薬用酒(薬局、薬店だけでの販売)の滋養強壮保健薬と、薬味酒(薬効の表示できないもので酒屋で販売)のリキュー酒の2種があります。酒そのものに健康増進の効用があるとして健康酒とも呼ばれます。
生薬といわれる地黄(じおう)、鹿茸(ろくじょう)、当帰(とうき)、人参(にんじん)など薬草、生薬を焼酎などの酒類で抽出し混成したりして甘味を加えて飲みやすくしたリキュール・甘味果実酒の混成酒です。梅酒、くこ酒、お屠蘇(とそ)なども含みます。
世界各地で作られ、日本で製造・販売しているものとしては養命酒、陶陶酒、保命酒等があり、一部は薬事法の適用を受けている医薬品の薬用酒として登録しています。
薬用酒は、薬効を謳(うた)った酒で生薬、薬草を酒で浸出し、ショ糖などで味をととのえたもの、あるいはこれに麹などを加え、みりん醸造のような工程をとったものもあります。
酒税法の分類ではリキュールまたは甘味果実酒となるものが多く、品目に代わる名称としてリキュールの類のものです。このような酒であれば薬機法(2014年より)の規定によりつくられ、薬効があり厚生労働大臣の許可を得て、酒としての免許をもち、届出によって薬用酒、または薬味酒、甘味果実酒ならば届出によって薬剤甘味果実酒または薬用甘味果実酒と表示することも可能になっています。
1602年製造開始の養命酒は、2010年以前までは、薬用酒と薬味酒の両方で販売していましたが、以後は紛(まぎ)らわしいといったことなどから薬用養命酒としての販売のみとなりました。第2類医薬品生薬配合(滋養強壮保健薬:薬用酒)として、薬局やドラッグストア等での販売です。
14種類の生薬により、滋養強壮の効能を持つとして容量1リットル入り2,200円 ・700mL/1550円、2020年現在で製造販売しています。
生薬の内訳は、リットル当たり
桂皮(けいひ)- 4500mg/L
紅花(こうか)- 200mg/L
地黄(じおう)- 1000mg/L
芍薬(しゃくやく)- 1000mg/L
丁子(ちょうじ)- 400mg/L
杜仲(とちゅう)- 300 mg/L
人参(にんじん:朝鮮人参)- 1000mg/L
防風(ぼうふう)- 1600mg/L
鬱金(うこん)- 600mg/L
益母草(やくもそう:メハジキの葉茎)- 800mg/L
淫羊カク(いんようかく)- 1900mg/L
烏樟(うしょう)- 9900mg/L
肉ジュ蓉(にくじゅよう、にくしょうよう)- 800mg/L
反鼻(はんぴ)- 200mg/L
上記の生薬を、日本薬局方規定のチンキTincture剤製法に準じて冷浸(れいしん)して作られ味醂、アルコール、液状ブドウ糖、カラメルを添加しています。チンキ剤とは生薬をエタノール(アルコール)またはエタノールと精製水の混液で浸出した液剤の総称のことで 一般的な製法としては、生薬などの材料を小さく切り刻み、冷浸法Cold enfleurage(アンフルラージュEnfleurage)でおこなわれています。
アルコール分14%を含有です。成人で20mL/1回、1日3回、食前または就寝前に服用です。
なお、血行を促進するため手術や出産直後などで出血中の場合と、アルコールを含有するため乗物・機械類の運転操作を行う場合の服用は禁忌です。
薬局、薬店だけでの販売薬用酒と酒屋さんで売られている薬味酒の実際の生薬、薬草の種類としては上記以外にも
現在普通に用いられている生薬は虎骨(ここつ)、白朮(びゃくじゅつ)、五味子(ごみし)、当帰(とうき)、茯苓(ぶくりょう)、甘草(かんぞう)、枸杞子(くこし)、五加皮(ごかひ)、黄蓍(おうぎ)などなど数多くがあり、数種を混ぜ合わせて、不老長寿、強壮剤として調合しています。
珍しい、あまりなじみの無いものについて
益母草(やくもそう)は、シソ科で和名でメハジキとしています。
淫羊カク(いんようかく)は、メギ科の碇草(いかりそう)の全草を用います。
烏樟(うしょう)は、クスノキ科ノ香木で黒文字という木の枝や樹皮から作られます。
肉ジュ蓉(にくじゅよう)は、ハマウツボ科の植物でホンオニク Cistanche salsa C.A.Meyerの肉質の茎です。中央アジアの砂漠地帯に生えその根に寄生しています。漢方では、強壮・強精における重要な生薬です。
反鼻(はんぴ)は、マムシの皮と内臓を取り除き乾燥させたものです。
虎骨(ここつ)は、 あぶったトラのすねの部分の骨を酒に浸し、またはトラの骨を粉末にして 陳皮、ニンジン、その他とともに酒に混ぜて作られています。滋強剤、鎮痛作用として用いられます。
植物には、薬草といわれるものが数多くあります。普段毎日日常的に食べている野菜も穏やかな効能を発揮しており立派な薬草といえましょう。
薬草は、その効能が少し強い植物、その有効な成分を抽出しているのが、薬酒、その成分を精製し錠剤、カプセルとしたものが薬と考えてもよいでしょう。健康食品の定義も規約、薬機法(薬事法)の判断によって曖昧(あいまい)となっているのが現状のように思われます。
ご愛読戴きましてありがとうございます。よりよい情報をお届けしてまいります。