というわけで、真面目に有機化学ネタ第2弾は「軸不斉」についてです。
…あらかじめ断っておくけど、ボクは説明下手だからね(`・ω・´)
1~2年前、夏休みに母校の高校へ戻った際、いろいろあって、有機化学に興味があると言っていた3年生の子に「どういうことやってるのか話してやってくれ」とその高校の先生に言われ、キラルリン酸のことを話したりしました。
や、正直、不斉合成のこととか高校生に教えるのはかなり難儀なことですね。紙にリン酸書いたら「これ触媒なんですか…?」って言われちゃったし!
さておき、高校で知ることになる不斉関連のことと言えば、恐らく「不斉炭素」でしょう。よく乳酸なんかが例に出されて。
そもそも「不斉」とは何ぞや? ということだけど、これはまぁ「鏡像(光学)異性体(エナンチオマー)」なんてのがキーワードにあります。
「鏡像異性体」というのは「互いに構造や化学的、物理的性質は同じだけど、人体などに取り込まれたときに示す反応(生理活性)が違う関係のモノ」とでも言おうか。
これはてきとーに拾ってきた絵。アラニンってアミノ酸だけど、こんな感じにお互いが重なり合わない構造になっている。
ここで、こうなってる原因は何かと言うと真ん中にある炭素、こいつに異なる置換基が4つ付くことで「不斉炭素」となり、光学活性が生じる原因になっているわけです。
――――――――――――ここまでが高校――――――――――――
しかし、以前の記事にも書いたように、これだけが不斉の世界じゃない。こんなのは入口だ!
というわけで、本題の「軸不斉」です。たぶん、大学入っても1~2年ぐらいじゃ聞かないかもしれない。
これは何ぞや? と言えば、不斉炭素みたいに原子が由来で生じるものではなく、“単結合”が由来で生じる不斉のことです。
…って言葉で言ってもアレなので、図を描きましたよ(`・ω・´)
実はB4のときの卒研発表のスライドで使ったやつなんだけどな(ぉ
こんな風に、芳香環同士が単結合で繋がった化合物を「ビアリール」なんて言うけど、このビアリールのオルト位にある置換基(絵だとA、B、C、Dで表してるやつ)が立体的にでかかった場合を考えよう。
そうすると、絵では芳香環は正面を向いてるように見えるけど、実際にはA、BとC、Dがぶつかり合うために、下の芳香環を真正面に向けたとき、上の芳香環は90度捻じれてる感じになります。そして、置換基がぶつかるので、芳香環を結ぶ単結合がくるくる回転できず、形が固定されます。
で、この図だと、左のビアリールは上の芳香環のAの側の置換基が手前に出ているようになっており、右のビアリールはBの側の置換基が手前に出ています。
はい、するとこいつらは「鏡像異性体」の関係になるのでした。
これが軸不斉で「アトロプ異性体」なんて言われたりします。
すごくわかりにくいでしょう! そんなときは実際に模型を組んだりしてガチャガチャすれば納得できるかもしれないし、できないかもしれない(ぉ
当然ながら、このA、B、C、Dがものすごく小さい置換基で、軸がくるくる回転してしまうと不斉は生じなくなります。
肝になるのは「オルト位の置換基由来の立体反発による、単結合の回転束縛」ということです。
じゃあ、こういう軸不斉化合物ってどういうのがあるかと言うと、こんな感じで。
これも卒研発表やハワイ年会のポスターなんかによく載せてるやつを流用するなど。
天然物なんかだと左と真ん中のようなやつをはじめ、他にもいろいろあります。
Ancistrotanzanine類なんかはAやB、Cとかいろいろあるけど、抗マラリア作用やその他薬理活性なんかがあったり…したんじゃなかったかなぁ。
J.Nat.Prod.とかに論文があります。
Phelgmacineは…よくワカンネ(ホジリ
BINAPは野依先生が2001年のノーベル化学賞を取ったことなんかでご存じの方も多いのでは、という不斉配位子ですね。
あとうちで使ってるキラルリン酸なんかも。
とまぁ、こんな感じで軸不斉というのもいろんな場面でちょくちょく見かけて、有機化学の世界では大事なんですよ、というお話でした。
…あらかじめ断っておくけど、ボクは説明下手だからね(`・ω・´)
1~2年前、夏休みに母校の高校へ戻った際、いろいろあって、有機化学に興味があると言っていた3年生の子に「どういうことやってるのか話してやってくれ」とその高校の先生に言われ、キラルリン酸のことを話したりしました。
や、正直、不斉合成のこととか高校生に教えるのはかなり難儀なことですね。紙にリン酸書いたら「これ触媒なんですか…?」って言われちゃったし!
さておき、高校で知ることになる不斉関連のことと言えば、恐らく「不斉炭素」でしょう。よく乳酸なんかが例に出されて。
そもそも「不斉」とは何ぞや? ということだけど、これはまぁ「鏡像(光学)異性体(エナンチオマー)」なんてのがキーワードにあります。
「鏡像異性体」というのは「互いに構造や化学的、物理的性質は同じだけど、人体などに取り込まれたときに示す反応(生理活性)が違う関係のモノ」とでも言おうか。
これはてきとーに拾ってきた絵。アラニンってアミノ酸だけど、こんな感じにお互いが重なり合わない構造になっている。
ここで、こうなってる原因は何かと言うと真ん中にある炭素、こいつに異なる置換基が4つ付くことで「不斉炭素」となり、光学活性が生じる原因になっているわけです。
――――――――――――ここまでが高校――――――――――――
しかし、以前の記事にも書いたように、これだけが不斉の世界じゃない。こんなのは入口だ!
というわけで、本題の「軸不斉」です。たぶん、大学入っても1~2年ぐらいじゃ聞かないかもしれない。
これは何ぞや? と言えば、不斉炭素みたいに原子が由来で生じるものではなく、“単結合”が由来で生じる不斉のことです。
…って言葉で言ってもアレなので、図を描きましたよ(`・ω・´)
実はB4のときの卒研発表のスライドで使ったやつなんだけどな(ぉ
こんな風に、芳香環同士が単結合で繋がった化合物を「ビアリール」なんて言うけど、このビアリールのオルト位にある置換基(絵だとA、B、C、Dで表してるやつ)が立体的にでかかった場合を考えよう。
そうすると、絵では芳香環は正面を向いてるように見えるけど、実際にはA、BとC、Dがぶつかり合うために、下の芳香環を真正面に向けたとき、上の芳香環は90度捻じれてる感じになります。そして、置換基がぶつかるので、芳香環を結ぶ単結合がくるくる回転できず、形が固定されます。
で、この図だと、左のビアリールは上の芳香環のAの側の置換基が手前に出ているようになっており、右のビアリールはBの側の置換基が手前に出ています。
はい、するとこいつらは「鏡像異性体」の関係になるのでした。
これが軸不斉で「アトロプ異性体」なんて言われたりします。
すごくわかりにくいでしょう! そんなときは実際に模型を組んだりしてガチャガチャすれば納得できるかもしれないし、できないかもしれない(ぉ
当然ながら、このA、B、C、Dがものすごく小さい置換基で、軸がくるくる回転してしまうと不斉は生じなくなります。
肝になるのは「オルト位の置換基由来の立体反発による、単結合の回転束縛」ということです。
じゃあ、こういう軸不斉化合物ってどういうのがあるかと言うと、こんな感じで。
これも卒研発表やハワイ年会のポスターなんかによく載せてるやつを流用するなど。
天然物なんかだと左と真ん中のようなやつをはじめ、他にもいろいろあります。
Ancistrotanzanine類なんかはAやB、Cとかいろいろあるけど、抗マラリア作用やその他薬理活性なんかがあったり…したんじゃなかったかなぁ。
J.Nat.Prod.とかに論文があります。
Phelgmacineは…よくワカンネ(ホジリ
BINAPは野依先生が2001年のノーベル化学賞を取ったことなんかでご存じの方も多いのでは、という不斉配位子ですね。
あとうちで使ってるキラルリン酸なんかも。
とまぁ、こんな感じで軸不斉というのもいろんな場面でちょくちょく見かけて、有機化学の世界では大事なんですよ、というお話でした。
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