-196℃の部屋

ブログのお引越しをしました。→技術屋えきちーの実験ノート http://ekitait.com

キラルリン酸触媒のてきとーな紹介

2011-01-22 21:37:54 | 雑談
たまには真面目な有機化学話でもしてみようかと。

うちの研究室では主に(R)-BINOLから誘導して合成できる「キラルリン酸触媒」なるものを使った反応開発をやってます。
キラルリン酸ってのは下の四角で囲ったやつ。



有機分子触媒はいろいろあるけど、こいつの構造は割とシンプルです。

主な特徴は3つ。
1. リン酸なので-OH部分がブレンステッド酸として機能する。また、P=OのOもローンペア持ってるので、ルイス塩基として働く。
2. ビナフチル骨格の3,3'位に置換基を付けることで反応の立体制御が可能。
3. 軸不斉を持っている。

3,3'位の置換基は合成する段階で鈴木カップリングや熊田カップリングなんかでくっつけます。
軸不斉ってのは聞き慣れない人も多いかもしれない。

まぁ、つまり、なんだ、その…単結合が不斉持ってるんだよ!(自分の研究で扱ってるのに雑

とりあえず大学の3、4年ぐらいになって初めて聞いてもおかしくないようなやつだしね…(もっとマイナーなのに面不斉なんてもあるけど)
むしろ不斉ってのはそれだけで記事1つ書けるぐらい奥が深いですから!
高校化学で習うような「不斉点(炭素)」なんてほんとに入口だぜ…( <●>ω<●>)ふふふ…

さておき、この触媒でどんなことするかってと…いろいろやりますね。
基本的には「酸」なので、酸で促進される反応でかつ、生成物をエナンチオ選択的に合成したいときに使います。
うちなんかだとマンニッヒ反応やマイケル反応なんかで高い不斉収率出して論文にしたりしてるけど、世界規模でいろんな反応に使われてます。

とまぁこんなところで。何かあったらコメくださればわかる範囲でお答えしますの。

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (匿名)
2015-12-30 06:17:40
キラルリン酸を用いたビフェニルの選択的臭素化について教えて欲しいのですが
研究されていたでしょうか?
返信する
やっていました (液体窒素)
2016-01-30 20:12:57
返信遅れてすみません。

私がやっていたのはこのキラルリン酸触媒を使ったビアリール(ビフェニル)の臭素化による軸不斉化合物の合成でした。
JACSやChem.Sci.に論文が出ています。
返信する

コメントを投稿