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日常と日記
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「燃ゆる女の肖像」見てきた

2020-12-09 | 映画

18世紀フランスを舞台に、望まぬ結婚を控える貴族の娘と彼女の肖像を描く女性画家の鮮烈な恋を描き、2019年・第72回カンヌ国際映画祭で脚本賞とクィアパルム賞を受賞したラブストーリー。
画家のマリアンヌはブルターニュの貴婦人から娘エロイーズの見合いのための肖像画を依頼され、孤島に建つ屋敷を訪れる。
エロイーズは結婚を嫌がっているため、マリアンヌは正体を隠して彼女に近づき密かに肖像画を完成させるが、真実を知ったエロイーズから絵の出来栄えを批判されてしまう。
描き直すと決めたマリアンヌに、エロイーズは意外にもモデルになると申し出る。キャンパスをはさんで見つめ合い、美しい島をともに散策し、音楽や文学について語り合ううちに、激しい恋に落ちていく2人だったが……。「水の中のつぼみ」のセリーヌ・シアマが監督・脚本を手がけ、エロイーズを「午後8時の訪問者」のアデル・エネル、マリアンヌを「不実な女と官能詩人」のノエミ・メルランが演じた。
2019年製作/122分/PG12/フランス
原題:Portrait de la jeune fille en feu

すべてのシーンがどこ切り取っても美術館の絵画のように美しかったです



男性はほぼ出てきません
女性の地位が低かった時代です
マリーアントワネットがフランスに嫁いでくるくらいの頃ね

父親の名前でしか発表も展覧会もできない、画材ですら女は人物肖像画と静物画くらいしか描くことを許されない時代の女絵師

修道院に入れられていたのに姉が結婚を厭うて自殺したので代わりに嫁ぐよう言われ見たこともない遠方の男と結婚させられる伯爵令嬢


孤島の古い城に女の画家が向かうところから始まります

城には幼い顔をした心優しいメイドがいますが彼女は島のたぶんつまんない男に孕ませられ堕胎をするしかありません
当時、どころかごく最近まで夫のいない女性が子供を産むということイコール人間としてはみなされないほどの扱いを受けています
まともな仕事に就くこともできなくなる。堕胎は罪と説きながら堕胎しないともう死ねのたれ死ねみたいな矛盾が社会です
種仕込む側の男は気楽なものです
レミゼのコゼットの母親ファンテも髪や歯を売り若く健康な体を売り最後には死んでいきましたね


そんな世界なのに彼女たちの人生を適当に動かす「父親」も「婚約者」も「孕ませ男」も出てこない映画です


働く強い女と流されるはかない令嬢の恋物語かなーと思って見に行ったのですがまったく違いました。
あとメイドちゃんは三人目の主人公といってもいい。
荒涼たる島の風景に溶け込む三人の姿や、令嬢が本を朗読し、三人がそれぞれ解釈を述べたりするところ、堕胎のあとのスケッチのシーンなど多様な女性像が浮かび出ます

これはいろんな階級の女たちが自分の足でとにかく生きるって話です
自分の考えや意思をちゃんと持っている、女という生き物のお話です

みんな静かで優しく逞しい。とにかく女がりんとして美しい
バカは出てこないので見ていて楽でした
映画に描かれる「無責任でおばかで自分だけが大好きな若い」「男から見たら可愛い」男が描く「女なんてこんなもんだろていうかこれが女」的女が嫌いなのでそのへんこの監督はめちゃわかってるやんと思いました。
女性監督です。
伯爵令嬢役の女優さんは監督の元パートナーで円満に別れた後彼女にあて書きしてこの映画を作ったそうです
だからか、画家(ものをつくりだす)の彼女のいちずで熱心で鋭い視線が切なかったわーー
ほとんどBGMのない静かな映画にヴィヴァルディの四季の「夏」が鮮烈でした。最後の展覧会とオーケストラに思わず泣いてしまいました

映画の感想サイトで男性が「フランス映画だしエロい百合期待してたのに、美人の裸もほとんどなく期待外れ」とか書いてる人いてわりと驚きました
ポルノ見たほうがいいよ