負けを経験させる
IDA SOCCER NIGHT SCIENCE 父と母の役割
「親もがんばります」とか、子に「絶対負けるな」と声をかけるのは、とんでもない大間違いです。その子は、自分自身の戦いであることが理解できないまま大人になっていくわけです。そういう親は、子の挑戦の弊害になっても、子の役には一切なりません。
そういう親の玩具として過ごした子は、何歳になっても、厳しさを我慢して努力することや、負けを受け止めること、相手を尊重すること、ひたむきに挑戦することなど、人としての基本的な資質が欠落したまま大人になります。私はそうした若者を何人も見てきました。
負けを経験させる。
勘違いした子を身をもって気付かせる。
そして泣きやんだ子の肩をそっと叩き、背中を押す。
それが親です。
負けて泣き、歯を食いしばる経験を、親は進んで提供しなければなりません。上には上がいる、そういう世の現実を親は知らしめる。勝負で負けた子を、進んでほくそ笑んでみるのです。一緒に興奮したり、落ち込んだりするのは考え違いです。敗北は彼にとっても幸せなことです。負けは、自分は優秀だという幻想や現実認識の誤謬(ごびゅう)を正せる人間に育ててくれるのです。
試合の結果にカッカしたり、ユニフォームを着て会場ではしゃぐ軽率な親は、まさに大人として劣悪です。その子も同じ残念な人間に育てようとしているのです。賢い親は一歩下がって口を閉じ、祈るのです。実際に尊敬すべき人格を持った我慢強い選手の親は、例外なくそうでした。チームの勝敗についても、常に一歩下がっていました。ある母親などは勝てば「あら、勝っちゃったの」(笑)、負ければ「まぁ、残念でしたね」(笑)といった調子でした。
チームは親の個人的感情と全く違うところで戦っています。あなたの勝負ではもちろんなく、誤解を恐れずに言うならば、あなたの子の勝敗でさえもありません。個人的勝利や子の活躍への期待など、一刻も早く捨て去ることが必要です。チームの勝利だからヒーローはいらないし、ミスを責めることはありません。いいプレーを称賛し、互いに叱咤激励し、一人のミスを全員でカバーする。その後ろ盾が応援なのです。そこを間違えてはいけません。
私たちスタッフは、勝敗はレギュラーだけのものと考えません。同時に試合に出たら幸せで、出なかったらダメだとも考えません。強いチームの親はそのことをよく知っています。チームではなく自分の子しか見ていない親の考えは必ず子に伝わります。利己的なのが似てきます。長くそういった親子を見てきて、よくわかります。
静学での親たちのミーティングで、ある親が言っていました。
「子どもたちは、チームの目標に向かって自分たちで寮の決まりを作り生活しています。そのことを尊重して親が馬鹿げた介入をしないようお願いします」
この親御さんの発言には感動させられました。そうなんです。そうやって見守っていくことが大切なんです。
自分の勝手な思いを子どもに押し付けて、「あれがダメだ、これがダメだ」ってわかったようなことを言っている親自身が一番ダメなんです。サッカー指導者にもそんなのがいます。自分は努力もしないでただ上から教えているだけの勘違いしている輩です。指導者も親も「夢を持ち、その夢を実現すべく燃えることができるのは、全生物の中でも人間だけだ」ということを、身をもって示すことが、子育てなのです。
IDA SOCCER NIGHT SCIENCE 父と母の役割
「親もがんばります」とか、子に「絶対負けるな」と声をかけるのは、とんでもない大間違いです。その子は、自分自身の戦いであることが理解できないまま大人になっていくわけです。そういう親は、子の挑戦の弊害になっても、子の役には一切なりません。
そういう親の玩具として過ごした子は、何歳になっても、厳しさを我慢して努力することや、負けを受け止めること、相手を尊重すること、ひたむきに挑戦することなど、人としての基本的な資質が欠落したまま大人になります。私はそうした若者を何人も見てきました。
負けを経験させる。
勘違いした子を身をもって気付かせる。
そして泣きやんだ子の肩をそっと叩き、背中を押す。
それが親です。
負けて泣き、歯を食いしばる経験を、親は進んで提供しなければなりません。上には上がいる、そういう世の現実を親は知らしめる。勝負で負けた子を、進んでほくそ笑んでみるのです。一緒に興奮したり、落ち込んだりするのは考え違いです。敗北は彼にとっても幸せなことです。負けは、自分は優秀だという幻想や現実認識の誤謬(ごびゅう)を正せる人間に育ててくれるのです。
試合の結果にカッカしたり、ユニフォームを着て会場ではしゃぐ軽率な親は、まさに大人として劣悪です。その子も同じ残念な人間に育てようとしているのです。賢い親は一歩下がって口を閉じ、祈るのです。実際に尊敬すべき人格を持った我慢強い選手の親は、例外なくそうでした。チームの勝敗についても、常に一歩下がっていました。ある母親などは勝てば「あら、勝っちゃったの」(笑)、負ければ「まぁ、残念でしたね」(笑)といった調子でした。
チームは親の個人的感情と全く違うところで戦っています。あなたの勝負ではもちろんなく、誤解を恐れずに言うならば、あなたの子の勝敗でさえもありません。個人的勝利や子の活躍への期待など、一刻も早く捨て去ることが必要です。チームの勝利だからヒーローはいらないし、ミスを責めることはありません。いいプレーを称賛し、互いに叱咤激励し、一人のミスを全員でカバーする。その後ろ盾が応援なのです。そこを間違えてはいけません。
私たちスタッフは、勝敗はレギュラーだけのものと考えません。同時に試合に出たら幸せで、出なかったらダメだとも考えません。強いチームの親はそのことをよく知っています。チームではなく自分の子しか見ていない親の考えは必ず子に伝わります。利己的なのが似てきます。長くそういった親子を見てきて、よくわかります。
静学での親たちのミーティングで、ある親が言っていました。
「子どもたちは、チームの目標に向かって自分たちで寮の決まりを作り生活しています。そのことを尊重して親が馬鹿げた介入をしないようお願いします」
この親御さんの発言には感動させられました。そうなんです。そうやって見守っていくことが大切なんです。
自分の勝手な思いを子どもに押し付けて、「あれがダメだ、これがダメだ」ってわかったようなことを言っている親自身が一番ダメなんです。サッカー指導者にもそんなのがいます。自分は努力もしないでただ上から教えているだけの勘違いしている輩です。指導者も親も「夢を持ち、その夢を実現すべく燃えることができるのは、全生物の中でも人間だけだ」ということを、身をもって示すことが、子育てなのです。